(旧)Mozart 交響曲全集 (エーリヒ・ラインスドルフ/フィルハーモニック・シンフォニー・オブ・ロンドン)
Mozart
交響曲全集(第1〜41番)
エーリヒ・ラインスドルフ/フィルハーモニック・シンフォニー・オブ・ロンドン
MCA MCAD2-9808AB/9812AB/9814AB/9818AB(全8枚) 8,000円で購入(いま思えば高い?)
おそらく、これは史上初のMozart 交響曲全集録音のはず。録音時期は50年代中盤、旧Mozart 全集によっていて、ちゃんと1番から41番まで揃っています。めったにお目にかかれない第37番もしっかり入っていて貴重。
ラインスドルフは1993年に亡くなっているし、存命中も派手な存在ではなかたように思います。最近では、かつて音楽監督を務めていた(1962年〜69年)ボストン交響楽団とのベートーヴェンの交響曲全集が、その安さ故話題になっていました。(立派な演奏、だそうです。未聴)
この録音の存在を知ったのは、以前たしか中古レコード屋で一部見かけたことと、五味康祐さんの「音楽巡礼」(新潮文庫。もう売ってないかな?)の18ページに登場していたから。このエッセイは、オーディオと音楽にとり憑かれた作家の、人生と悩みの日常が描かれている傑作。その中で、ラインスドルフのMozart 全集を売り払った男を思い浮かべながら、中古LPを購入している一場面が登場していました。
さて、肝心の演奏ですが、よくもまあこれほどガサツでそっけない演奏ができるな、と感心するくらいの水準。
Mozart の交響曲は、そのひとつひとつの個性が際だった名曲揃いと思いますが、どれも同じくニュアンスがそうとう欠けた演奏でワン・パターン。よくいえば元気よくストレート、その実、感情移入の少ない乾いた仕事ぶりで困ったもの。
アンサンブルは悪くありません。ラインスドルフは若い頃トスカニーニに心酔していたそうで、この演奏も早めのテンポでどんどん進めているところが似ていなくもない。でも、トスカニーニの演奏と比べてみると、音の集中力と歌に溢れた旋律がけた違いでした。(そんなに好きな演奏でもないけど)
繰り返しは全くしておりません。いまどきこういう愛想のないガサツな演奏も珍しい。・・・・・・と、ニヤニヤしながら聴いている私も悪趣味でしょうか。
オーケストラの実体はロイヤル・フィル。まだ、ビーチャムが現役だったころで、優美な響きを誇っていたはずなのに、その片鱗もない。
同時期のEMI録音で、最近テスタメントで復刻されたシューベルトのミサ曲が「素晴らしい歌心に溢れた名演」だそうで(未聴)、このMozart 録音にはいったいどんな事情があったのでしょうか。(ギャラが異常に安かったり、弁当がまずかったり・・?リハーサルの時間がなかったのか)
残響と奥行きは足りず少々乾き気味ながら、明るい音質でかなりの水準。モノラル8:ステレオ2位の割合。インデックスが少々不親切。(初期の作品は全楽章で1トラック)
ワタシ自身はふだん聴き比べ用に使ってます。先日もマッケラス指揮の初期作品を2枚手に入れて、(聴き比べて)その素晴らしさを噛みしめました。(失礼!)
とにかくマニアックで、どう転んでも復活して華々しく売り出される可能性はひじょうに薄い。見かけたら購入されることをお勧めします。
自慢のコレクションのつもりですが、誰もうらやましいとは思わないでしょう。
いいんです、それでも。Mozart の全集は持っているだけで価値がある。
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