Sibelius クッレルヴォ 作品7
(オスモ・ヴァンスカ/ラハティ交響楽団)


BIS CD1215 Sibelius

クッレルヴォ 作品7

オスモ・ヴァンスカ/ラハティ交響楽団/リッリ・パーシキヴィ (ms)/ ライモ・ラウッカ (br)/ヘルシンキ大学男声合唱団

BIS CD1215 2000年録音

 ここ5−6年【♪ KechiKechi Classics ♪】 の週一定例更新に苦戦しております。まず作品選定に悩み、趣味だけどしっかり聴かなくっちゃという自戒も有、挙句集中力も続かない・・・聴いているうちに飽きる・・・なんて情けない状態に。今回もこんな初期大曲、馴染み薄き難曲をどー聴くんだ〜

 Sibelius 中、知名度、演奏機会に於いてもマイナーな存在、大柄長大声楽を伴う大作(80分を超える)・・・旋律のわかりやすさローカルな魅力に溢れていると感じます。冒頭第1楽章「導入部 Johdanto (Allegro moderato)」辺り、ほとんどNHK大河ドラマ!勇壮、わかりやすい、カッコよい旋律続きました。声楽登場楽章(第3/第4楽章)も同様、題材は母国の伝説?「カレワラ」から採られた悲恋物語らしいけど、ま、雰囲気だけ味わいました。

 ラハティ交響楽団は整ったアンサンブルに驚かされる実力(但し、実演を聴いた人の報告ではヘロヘロとのこと)。但し、全体に線が細いというか、静かなところでテンション下がり気味か、といったところ。洗練されても、迫力大爆発はもうちょっと欲しいところ。声楽には文句ありません。いずれ交響曲第1番より更に前、Sibelius の凝縮した個性は姿を見せません。名曲。(「音楽日誌」2014年4月)より

 ↑半年ぶりの拝聴は、なるほどド・シロウトの感想としてこんなもんか。Sibelius は大好きだけど”クッレルヴォ”は回数を聴いていない、誰の演奏というほど云々できぬ(棚中探索すると数種CDありそう)まず作品をしっかり拝聴する、そんな趣旨でした。筋はWiki参照お願い。楽曲的に大規模だけど、楽器編成は基本2管編成、でも凄く立派に聞こえます。ラハティ交響楽団は全体として”芯が甘い”といった勝手な印象を持ちました。

 第1楽章「 導入部 Johdanto (Allegro moderato)」〜NHK大河ドラマ風ねぇ、まさにその通り。悲劇的かつ勇壮、哀愁に充ちて印象深い、わかりやすい旋律(クッレルヴォのテーマ)満載の開始であります。後年一聴Sibelius !と理解できる”独特の話法”から遠く、幻想的甘美荒涼な風情はその片鱗を感じさせぬでもない(やや冗漫)・・・ラハティ交響楽団のアンサンブルは端正だけど、響きの厚みとか威力はあまり感じない〜Sibelius にはそれで良いのでしょう。悲劇の発端はこんな感じ、今は昔〜お話(一家皆殺し。そしてクッレルヴォが生まれ、生き残る)は始まる、といった風情か。起承転結に非ず、エピソードは延々と続く(12:50)。

 第2楽章「 クッレルヴォの青春 Kullervon nuoruus (Grave)」緩徐楽章。主人公クッレルヴォの青春は悲惨なもの(鍛冶屋イルマリネンに奴隷として売り渡される)曇った空、重い鎖を引きずるような、くぐもった弦の響きから開始されました。この辺りもわかりやすい哀愁の旋律なんだな、後年の突き抜けたような交響曲旋律からずいぶんと遠い。やがて木管の動きが色合いを付けてやや明るく、エピソードの唐突な羅列を感じさせます。金管の悲痛な叫びを挟みつつ、木管の軽妙な旋律も登場して、全体として遣る瀬ない心情が表現されているのでしょう。クッレルヴォの怒りは高まって、野獣を呼び寄せる(19:18)。

 第3楽章 「クッレルヴォとその妹 Kullervo ja hanen sisarensa (Allegro vivace)」(声楽有)。愛しあった女性は生き別れの妹であった悲劇。ヴィヴィッドな弦の躍動(5拍子なんだそう/前半のリズムを支配して効果的)に乗って男声合唱団登場、カッコ良いとこでっせ(ナニ言っているのかワカランけど)。ラウッカー(br)、パーシキヴィ(ms)が愛の歌を交わし合って雄弁、合唱と交互に物語は進んで、いや増す熱と昂揚。この楽章は”エピソードの羅列”的印象ではない、独立した構成を感じさせます。拍子変わって管弦楽大爆発は妹哀しき自裁(入水)への悲劇いよいよ?なんせ二人の言葉は意味不明、やがて(小鳥か弱く啼くようなピッコロとともに)女声ソロ延々と続いて、それっぽい感じありますよ。

 彼女の声は途切れ、少々の間とともにクッレルヴォの嘆き(バリトン独唱)へ。衝撃的なテインパニの一撃にて幕。最長の25:27。全曲中の白眉でしょうね。

 第4楽章 「クッレルヴォの出征 Kullervon sotaanlahto (Alla marcia)」〜スケルツォ楽章だから、リズムは粛々と軽妙、ほの暗い風情が漂う中、妙な安らぎもあります。この辺り後年の個性が顔を出しているかな?クッレルヴォが憎きウンタモへの復讐を決意するところですね。オーケストラはやや線が細いというか、ヤワいというか、アンサンブルは雰囲気たっぷりにマイルド。ここはもっと激しい爆発躍動が欲しかったところ。上手いけど。(10:04)

 第5楽章 「クッレルヴォの死 Kullervon kuolema (Andante)」。いよいよラスト。静謐な男声合唱から開始するのは復讐を終え、自らも命を断ったクッレルヴォへの哀歌ですね。これが延々と続いて盛り上がりも有。やがて第1楽章”クッレルヴォのテーマ”(NHK大河ドラマ風)回帰〜なかなか勇壮、美しいけど、なんか冗漫やなぁ、勝手な言い種だけど。ラスト、Bruckner風に大爆発するところはお見事な白熱也。(12:22)

 ・・・こうしてみると交響曲と呼んでも差し支えない構成になっていたのだな。以上、ド・シロウトは頑張って全曲拝聴いたしました。お粗末。

written by wabisuke hayashi