マイラ・ヘスBach
前奏曲とフーガ 嬰ハ長調(平均率クラヴィア曲集第1巻より〜1928年) Scarlatti(1928年)
ソナタ ハ長調 L104 Beethoven バガテル 変ロ長調 作品119-11(1928年) Chopin 夜想曲 ヘ長調 作品15-2(1931年) Brahms (1941年) 間奏曲 FERGUSON ピアノ・ソナタヘ短調(1942年) デイム・マイラ・ヘス(p) HISTORY 20.3173-306 40枚組「The Piano Masters」(5,990円)のウチの一枚 2000年後半、怒濤のように購入した激安歴史的録音BOXもののひとつ。予想通り、半分以上は音も出していない状況で、それでもときどき思い出したように取り出すと必ず感動します。@150というより、「40枚でCD2枚分の価格」というほうが衝撃がある。(その後、いくつかダイソーの100円CDの音源として使われました) マイラ・ヘス(1880〜1965)は、名前ばかりで録音を耳にしたのは初めて。「デイム」というくらいだからイギリスの方で、クリフォード・カーゾンの先生筋にあたるらしい。最近(というかステレオ時代)まで存命だったとは驚きです。やはり女性は長生きが多い。(いまの日本に比べればそうでもないか) かなり多彩な収録で、短い曲ばかりなのでSP録音の復刻なのでしょう。いつものように、あまり音をいじらないのがこのレーベルの特徴で、じゅうぶん鑑賞に耐える音質は想像以上に良好。名曲ばかり、ずらり勢揃い。しかも演奏が文句なく素晴らしい。 Bach はこの人の代名詞みたいなもので、平均率の軽やかで流れの良いこと。録音年代が信じられないほど、肩の力が抜けていて、明快で爽やか、スッキリとしたスタイルに驚かされます。わずか2分のトッカータの喜ばしいこと。 「主よ、人の望みの喜びよ」は、みなこの人の編曲で演奏しているでしょ?そっと控えめに、静かに音が流れ出すと、そこには至福の世界が広がります。なんの虚飾もなく、淡々とした流れの中に立ち上るなんという高貴な気品。 Scarlattiは、無垢な世界を虚飾なく表現するのは難しいんじゃないかな。このウキウキするような歓び、密やかな悲しみははなんでしょう。Beethoven の可憐なる(幼き日を思い起こすような)小曲、Chopin の甘い囁き、こみ上げる涙。 Brahms は、中年以降のむさ苦しい男が似合うと思っていました。ここではなんと奥床しく、そっと演奏してくれていることでしょうか。暗い曇り空の毎日にも、諦念の淑やかさが存在します。カプリッチョ ロ短調は、何もしていないように見えて途方もない悲しみ、思い出も感慨深い。これはほんまに名曲。そして名人のワザ。 Howard Ferguson(1908年〜)は現代英国の作曲家らしい(http://www.ne.jp/asahi/mms-classic/mmwsp03f/ferguson_disk.htm参照のこと)。保守的な作風で、劇的であり、叙情的でもあります。著名な演奏家は、必ず現代の作曲家を養護してきた歴史があります。ワタシも、こんな40枚セットを衝動買いしなければFergusonとは出会っていないでしょう。(2002年6月21日)
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