Janacek グラゴル・ミサ
(ブレティスラフ・バカラ/ブルノ放送交響楽団/1951年)


menbran 233359 Janacek

グラゴル・ミサ

ブレティスラフ・バカラ/ブルノ放送交響楽団
ヨセフ・ヴェセルカ(合唱指揮)/モラヴィア・アカデミー声楽協会/ヴァハ・モラヴィア女性教員合唱団/リブシェ・ドマニーンスカー(s)/マリエ・ユジェノヴァー(a)/ヤロスラフ・ウルリフ(t)/ヤロスラフ・フロマートカ(b)/フランチェック・ミヒャレク(org)

menbran 233359   1951年録音(ある情報では1953年9月20日録音)

 人気作品とも云えず録音はあまり多くないけど、これが一番最初の録音かな。声楽+オルガンといった壮麗な音楽だから、音質条件は整ったほうがよろしいでしょう・・・

 入祭文 Uvod/キリエ Gospodi pomiluj/グローリア Slava/クレド Ve'ruju/サンクトゥス Svet/アニュス・デイ Agnece Bozij/オルガン独奏(後奏曲) Varhany solo/イントラーダ Intradaから成って、教会スラヴ語の典礼文とのこと。例の如し(シンフォニエッタを連想させる)民族的劇的泥臭い旋律に金管大活躍+荘厳かつ情熱的な声楽でしょ?挙句、圧巻のオルガン・ソロ即興っぽい風情にて乱入!ちょいと興奮させる音楽であります。時代を勘案すれば、それなり”聴ける”音質を愉しみました(2015年2月「音楽日誌」より)。

 Leos Janacek: Master of Intonation10枚組ボックスはちょっと値上がりしたけれど、ワタシは幸い円安前1,000円にて入手できました。パブリックドメイン音源中心、少々音質的にはつらいけれど、シンフォニエッタ以外なかなか聴く機会を得ないLeos Janacek(1854-1928)の音楽をそれなり系統的に拝聴できました。民族問題、とくに東欧辺りのことには知識が疎くてWikiに曰く、民族主義の発揚や顕彰が目論まれた特殊な作品であり、性格的にも厳粛というより劇的で情熱的、とのこと。スラヴ人といった概念もわかりにくい感じ。むかしあった(現在は分裂)ユーゴスラヴィアって「南スラヴ」といった意味でしたよね。

 各楽章題名をみると所謂ミサ典礼みたいだけど、出現した音楽はヴィヴィッドな躍動、明るく前向きなもの。死者を悼む、みたいな湿っぽさ皆無、言語は理解できなくても、その熱気はしっかり21世紀に伝わります。ブレティスラフ・バカラ(Br'etislav Bakala1897-1958)は作曲者の弟子なんだそう、ステレオ時代に間に合わなかったのですね。音質は年代を考慮すると出色の水準、ソロ合唱とも声楽のバランスもよろしい。全40分のみの潔い収録、聴き疲れせずしっかり集中できます。やや泥臭く、作品に対する情愛が伝わる演奏です。もしかして上手過ぎ、洗練されたオーケストラには似合わんのかも。声楽陣は圧巻!

 入祭文 Uvodは勇壮な金管にて開始〜シンフォニエッタにクリソツ、呼応するティンパニも勇壮、不安げに静かな弦も絡み合って声楽は登場しません。キリエ Gospodi pomiluj。ほの暗い静かな合唱の入りは、まるで深遠なオペラの開始であります。ソプラノの決然たるソロも緊張感を高めます。グローリア Slavaもソプラノ・ソロ継続、オーケストラの複雑デリケート多彩な動きが効果的。やがて参入する合唱も喜ばしく従来の「ミサ曲」イメージから外れたモダーンな旋律リズム続きました。後半戦、テナーの朗々決然としたソロが登場。

 クレド Ve'rujuは11分を超え、ここが一番長い。合唱は染みるような美しさ、オーケストラの絡みは民族的懐かしくも泥臭い旋律モロ、テナーソロは「スラヴのジークフリート」みたいな勇壮なテイストであります。サンクトゥス(聖なるかな) Svetは、静謐不安な弦に支えられた男女声楽ソロが次々と親密に語り合い、圧巻の合唱参入!例の小刻みな弦の刻み〜冒頭の金管回帰に盛り上がって、ここも名曲やな。

 アニュス・デイ(神の子羊) Agnece Bozijは瞑想的なオーケストラと合唱に男声ソロが貫禄参入〜それを女声そろが受け止めて、いやはやどこも一筋縄ではいかぬ凝った旋律と色彩が続きました。 オルガン独奏(後奏曲 Varhany solo 2:45ほど)が滅茶苦茶カッコよい!イメージとしてはロックバンドのライヴ、馴染みの作品途中いきなり延々ドラム・ソロが乱入するイメージか。その興奮のままラスト、イントラーダ Intradaはオーケストラのみ一気呵成に、畳み込むように、あっという間に終了しました。ちょっと金管が乱れているけど、些細なことでっせ。

 自分の狭い経験では、BrucknerとかOrff辺りを連想しましたね。その辺りの声楽作品に馴染みがあれば、これもたっぷり愉しめます。(朝から三回も繰り返して聴きました)

(2015年9月19日)

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written by wabisuke hayashi