Mahler 交響曲第1番ニ長調(ドレスデン・フィル)/
Goldmann 交響曲第1番 (ヘルベルト・ケーゲル)


このデザインはKICC-3664 Mahler

交響曲第1番ニ長調(ドレスデン・フィル1979年)

Friedrich Goldmann (1941ー2009)

交響曲第1番(ライプツィヒ放送交響楽団)

ヘルベルト・ケーゲル(Herbert Kegel, 1920ー1990)

edel classics 0002332CCC

 一時、”狂気の指揮者”とかなんとかワケのワカラんキャッチフレーズで話題となった往年の東ドイツの名指揮者、15枚組ボックスを入手したのは2006年末、私的バブル時代やったなぁ、当時10年後の(半)引退生活なんて思いもしませんでしたよ。久々の拝聴、彼のMahlerへの言及はサイト内検索しても出現しませんでした。大好きな、青春の胸の痛みを感じさせる美しい作品は、驚くほど精密な完成度でした。音質まずまず良好、響きはジミだけどオーケストラは好調でしょう。現在はミヒャエル・ザンデルリンクがシェフでしたっけ。

 第1楽章「Langsam, Schleppend, wie ein Naturlaut - Im Anfang sehr gemachlich(ゆるやかに、重々しく)」。弦のフラジオレットによるA音のデリケートな開始、これが(その昔)CD時代の幕開けを告げる象徴的な場面でした。LPだとノイズに埋もれがち。太古生命の誕生のような金管木管のつぶやき、木管によるカッコウの声に乗ってやがて第1主題「朝の野原を歩けば」は青春の胸の痛み、憧憬に充ちたところ。オーケストラの集中力、濁りのない響きが求められるところ。わずかにヴィヴラートの掛かったホルン(ちょいとクセのある金管)も馴染みのドレスデン・フィル、何時になく繊細、洗練された響きであります。ケーゲルは”青春の胸の痛み、憧憬”を情感を込めた粘着質に非ず、クールに表現して決然、時にサラリとテンポは入念微細に揺れ動いて、描き込みは効果的であります。提示部繰り返しは当たり前。ティパニの低音も期待通り。(15:06)

 第2楽章「Kraftig bewegt, doch nicht zu schnell(力強く運動して)」は華々しいスケルツォ。引きずるような、ちょっと突っかかるようなリズム感、タメがケーゲルらしい。ユーモラスに快活なところだけど、表情はあくまでクールそのもの。ここもテンポは相当に揺れ、中間部のレントラー前、そしてラストのアッチェレランドも効果的。対比際立つレントラーも甘美に非ず、テンポを盛んに動かして微妙な間も入念です。(8:41)

 第3楽章「Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen(緩慢でなく、荘重に威厳をもって)」神妙に暗い葬送行進曲はケーゲルの個性にぴったりでしょう。物憂いカノン(「グーチョキパーでなにつくろう」の短調版)のあとオーボエ(音色がジミ)がユーモラスに合いの手を入れる対比も上手いもの。この辺り、たっぷり詠嘆に旋律を引きずるけれど、非情な風情は変わりませんよ。中間部「彼女の青い眼が」は清涼に夢見るように歌われても、眼光はあくまで冷静そもの。物憂いカノンが戻って、途中テンポ・アップするところがあるでしょ?ここはほぼ期待通りでした。もっとハジけても良いけれど。コーダは金管にたっぷりタメを作って圧巻!(11:47)

 第4楽章「Sturmisch bewegt(嵐のように運動して)」。ここは第5番、第7番並みに終楽章がムツかしいところ。せっかくの締め括りがたんなるバカ騒ぎになってしまうかも。かなりの迫力威圧感を以て突き進むケーゲル、どこか一歩引いて熱狂熱中に非ず、地に足を着けた慌てぬ表現であります。息の長い美しい旋律(「生のテーマ」)対比もお見事、例のややヴィヴラート・ホルンも響き渡りました。展開部に至って、ドレスデン・フィルのちょいと硬質なサウンド(トランペットの不器用な音色)爆発も魅力でしょう。タメ、間の上手いこと!やがて第1楽章冒頭が再現され「生のテーマ」へ。 (20:08)

 フィル・アップされたFriedrich Goldmannによる未知の現代作品もしっかり聴きましょう。オーケストラの不協和音にピアノ、多種多様な打楽器が混沌として切迫感を以て迫る第1楽章「Allegro enegico(ほどよく快速に、力強く)」(7:10)、静謐に怪しげな緊張感漂う第2楽章「Lento」は途中弦楽器?特殊奏法の不思議な音色が聞かれます(8:12)。乱高下する金管の咆哮に始まる終楽章「Vivo(活き活きと速く)」は断片的な各パートのつぶやきが対話して素っ頓狂であります。オーケストラは上手いですねぇ、おそらくドレスデン・フィルより。

(2018年6月3日)

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written by wabisuke hayashi