Bach ヨハネ受難曲(岡山ポリフォニー・アンサンブル)


Bach

ヨハネ受難曲 BWV245(全曲)

坂本尚史/岡山ポリフォニー・アンサンブル(28名)・合奏団(16名)  下山恭正(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、田之村真一(リュート)
福音史家;松本敏雄(t)  イエス;小原浄二(br) ピラト・ペテロ;佐々木直樹(b) 脇本恵子(a) 下女;藤井友佳(s) 下役;近江一成    有馬雄二郎(t)

1999年11月23日 岡山カトリック大聖堂ライヴ 創立15年記念演奏会(当日の録音をCD-R化していただいたもの)

 逢うて別れて
 別れて逢うて
 末は野の風
 秋の風
 一期一会の別れかな

 これ、高校生時代に誰かが黒板に走り書きしていた歌で、うろ覚えで間違っているかも知れません。もしかして有名な歌なのかも。1999年といえばワタシは岡山に転勤でやってきた年で、この時期は「2000年問題」絡みの商品確保でバタバタしていたはず。職場のごく近所で、こんなすてきな演奏会が開かれていたなんて知る由もありませんでした。

 岡山ポリフォニー・アンサンブルは、岡山が全国の誇って良いアマチュアの団体ですが、ワタシは最近までその存在さえ知らなかったのです。昨年2000年12月3日の演奏会の存在を偶然に知り、当日、気紛れで出掛けた演奏会は感動的でした。その感想文をHPに掲載し、それがご縁で団員の方から連絡をいただき、更に更にこのCD迄いただいてしまう・・・・人生のつながりなんて、ほんの偶然の連続かも知れません。

 ワタシのような市井の「隠れ切支丹」(おお、偶然にこの音楽は受難曲。こんな茶化した比喩を使っちゃマズいか)は、孤独に音楽を楽しんでいただけなのに、こうやってお声を掛けていただけるだけでも望外な幸せ。「歌の実践はカラオーケストラのみ」というワタシでも、音楽の喜びをともに分かち合える出会い。

 指揮の坂本さんは大学の先生だそうで、「どこの音大の先生」と思うでしょ?ところが理学部の教授で、専門は粘土鉱物学というおカタいお仕事、音楽は純粋に楽しみでされているそう。(それでも、声楽・指揮法はちゃんと専門の先生に学んでいらっしゃる)歌い手ソロ4人分がプロの方々。

 16名の器楽アンサンブルももちろんアマチュア。大曲でしょ。演奏者を眼前にするナマならともかく、録音(しかもとうぜんこれもプロの技術ではないはず)だし、少々不安を感じながら聴き始めたのが正直なところなんです。〜で、音質的にはやや散漫な印象があるし、冒頭のテンションの高い合唱は緊張からか、アンサンブルの揺れ、リズムのズレ・遅れも見られる・・・・。

 でも、そんなことすぐ忘れてしまうほどの快感。教会大聖堂の適度な残響が美しく、すべてが柔らかく、器楽・合唱・ソロが解け合って気持ちがよい。始まって数分、もう全員の息がピタリと合って技術的な問題はほとんど気にならない。この曲、昔馴染みだけれど、そう熱心に聴いたことはないはずなのに、「あ、この旋律は知っている。つぎはたしかこんなんだったはず」と懐かしい演奏なんです。

 「基本的技術あっての芸術」なのは当たり前。坂本/OPEは、カラヤン/ベルリン・フィルよりは少々技術的に落ちるかも知れないが、楽曲に対する真摯な姿勢では一歩も引かないはず。ところどころの弦のピッチのわるさ、合唱のもたつきを指摘することは簡単でしょう。それでも、ポジティヴ・オルガンやリュート、ガンバの控えめな美しさを忘れることは出来ません。

 この演奏、コルボの「ロ短調ミサ曲」(これ、OPEの皆様には評判悪いらしいが〜細部がガサツ?)を連想させます。つまり、特別によそ行きの音楽ではなく、日常生活としての自然な姿が生かされていて、気持ちがよい。こういった演奏にはいつも思うことなんですが、ぜひ目隠しで聴いていただきたい。

 「いやぁ、じつは先日ドイツの田舎に出張したとき、偶然に教会で演奏会があってね。ヘタクソだけど、さすが本場だよね、もう雰囲気が最高なの。思わず会場で売っていたCDを買って来ちゃった」と、説明すれば80%は騙し通せる自信はある。2時間分、たっぷり楽しめます。ちょっと、はらはら・ドキドキしながら、あっと言う間に終わります。(ラストはさすがに疲れが目立つが)

 このCDとともに、当日のパンフレットも一緒にちょうだいしました。その内容も、音楽に対する真摯な内容に溢れて感動的です。地味で渋い「ルネッサンス・バロック期」の声楽曲を中心に演奏するアマチュア団体の存続には、想像を絶する苦労があることでしょう。ワタシにもなにか出来ることはないか・・・・ぜいぜい拙HPで応援するくらいしかできませんが。(2001年2月4日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi