Beethoven 交響曲第5/6番
(パウル・クレツキ/チェコ・フィルハーモニー)


スプラフォン COCO-80404→05 5枚組3,990円 Beethoven

交響曲第5番ハ短調 作品67(1967年録音)
交響曲第6番へ長調 作品68「田園」(1965年録音)

パウル・クレツキ/チェコ・フィルハーモニー

スプラフォン COCO-80404→05 5枚組3,990円(中古〜少々高い)で購入

 また、買っちゃいました。Beeやんの全集。ここのところ徳島に出張続きでしてね、ホテルの前に中古レコード屋さんがありまして、このCDを目撃、グッと来ました。で、次の出張の時、とうとう我慢できず買ってしまいました。1900年生まれ1973年に亡くなった、あまりに渋い指揮者であるパウル・クレツキの全集。どういうわけか1996年に国内盤で発売されておりました。

 「英雄」は、この人が南西ドイツ放響を指揮したコンサートホール盤で出会いましたし、LP時代はこのチェコ・フィルとの「第5・9番」の2枚組を持っていたはず。演奏内容はとんと記憶がなくて、なんとなくおとなしい演奏かな、と思っておりました。で、このたび詳細な録音データを見るに付け、たいへんな時期であり、貴重な記録であることを再確認しました。1968年「人間の顔をした社会主義」を掲げた「プラハの春」は、(旧)ソ連をはじめとした周辺諸国の戦車に無惨に踏みにじられます。

 チェコ・フィルの指揮者であったアンチェルはカナダに亡命。当時、東ドイツで活躍していたノイマンが跡を継ぎましたが、このオケはそれから音が変わったと思うのです。クレツキの全集は、第1・2番(1968年1月)が最後の録音であり、アンチェル時代の音が保存されているはず。

 ハ短調交響曲なんて、聴き飽きましたか?もう手元に何種類のCDがあるのかもわかりませんが、聴く度に新しい発見がある。感動する。ジ〜ンときます。クレツキはポーランド人ですが、ドイツで音楽教育を受け、構成感のしっかりとした演奏をする人だと思います。(Mahler も立派な演奏ですよ)特別にエキセントリックな演奏はありませんが、並の水準でありません。充分個性的、なによりオケの音色が素晴らしい。

 テンポは中庸、リズムは溌剌として、思わぬ内声部の旋律の突出も新鮮・・・・・ということより、素朴で暖かい、中音域が豊かな響きが魅力なんです。木管なんてほんとうに飾りがなくて、ちょっと聴くとじつにショボイ。ショボイが、何度も聴かされるともう病みつきになる音色。オーボエは粗野で洗練されていなくて、これはこれで滅多に聴けない貴重さ。ホルンなんて(例の第5番の3楽章)、厚みがあって、豪快で、「嗚呼、これが例のチェコ・ホルンね」と初めて納得します。「田園」の3楽章のホルンもこんなに際だつ響きは初体験。

 「弦の国=チェコ」と言われますよね。「田園」の弦がもうたまりません。ウィーン・フィルの弦とは意味が違っていて、ちょっとザラっとした感触が絡み合って、コクと深みがいかにも独特。クレツキは、フレージングも明快だし、リズムの切り方がキリッとしていて、しっかりとしたアンサンブルを作る人だと思います。神経質さはありません。オケの威圧的な分厚さと迫力、ではなくて、誤解を恐れずに言えば「ヘタウマ」系演奏〜ヘタなオケではないのはもちろんですが、落ち着いた、淡々とした語り口は説得力がある。

 ハ短調交響曲の終楽章、「田園」の嵐の場面、オケが全開で叫ぶところでも、素朴さ、暖かさは失わない。録音は年代相応で、優秀とはいいがたいが自然で聴きやすい音質。まだ全集を聴き通していないのですが、どこでも話題にならないのが不思議なくらい立派な演奏と思いました。

 ハイティンクのコンセルトヘボウといい、このチェコ・フィルといい、最近「オケのそのものの味わい」に惹かれています。地味で飾りの少ない演奏でも、満足度は高い。これはきっと、シェルヘン辺りを聴きすぎた反動かもしれません。

(2000年5月12日更新)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi