Bach ヨハネ受難曲 BWV425(カール・フォルスター/聖ヘトヴィヒ大聖堂合唱団/
ベルリン交響楽団/フリッツ・ヴンダーリヒ/フィッシャー=ディースカウ/エリザベート・グリュンマー他)


このジャケットはEMI 0964842 Bach

ヨハネ受難曲 BWV425

カール・フォルスター/聖ヘトヴィヒ大聖堂合唱団/ベルリン交響楽団*オーボエにローター・コッホのクレジット有
フリッツ・ヴンダーリヒ((t)福音史家)/ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ((br)イエス)/エリーザベト・グリュンマー(s)/クリスタ・ルートヴィヒ(ms)/ヨゼフ・トラクセル(t)/カール・クリスティアン・コーン(b)/リーザ・オットー(s)

このジャケットはEMI 0964842 1961年6月録音(ベルリン、グリュネヴァルト教会)

 ここ最近”歌もの”に凝っておりまして、言語個々の意味合いはもちろんわからない(粗筋を知っている程度)けれど、肉声の情感を快く感じます。Bach は旋律が美しいこと、声楽ソロに通奏低音、声楽ソロと器楽がオブリガートしたり、荘厳な合唱のコラールに心洗われたり、この”ヨハネ”も名曲中の名曲!最近は古楽器による演奏、合唱も軽快さっぱりとしたテイストが主流でしょう。既にパブリック・ドメインとなった1961年録音は、聖ヘトヴィヒ大聖堂合唱団の指揮者であったカール・フォルスター早すぎた晩年(1904-1963)の録音です。歌い手は著名な人ばかり、Berlin Symphony Orchestra(これは旧西の団体か)というのが不思議だけれど、ベルリン・フィルの名手ローター・コッホ(ob)がクレジットされておりました(この作品はとくにオーボエ大活躍!に非ず、それでもあちこち彼(か)の軽やかな音色が存在を主張している)実演の流れでもあったのか、その経緯はわかりません。

 古楽器系最近の録音に耳馴染んでいるし、合唱のヴィヴラート過多昔風、大仰なるスタイルに閉口する往年の録音に出会うこともしばしば。ここでの聖ヘトヴィヒ大聖堂合唱団は情感豊かに充実し、表情は大仰に非ず、洗練されて現代の耳に違和感はない〜どころか(あまり”ヨハネ”を数多く聴いていないけれど)これは最高の出来かも。声楽ソロの緊張感溢れる掛け合いに涙が出る程。ベルリン交響楽団の器楽アンサンブル(弦5部、ヴィオラ・ダモーレ、ヴィオラ・ダ・ガンバ+通奏低音。フルート2、オーボエ2)も予想外に誠実に整ったもの(室内楽的なオブリガートはさすがに表情はちょっぴり濃厚〜それも悪くない「血に染みたる彼の背の」)。音質は現役の鮮度を21世紀に保っておりました。

 しかし、なんといっても声楽ソロが凄い!Fritz Wunderlich, 1930-1966フリッツ・ヴンダーリヒ(t)の福音史家は当時31歳、彼が事故で亡くなるのは1966年でっせ。イケメンであり端正、澄んだ美声に色気有、それがが全曲に渡って活躍!これが最大の魅力、キーポイントでしょう。”マタイ”に比べ劇性に勝り、福音史家の活躍の場も多い作品に彼の起用を意図したものなのでしょう。説教臭い(というとファンから叱責が飛ぶ)フィッシャー・ディースカウのイエスは役柄にぴったり!荘厳な偉容に充ちたもの。圧巻、凄い存在感。イエスが登場すると通奏低音はポジティヴ・オルガンとなります。「Es ist vollbracht ! 成し遂げられた」ってクリスタ・ルートヴィヒ(ms)ですか?これも思いっきり敬虔な思いを込めたもの。ここでの器楽アンサンブルも少々重く、しかし充分効果的。

 ド・シロウトが言及するのはこのくらいが限界、華麗なる加齢は体力も集中力も落ち気味故CD2枚分、しっかり最後迄集中したのも珍しいこと。自分は基本古楽器派を自認するけれど、新しい録音+古楽器を使用すればすべて佳し、みたいな単純な結論じゃないでしょう。充実した聖ヘトヴィヒ大聖堂合唱団(ほんま涙が出るほど!「Ruht wohl/安らかに眠ってください、聖なる骸よ」)そしてヴンダーリヒを先頭として、とてもわかりやすい、愉しい2時間を過ごせました。NMLにて拝聴可能です。ネットから偶然入手した音源に陶然としておりました。

(2015年3月21日)


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written by wabisuke hayashi