Mahler 交響曲第 5番(若杉’88ライヴ)


Mahler

交響曲第 5番 嬰ハ短調

若杉 弘/東京都交響楽団

1988年10月22日 サントリーー・ホール・ライヴ  FM放送からのエア・チェック・カセット〜MDへ

 若杉さんは日本を代表する立派な指揮者。都響とのMahler は全集が出ていましたよね。この録音は、それと同時期の(もしくは同一の)録音と思われます。当日は、この曲の前にBergの「管弦楽のための3章」が演奏されております。ワタシは、とてもこの演奏が気に入りました。

 しかし、いつものワタシのMahler 嗜好からは外れていて、正直、なぜ気に入っているのかがワカらん感じ。狂気、焦燥感、情熱、熱狂・・・・これは足りないんです。オケに厚みがあって、重量級であってほしいのは前提だけれど、肝心なところが足りないと、不満に思うことが多いものです。(例;ショルティ/CSO盤)いっぽうで、オケの豊かな響きを生かした、自然体の演奏に魅かれることもあるから勝手なもの。(例;ハイティンク/RCOのライヴ)

 ライヴでありながら都響のアンサンブルは優秀で、技術的な不満はまったくありません。細部まで神経の行き届いた緻密な演奏。厚みのある響き、重低音の打楽器の迫力、音質的にも瑞々しくて、ホールの奥行き・残響もほぼ理想的。

 まず、悪口から。オケのテンションが低い(?)、というか淡々としている。技術的に低いとか、やる気がない、という意味ではありません。どこをとってもクールで醒めた印象がある。狂気、焦燥感、情熱、熱狂・・・・に足りなく思うのは、そのためでしょう。オーソドックスで、特異なルバートとか「間」とかは無縁。しかし、完成度は高いんです。若杉さんの技量だと思うけれど、大曲をまとめ上げる構成感はたいしたもので、見通しが最後までよろしい。

 各パートに色気が少しずつ不足している。これは贅沢な要望で、むしろここまでやっていることを賞賛すべきかと思います。冒頭のトランペットを例に挙げれば、あともうちょっと「官能性」が欲しいところ。有名な「アダージエット」にしても、「泣き」のエッセンスを1.5%ほど添加してくれれば・・・なんて思います。金管の爆発も、ハメを外すところまでは行っていない。必要にして充分な効果有。

 でもねぇ、この演奏好きです。ここ数日、なんどもなんども聴いて飽きません。上品で静かなんです。都会的で、へんな夾雑物が少なく、絶叫しない。遠浅の砂浜に小さな波がゆっくりと、延々と広がっていく、そこに朝日が昇ってくるような(これ、ワタシが小学生の時に長万部の浜辺で目撃した景色)静かな感動があります。「泣き」のエッセンス抜きの「アダージエット」だって、そのほうがかえって曲の本質が見えるような気がしました。

 第3楽章のワルツも恥じらいがあるし(手練れの日本人が、本場の舞踏会で踊っているような)、終楽章の抑制された表現は「アダージエット」との対比を考えれば、これで文句なしの表現と思います。たしか、Mahler は全曲CDになったはずだから、一度聴きたいもの。(2001年6月23日)


 

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written by wabisuke hayashi