Mahler 交響曲第1番ニ長調
(ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団)
Mahler
交響曲第1番二長調
ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団
DG 429 042-2 1967年録音 10枚組(購入価格失念 壱万円以上したと思う)のウチの一枚
2008年は私的Mahler の年であって、全集を新たに3セット購入、せっかく前年迄に3セット分処分して在庫の精査を行ったのに、また前の状況に戻ってしまいました。クーベリック全集はいずれ世評、人気ともそう高いものでもなく、1960年代の録音としてずいぶんと安価で売り出されるように。ワタシは1990年代初頭より、ずっと自らのリファレンスとして愛聴し続けておりました。自分の嗜好に些かの揺るぎもなし。録音が効果を生みやすい作品であり、これは艶々の鮮明を誇るとは言い難いが、(何度聴いても)音質に不満を感じたことはありません。もちろん、演奏の質に於いても。
これは青春の息吹を感じさせる素敵な作品であり、少年だったワタシは、ブルーノ・ワルター(コロムビア交響楽団)のLPを心震わせて聴いていたものです。やがて幾星霜を経、心が震えなくなったのは作品(演奏)のせいではなく、聴き手の感性の摩滅であることは一目瞭然。先日、ジュゼッペ・シノーポリの怪しくもよく歌う演奏(1989年)に感心も感動もしたが、この作品の原点を感じさせるのは、やはりこれなんです。久々に聴いて(文句なく)痺れました。
オーケストラが素晴らしい。深く、暖かい金管、厚みのある弦、マイルドでふくらみのある木管。鋭く鳴りすぎず、洗練が過ぎないサウンド。旋律は微妙に揺れ動き、時に絶妙な”タメ”もあるんだけれど、基本ストレート系であってシンプル。テンションの高いアンサンブルが持続します。思わせぶりな詠嘆とはほとんど無縁で、恣意的な装飾がないから、旋律表現は素っ気なく感じるかも。清潔で健康、熱気溢れて緑豊かなMahler であります。ヴァーツラフ・ノイマンに似るが、こちらのほうが推進力と力感、躍動に勝るでしょう。
第1楽章は繰り返しがありがたく、ウキウキとした”青春の憧憬”(みたいなもの)をしっかり思い出させます。アンサンブルの仕上げは入念を極めるが、あくまで素朴さを失わない。第2楽章は楽しげに溌剌なる躍動に溢れ、第3楽章は淡々として、怪しげなる物々しさはない。基本、速めのテンポ、しっかりとした足取りでムダが少ない表現であります。
終楽章は健全なる爆発がバランス良く表出されます。熱気が空回りしない。要らぬ”揺れ”が存在しない。この録音時、クーベリック53歳壮年の推進力たっぷりだけれど、あくまでバランス感覚を失わない。喧しくならない。響きは濁らない。どろどろした怨念やら、汗水系情熱とも無縁であって、そういうものを求めるのなら、あまりに面白みが少ない!と感じられることでしょう。
力量あるオーケストラに支えられた、余裕の演奏です。全4楽章50分間、あっという間。十数年前の高額購入に後悔なし。CD価格の多寡など、たっぷり、しっかり愉しめば本質的な問題ではないんです。
(2009年1月16日)