Beethoven 交響曲第8番ヘ長調 作品93(カラヤン)


素材発信 ザ・ダイソー CD-6 @100 1946〜1948年録音 Beethoven

交響曲第5番ハ短調 作品67
交響曲第8番ヘ長調 作品93

カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー

素材発信 ザ・ダイソー CD-6 @100 1946〜1948年録音

交響曲第8番ヘ長調 作品93(1962年録音)
「シュテファン王」序曲 作品117
「アテネの廃虚」序曲 作品113

カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー

KAISER DISKS  KC-0015  中古にて@116で購入

交響曲第8番ヘ長調 作品93(1956年録音)
(付;交響曲第6番、エグモント序曲)

カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団

ECHO INDUSTRY ECC-616 @1,000で購入(高い!)

 Beethoven の交響曲は名曲だし、聴く機会も多い。でも、どうも気分的に重くて苦手意識があります。そのなかでも第8番はわりと気に入っていて、気軽に楽しめるほうかも。「古典派」なんて音楽の授業中に習いましたが、第2楽章「アレグレット・スケルツァンド」なんて、うんと前衛的で、これをちゃんと聴かせるのは至難のわざでしょう。

 この曲はあまりいじらずに、颯爽と楷書の表現をしてほしいもの。学生時代、はじめてFM放送をエア・チェックしたのがこの曲だったはずで、ハイティンク/ロンドン・フィルの演奏。いまとなっては記憶の中にしか存在しない演奏だけれど、飾り付けの少ない、まっすぐな演奏で一つの理想を見たような思いがしたものです。(復刻を願う)

 KAISER DISKSの1962年盤は、別に珍しい録音でもなんでもなくて、有名なDG録音が「The Great Karajan's Collection」という海賊盤で売られたもの(の中古放出)。この演奏、メヌエットが遅く、優雅な(締まりがないともいう)記憶があって、カラヤン特有のエッチなスタイルと思っておりました。

 ところが十数年ぶりに聴いてみると、印象一変。やや細部の歌いまわしにカッコ付けて反発は感じるが、全体として引き締まったアンサンブルが魅力的。ベルリン・フィル(このあたりが録音では全盛期か)の各パートの美しさが際立っていて、重量感もそうとうなもの、というか、ありすぎで、この曲には似つかわしくないくらい。

 かつて反発したはずの「締まりなしメヌエット」も、記憶通りの演奏だったが、拒否反応は出ませんでした。もしかしてワタシのオーディオ環境の違いの影響が大きいのかも。(このCDは勝手にLPからCD化みたいで、必ずしもよい条件ではないが)全体の流れと同時に、細部を気にするようになったワタシの変化もあるでしょう。ちょっと見直した演奏。

 このCD、収録が40分に届かないが、マイナー系序曲も2曲揃えてくれて選曲が渋い。正規盤もいまや一枚1,000円を切るから、もっと印象が変わるのかも知れません。


 戦後間もない壮年期のカラヤンの演奏が、100円ショップで手に入ります。戦時中ナチとの関係で演奏会に出られなかったカラヤンの才能に目を付け、レッグがEMIに録音させた一連のもの。音質は時代相応というか、いつもながらこのレーベルの録音水準は時代の後塵を拝しております。閑話休題。

 ウィーン・フィルも戦後の厳しい時代だったのでしょうが、それでもベルリン・フィルとの違い歴然で、全体として柔らかく、暖かい響きが好ましい。カラヤンらしいスタイリッシュな味わいは充分だけれど、クセを感じさせることも少なく、つまりあまりエッチではない。オーケストラを自由自在に扱うことができなかったせいだと想像されます。

 終楽章のテンポの揺れが、ベルリン・フィル盤にはない面白さでしょう。後年のレガート奏法はまだ表面化していないが、微妙なテンポの揺れが妙に生暖かくて、カラヤンのイメージと異なります。立派な演奏に間違いはないが、さきにベルリン・フィル盤を聴いてしまうと分は悪い。まだ完成途上、といった印象でした。

 ところが、第5番ハ短調交響曲が強烈な名演。トスカニーニの推進力に、柔軟性を付け加えたようなスタイルで、頻出する「間」の決まりかた。節度あるテンポの揺れは、ものすごい説得力があって、美しさと緊張感が同居します。

 若々しくて、やや強引で、オーケストラとの個性のぶつかり合いが好ましい結果を迎えています。この演奏、ここ数年で聴いたうちでも屈指の名演奏でした。音の状態を忘れさせます。


 カラヤン最初のBeethoven 全集では、唯一のステレオ録音である第8番。音質の問題もありますが、オーケストラの響きが軽快で、明るい。溌剌として元気いっぱい、フレージングが清潔なのは驚くばかり。

 後年の手慣れたアンサンブルをまとめる手腕とは一風違っていて、前のめりで勢い余ってしまうところが、この曲には相応しい。これは、まさにトスカニーニの味わい。語り口の上手さは充分だけれど、それよりも存分にリキんだ、叩き付けるような旋律が嬉しい。

 やはり、カラヤンはフィルハーモニア時代が一番だと思いますね。体内には性欲が充満しているのかもしれないが、「エッチ」なそぶりはまったく外には見せない。かの哲学的な「アレグレット・スケルツァンド」は、喜びにあふれてハズむようなんです。

 フィルハーモニ管の美しさは、ドイツ・オーストリア系とは意味が違っていて、無用に重くなく、この曲には相応しいと思います。「メヌエット」のバランス感覚も、賞賛に値する出来でした。ちなみに「エグモント序曲」は超ハイ・スピードの「もう、どうにも止まらない」演奏。

 嗚呼、Beeやんばかり、続けて聴くと疲れてかなわん。(2001年6月8日)


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written by wabisuke hayashi