L.Mozart シンフォニア集
(ケヴィン・マロン/トロント室内管弦楽団)


NAXOS 8570499 L.Mozart

シンフォニア ト長調 (Eisen G8)
ベルヒテス・ガーデンの音楽「おもちゃの交響曲」
シンフォニア ニ長調 (Eisen D15)
シンフォニア イ長調 (Eisen A1)
シンフォニア ト長調「新ランバッハ交響曲」

ケヴィン・マロン/トロント室内管弦楽団

NAXOS 8570499 2007年録音

著名なる「おもちゃの交響曲」はカッサシオン ト長調第3・4・7楽章とのこと。オカリナ、ハーディ・ガーディ、ホイッスル?、そして不明なおもちゃ的打楽器、これらが超絶技巧なんです。ほんま。この団体は古楽器?とても洗練され、クールなアンサンブルを誇って典雅な雰囲気も溢れました。但し、父Mozart の作品は、時代の制約故か、少々型どおりでツマらぬ感じしないでもないかも。(「音楽日誌」2012年11月より)
 ヨーハン・ゲオルク・レオポルト・モーツァルト(Johann Georg Leopold Mozart , 1719ー1787)云うまでもなく我らがヴォルフガング(1956-1791)の父親。「新ランバッハ交響曲」は旧全集では息子作となっておりました。大昔「おもちゃの交響曲」はHaydn作となっていて(現在ではエトムント・アンゲラー/Edmund Angerer、1740-1794 の作品とされる)ヘルベルト・カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団(1957年)(17cmLP)を愛聴しておりました。「ピーターと狼」(1956/57年)とか、カラヤンみたいな大指揮者が手掛けていたのも驚きというか、立派というか・・・閑話休題(それはさておき)

 これも”音楽の見聞を広げる”一環の拝聴。トロント室内管弦楽団はカナダの古楽器団体とのこと。昨今技術も成熟して、あちこち上手いのが出てきているんですね。ずいぶんおとなしい、しっとり穏健派の演奏であって、かつてのようにリズムにエッヂを立てて強烈な印象を残すスタイルではありません。作品そのものが茫洋とノンビリしたものなのかも。息子に比べて、陰影とかメリハリ、霊感にちょっぴり不足っぽい感じ。自然な音質極上。

 シンフォニア ト長調 (Eisen G8)はAllegro-Andante-Menuetto-Allegro〜4楽章の古典的な佇まい、編成に弦4部+ホルン+オーボエを加え、とくにホルンの活躍がスケール大きな印象を与えます。第2楽章「Andante」のほの暗さ、管楽器の息の長い伴奏に乗って弦が細かい旋律を歌うところ、息子の初期交響曲にクリソツでしょう。模範的な第3楽章「Menuetto」を経、終楽章「Allegro」な躍動にシンプルな爽やかさを感じました。12:20。

 「おもちゃの交響曲」は誰でも知っている緩急緩の3楽章、"Berchtolds-Gaden Musick"(「ベルヒテスガーデンの玩具店製のおもちゃを使った音楽」の意とはWikiの受け売りです。その”おもちゃ”が問題、楽器指定はどーなっとんのか?50年前の記憶をたどれば、たしかカラヤン盤には”おもちゃのトランペット”が活躍していたはず。それがないことに(勝手な)違和感有、いっぽうでハーディガーディのバグパイプ風暖かい連続低音、幾種の笛の多彩な活躍が抱腹絶倒にオモロいもの。「カッコウ」の音形がユーモラスですよね。もうなんの音かさっぱりわからぬ打楽器?(おもちゃの太鼓?鈴とかガラカラとかいろいろ)は記憶通り。第2楽章「Menuetto」に於ける笛(というかなんというか)自在なひょろひょろ攻撃にびっくり!(カデンツァか)

 ずいぶんと抑制され大人しめな演奏であって、終楽章「Finale: Presto」も遅いテンポに静かに開始、やがて各種おもちゃ参入、途中からモウレツにテンポを上げて賑々しく盛り上げます。ハーディガーディも再登場。10:35。

 シンフォニア ニ長調 (Eisen D15)はホルン大躍動する第1楽章「Allegro molto」はスケール大きな躍動。第2楽章「Andante」は落ち着いた風情にホルンはお休み、終楽章「Menuet」というのも交響曲ジャンル完成途上なのか、ゆったり晴れやかにノンビリとしたホルンが木霊する、牧歌的なテイストであります。14:02。

 シンフォニア イ長調 (Eisen A1)は弦楽合奏のみ。溌剌とした緩急緩3楽章に「Menuet」はありません。軽快上機嫌な第1楽章「Allegro」弦の細かい刻みは、息子の初期作品を連想させるでしょう。第2楽章「Andante」に於ける優雅な歌も同様、第3楽章は「Allegro」となっているけれど実際はメヌエットじゃないの?三拍子だし。(ここわずか1:03。尻切れトンボみたい)合計7:28。

 シンフォニア ト長調「新ランバッハ交響曲」。息子の作品に間違えられるほど、古典的に整った風情の4楽章作品也(時代的にカール・ベームの全集には収録される)。ホルンとともにオーボエがその存在を主張して流麗な開始の第1楽章「Allegro」。旋律は変化に富んで躍動する名曲也。第2楽章「Andante un poco allegretto」の典雅な味わいも、息子の作品と一緒に収録してあげたいほどの牧歌的暖かい風情に溢れました。(クリストファー・ホグウッド全集には収録されていたはず)管楽器が休むのはお約束なのかな?

 第3楽章「Menuetto」も優雅かつゴージャスに、管楽器が広がりを作り出します。型通りの舞曲はほっとする懐かしさ。終楽章「Allegro」はちょいとフクザツにリズムを刻んで、熟練した作風なのでしょう。23:56はけっこうな規模の交響曲であります。

(2016年2月7日)


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