Bach ブランデンブルク協奏曲第2/3/5番
(ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィル 1964年)


海賊盤(DG) シーティーエー CTA60 Bach

ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調BWV1047
アドルフ・シュルバウム(tp)/カール・ハインツ・ツェラー(fl)/ローター・コッホ(ob)/ミシェル・シュヴァルベ(v)
ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BWV1048
ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調BWV1050
ツェラー(fl)/シュヴァルベ(v)/エディット・ピヒト・アクセンフェルト(cem)

ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー

海賊盤(DG) シーティーエー CTA60  333円にて購入  1964年録音

 「海賊盤はやはり音楽界のためにヨロしくないのではないか」との厳しい批判を受け、少々反省した2004年初頭。しかし、皮肉にもコレをキッカケに「海賊盤」方面の棚にばかり目が行って、結果として聴く機会が増えました。このCDは、まだ「海賊盤」の概念もあまり知らなかった頃に購入したもの。もう10年以上前になります。1990年代前半だと、この価格は衝撃中の衝撃だったんです。こなれた価格で正規盤を見掛けたら買いますので、勘弁してください。このご恩返しは必ず!(と、世間にまずお詫びを)

 記憶曖昧だけど、サンモリッツ辺りで避暑をかねて演奏旅行〜ご当地のホテルで録音、みたいなパターンじゃなかったでしょうか。一時流行った、やたらと緊張感と強烈なリズムを強調するスタイルじゃないし、大時代的な異形なるスケールを誇る演奏でもありません。もっと、自然体というか”抜いた”演奏です。ずばり、緩い、と評価されても仕方がないかな?ベルリン・フィルの名手を揃えた美しい演奏だと思います。

 今時第2番にフルートなんて・・・と思われるかも知れないが、現代楽器でトランペットとの音量バランスを考えればこれはこれで正しい選択。ツェラー(fl)コッホ(ob)シュヴァルベ(v)と揃えば、どういう演奏になるかほとんど想像つきます。甘く、しっとりと、そして流麗なる技巧を誇って耳あたり抜群のソロイスツ。カラヤンは意外となにもしないというか、特別にレガート奏法を強調するでもない、淡々とした指揮ぶりだけれど、結果としては穏健で豊かなアンサンブルが実現されます。リキみなどどこにも存在しない。

 第3番は、まさにこの演奏でBach と出会ったワタシ〜小学生の時だと思います。(↓以下に書いたとおり)これはベルリン・フィルのゴージャスで厚みのある弦楽アンサンブルが、脂粉香水たっぷりと会場に広がります。これぞ(厚化粧。豊満)叶姉妹的演奏の極北。残響タップリ、旋律は余韻を持って音と音の間を作らない。常に残響で埋め尽くされ、横流れに、粘着質をもって音楽は進みます。こんな演奏、最近ないですよ。音楽のスケールはもの凄く大きいんです。

 (短いアダージョを挟んで)第3楽章の味わいもまったく変わらず。重量感ある音楽がずるずると引きずられて、いかにも金持ち音楽〜バロックではなくて、あくまでカラヤン節。リズムは弾まないが、妙な躍動感はたしかにあって、ワタシは好みの演奏です。

 第5番も溌剌感という意味では失格の、あわてず騒がず演奏でしょう。でも、四の五の言わずツェラー(fl)シュヴァルベ(v)両人の妙技に聴き惚れましょう。Bach で、これほど切なく、甘く歌うフルートって聴いたことありません。嗚呼豪華絢爛。優雅。日本にも来日して、教育者としても有名だったアクセンフェルトは、2001年に亡くなったようですね。チェンバロの音色は少々金属的だけれど、音量的には時代錯誤的な強烈に鳴り渡るものではなく、抑制の利いた淡々としたものでした。

 もちろん技術的になんらの問題もないし、インテンポでソロを通します。終楽章はリズムがハズむ舞曲的な音楽だけれど、ややのんびりして、喜ばしい味わいを実現しておりました。おそらくはちょっと気取ったホームパーティのBGMに最適な、眉間に皺の寄らない、説教臭くない、美しいBach です。全曲、聴いてみたいもの。(やがて正規盤入手全曲拝聴いたしました)

(2004年4月21日)
以下は、サイト開設当初の文書そのまま。あまり変わり映えしないが。


 たしか、ご近所の電気屋さんのカゴ(デッド・ストック処分〜ホコリまみれ)にて、3枚分1,000円で購入したはず。第1・4・6番はあったら買っていたはずだから、きっと売っていなかったのでしょう。これは旧い方の録音ですね。誰がなんと云おうと、カラヤンのバロックは豪華で大好き。バロックらしくないセクシーさが、もう抜群に新鮮。

  第2番はバロックの演奏スタイルを云々する前に、ベルリン・フィルの妙技に聴き惚れてしまう。上手い、美しい、唖然とする。リコーダー・パートは、ツェラーの官能的なフルートで演奏され、名人コッホの、鼻に掛かった甘いオーボエの音色もいつも健在、トランペットだってきっちりとした演奏ぶり。カラヤンはリラックスした指揮で余裕。

  第3番は、ややしんねりむっつり粘って重いが、ゴージャスなベルリン・フィルの弦楽合奏が堪能できます。残響たっぷりなのか、わざとずらして弾いているのか、とにかく分厚く、奥行きがあって立派な響き。バッハはどんな演奏スタイルでも、音楽の骨格としての魅力は崩れません。この演奏が、私とBach との出会いでした。(小学生時代、友人に借りた17cmLP。そんな初体験でもBach への道は誤らない)

  第5番は、やはりツェラーのフルートが心に染み渡りました。名手シュヴァルベのヴァイオリンも艶やか。チェンバロの華やかな独奏を聴くべき曲ながら、ここでもベルリン・フィルのすばらしい合奏力が圧倒的。例の長いチェンバロ・ソロ(アクセンフェルト!そういえばこの人との協演というのも凄い)は、意外と地味でそう目立たない。この曲に躍動感が足りないのは致命的ながら、やはり聴いていて気持ちがいいのはたしか。

 きっと小編成の演奏なのでしょうが、この演奏スタイルには参りました。なんとなくストコフスキーのバッハにも一脈通じるような、超重量級、極色彩に磨き上げられたバロック。しかも、都会的に洗練されている。(?)リズムがもっさりしているのは、最近にない珍しいスタイルでしょう。「おおいなる勘違い」ぶりが、もうたまりません。これもある意味、伝統を墨守していて感慨深い。

 音質はまぁまぁ。きっとオリジナルでは、もっとちゃんとした音質だと思います。別な会社ですが、全曲海賊盤(駅売り激安名曲盤)で手にはいります。1枚当たり800円以下でしたら買ってみて下さい。(カラヤン文庫でも出ていましたっけ?)ワタシは曲の組み合わせが替わっているので、ダブリ買いする勇気はありません。(でも欲しい)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi