Mahler 交響曲第4番ト長調
(ウィレム・メンゲルベルク/コンセルトヘボウ管弦楽団/ヴィンセント(s))


HISTORY 205257-303 Q DISC 97016 CD10 Mahler

交響曲第4番ト長調

ウィレム・メンゲルベルク/コンセルトヘボウ管弦楽団/ジョー・ヴィンセント(s)

HISTORY 205257-303  1939年ライヴ録音 10枚組2,190円で購入/Q DISC 97016 CD10でも所有

 8年ぶりの再聴となります。HISTORY 204552-308(40枚組)は既に処分済。でも、Q DISC 97016(10枚組)を購入したら、またダブって、そちらのほうがノイズを残してヴィヴィッドな印象がありました。時代を考慮するとかなりの優秀録音(しかもライヴ)。この音源もネットで拾える時代となりましたね。キッカケはSyuzo師匠の「楽譜に忠実、基準はこれである」とのご神託によります。基本、近代管弦楽の精華は良好な音質で聴いたほうが良いに決まっているんだけれど、時に歴史的録音にて超個性的演奏(しかもわかりやすいの)に出会うから油断できない。

 これだけ間隔が空くと、たいてい印象一変しちゃうものだけれど、再聴してもほとんど以前の感想と変わらない。居住地もオーディオ機器も、聴き手本人も変わってしまったけれど。

 楽譜に忠実かどうか知らぬが、第1楽章から揺れ動くテンポ、入念なる細部味付け、粘着質な歌・・・そしてオケの強靱なる威力に驚かされる歴史的演奏であります。最近の若手なら、これほどテンポが行ったり来たり、走ったり止まったり、突っかかったりしたら、音楽の流れが止まってしまってエラいことに〜おそらくはアンサンブル崩壊。結果的に勇壮なるスケールは、怪しげノーコーなるメルヘン(?)に至っております。まさに19世紀残党の浪漫の世界。これは楽譜通りなんでしょうか?

 第2楽章は速めのテンポにて颯爽とリズミカルに開始され、途中優しく懐かしく(弦のポルタメントの古臭いイメージも手伝って)歌うと、その対比が明快に表出されます。コンマス氏の鮮やかな歌、ホルンの強烈な存在主張はさすがコンセルトヘボウ!の実力。トランペットの絶叫も見事に決まって、メリハリ壮絶です。ここもテンポは揺れ動いて、並の指揮者だったらアンサンブル崩壊してしまいそうな、凄い演奏。第3楽章は陶酔の表情、吐息、細部味付けして、甘美な弦がとてもイヤらしい〜くらいセクシーであります。テンポの変遷は唐突だけれど、それが見事に決まっている!

 終楽章の揺れ動きはほとんど唐突とも思える水準であって、例の如し、旋律が伸びたり縮んだり・・・ジョー・ヴィンセント(s)の声質、歌い方には少々時代を感じさせ、逆に時代をしっかり刻印しているようでもあります。往年のレトロ映画を眺めている風情か。噎せ返るような後期浪漫の残照が、濃霧のように立ち込める凄い演奏。素直でキレイなだけの現代演奏には、この最初の歴史的録音が大きな壁となって立ち塞がることでしょう。

 ステレオ〜ディジタル世代の演奏家は、この方向を凌駕する表現を求められるでしょう。最近聴く機会を得た、クラウス・テンシュテット/南西ドイツ放送交響楽団(1976年ライヴ)〜明晰でありながら陰影深いエグさが強烈〜ひとつの回答を見出したものです。

(2010年4月2日)

 いつもながらHISTORY 204552-308(40枚組)でもダブってしまうのが恨めしいところ。閑話休題、音質が極上であること(1939年のライヴでっせ!)、演奏がトコトン個性的でピタリと決まっていてわかりやすいこと。文句なしの楽しさでおおいにヨロシいじゃないですか。「60年も前の録音を聴かんでも・・・」なんて言われるかも知れないが、二度と出まへんで、こんなクッサイ演奏。

 これは「確信」ですね。楽譜はこうだけれど、ここの旋律はこう延ばした方が・・・とか、う〜む、ここは走った方が・・・タップリとポルタメントでね、なんて、いやはや勝手気儘やりたい放題で、天才は曲の神髄をほじくり返して、徹底した自分なりの味付けをして、結果、絶妙の美しさを築き上げて聴き手を驚かすばかり。

 第1楽章はの〜びたり、縮んだりで、これほど揺れる解釈って有でしょうか。(有でしょう)そこいらの若手がこんなことやったら顰蹙ものだけれど、メンゲルベルクだと有無を言わせぬマジック横溢で、とにかく決まってしまう。「この曲のホントの美しさはこうなんだよ」と存分に説得され、これはMahler ではなく、メンゲルベルクを聴かされているんです。

 第2楽章は一転、早めのテンポが流麗です。この柔らかさ、繊細さ、激甘さ、流れの良さ。強面一辺倒じゃないんです。ここでもテンポが揺れが「ザーとらしさ」にならない不思議。21分に及ぶ第3楽章「ポコ・アダージョ」における弦のとことん陶酔。泣き。ポルタメントの遣る瀬なさ(ソロ・ヴァイオリンを聴いてちょうだい)。途中突然テンポ・アップの爆発も並じゃないでしょ。ラスト歓びの炸裂もダメ押し追加点か。

 音質問題ねぇ。このHISTORYのCD(LP時代の記憶曖昧)、そしてワタシの安物オーディオでも、深遠なる世界が完璧に伝わるから恐るべき音楽のチカラ。(単なる誤解ですか?)

 嗚呼、それにしてもなんというオケの美しさ、暖かさ、アンサンブルの優秀なこと。細部まで完全に計算されたメンゲルベルク節を消化するのは、並大抵の技量じゃ追いつかないでしょ?しかも、ライヴでっせ。「Mahler ではなく、メンゲルベルクを」なんて、さっき書いたけど、これほどMahler を美しく表現してくださる演奏も滅多にないでしょ。文句あるか、状態。(ない)

 終楽章。木管の歌がそっと幸せです。正直、ヴィンセントの歌は少々好みではない(やや時代を感じさせる)が、息遣いがオケとピッタリ合っていることは理解できました。存分に歌う旋律。旋律の美を引き出すために必要なるテンポの揺れ。ルバート。アッチェランド。時としてゾクっとくるような、鼻声のような弦の囁き。この木管の暖かさ。ホルンの奥深さ、金管の説得力。漂う安寧感、深い呼吸による安らぎ。

 あくまでメンゲルベルクを聴くべき(ま、どの録音も)CDだけれど、コンセルヘボウの実力を見せつけられるし、この演奏でMahler の虜になっても不思議ではない。あまり使いたくない表現だけれど「稀代の歴史的名演」でしょう。拍手も暖かい。(2002年9月27日)


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written by wabisuke hayashi