Mahler 交響曲第1番ニ長調
(マンフレート・ホーネック/ピッツバーグ交響楽団)


Octavia Exton EXCL-26 Mahler

交響曲第1番ニ長調

マンフレート・ホーネック/ピッツバーグ交響楽団

Octavia Exton EXCL-26 2008年録音

 ここ最近、声楽(Bach /Wagner/Mozart /R.Strauss辺り)+比較的新しい(ディジタル)録音ばかり聴いて、ここは久々(棚中溢れかえる)歴史的録音でも・・・と自主CDをひっくり返しておりました。その流れ、保存してあるデータから偶然この音源を発見、コレ聴いていなかったんじゃないか・・・記憶力には自信はないのでサイト内検索掛けてみたら〜出てきましたよ

賛否渦巻く新時代の演奏であります。コメント氏は概ね正刻を射ていると聴きました。半世紀前(1953年)にスタインバーグが録音していて、剛直、素っ気ないほどに飾りのないストレートな演奏から遠く隔たり、アンサンブルの洗練は驚くほど!上手いオーケストラやなぁ・・・音質も文句ない。子供の頃から馴染んだ作品細部、たくさん発見もありました。例えば最終楽章、低弦の動き、”生のテーマ”は交響曲第9番ニ長調第1楽章とほとんど同じじゃないか・・・細部入念な仕上げ、ニュアンス味付け、テンポの頻繁な変化もコントロール完璧。現在56歳、指揮界では若手?入念な仕上げはウェットな感情移入を意味しない、これが世代であり、現代のオーケストラなのでしょうか。新鮮、爽快、どちらかというと擁護したい個性に間違いなし。しかし、先のコメント氏の危惧にも一理あって、機能の優秀が表層を流れる可能性も・・・(2014年5月「音楽日誌」)
・・・ちょうど一年前か。上記に感想は言い尽くされて、今回拝聴に印象の変化はありません。クリアな音質印象も手伝って、とにかくオーケストラが上手い、ライヴとは信じられぬほど(ラスト盛大なる拍手)。響きは洗練され、彼(か)のスタインバーグのオーケストラ(?)〜訝るほど、そりゃ亡くなったのが1976年、もう一世代回っておりますから。先日、プレヴィンによるTchaikovsky 交響曲第4番ヘ短調(1980年)を聴いたら、その時点既にかつての剛直重量級のサウンドから変身してマイルド、更に歴代マゼール〜ヤンソンスを経、現在の姿に定着したのでしょう。+解像度の高い極上音質だったら無敵!

 んなカンタンな結論に至らぬのが音楽のオモロいところ。全57分、テンポは標準的でしょう。第1楽章「 Langsam, Schleppend, wie ein Naturlaut - Im Anfang sehr gemachlich(ゆるやかに、重々しく)」に繰り返し有(賛同)。激情に揺れる汗水浪漫!は好みに非ず、あちこち入念な味付けもありつつ、基本明るく、スッキリ爽やかな表現は基本支持!でもね。子供の頃に聴いたワルターの刷り込みか、美しい旋律に青春の胸の痛み、憧憬とか、しっかり感じさせて欲しいもの。こちらひたすらクリアな世界〜清流に魚棲まず的美しさ(←表現引用は微妙に誤っているかも)なにかが足りない。入念なテンポの揺れ、細部味付けニュアンスも入念、流れは自然なのに、滲み出る馥郁たる香りが足りない。

 若々しい表現?マンフレート・ホーネックも若手とは云えぬ世代(1958-)ですから。連想したのは(表現個性は別モンだけど)ジョージ・ショルティ。体育会系、機能的に万全、これがアメリカの個性でしょうか。

 第2楽章 「Kraftig bewegt, doch nicht zu schnell(力強く運動して)」〜ここは快活なスケルツォ楽章だから、ヴィヴィッドに明朗な表現も似合ってクリアそのもの。かなり頻繁なタメ、エネルギッシュな疾走も効果的、各パートの主張存在感も文句はない・・・しかし、この物足りなさは中欧辺りのウェット、中低音に厚みのある響きを知っているから?中間部のレントラーにはもっと甘美な粘りが欲しいところ。

 第3楽章「Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen(緩慢でなく、荘重に威厳をもって)」。冒頭コントラバス・ソロはワザとヘタに、物憂く、たどたどしく弾かなくっちゃ、最近皆”上手く”なり過ぎ(「春の祭典」冒頭の超・高音ファゴットも同様)たっぷり歌って、テンポの入念な変化も自然、弦や管のソロも表情豊かに仕上げは上々であります。中間部「彼女の青い眼が」も儚げな幻想が清潔、よう歌ってエエ感じ。ここのティンパニの低音、効いてまっせ。やがて主部の回帰、例の快速テンポ・アップは抑制気味にオモロくない、優等生的。

 終楽章「Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen(緩慢でなく、荘重に威厳をもって)」ここはムツかしい楽章ですよ。走り過ぎると、せっかくの美しい前3楽章分の余韻が全部吹っ飛んじまう。艶やかなオーケストラの響き、オーケストラの迫力は解像度高く、みごとなバランス感覚でしょう。全力疾走精も根も尽き果てよ!的演奏を好まれる方は、ご不満かも。一年前”機能の優秀が表層を流れる可能性”とのコメントはこの辺りの印象なのでしょう。爽やかモダーン、耳あたりの良いサウンド、それでも全面賞賛に至らぬのが音楽のオモロいところ。

(2015年5月24日)


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written by wabisuke hayashi