Haydn 弦楽四重奏曲 作品76-1/2/3
コダーイ弦楽四重奏団
Haydn
弦楽四重奏曲ト長調 作品76-1
弦楽四重奏曲ニ短調 作品76-2「五度」
弦楽四重奏曲ハ長調 作品76-3「皇帝」
コダーイ弦楽四重奏団
NAXOS 8.550314 1989年録音 5枚組 3,290円で購入したウチの一枚
音楽を楽しむこと、それはなんども聴き馴染むことが基本です。良い意味で「慣れ」ですな。「某有名評論家が」〜などと世評云々することも余計なる蘊蓄で、ひたすら自分の好みで楽しんだらよろしい。他人様のご意見は「自分の知らない歓びを教えていただく」ために存在すると思います。「この作品の作曲年代は・・・」という知識も、同世代の影響やら魅力やら「自分の好みを広げる」ために存在するんです。
ワタシは多くの日本人音楽ファンと同じく、レコードで、しかも独墺系作曲家、しかも交響曲を中心に馴染んできた、ということです。ナマ演奏とか、声楽・オペラ・室内楽には馴染む機会が少なかった。作品76-3第2楽章「皇帝賛歌」は中学校の教科書に載っていて、もちろん当時聴いた記憶はあるが、それ以上の存在ではありませんでしたね。残念。作品76はHaydn 65歳円熟の作品群全6曲。このCDは購入して10年以上は経っているはず。もっと真面目に聴けって・・・
肺腑をえぐるようなド迫力大管弦楽団とは、別な世界の魅力も少しずつ理解できるようになってきました。ト長調 作品76-1は平明なる旋律が時に暗転し、ほろり哀しみの影が垣間見えました。「五度」はニ短調という調性が物語るように、劇的な緊張感がスケール大きく展開されます。終楽章はチカラ強く、逆に険しい表情から前向きな明るさへと進みます。「皇帝」は勇壮であり、変化に富んだ表情が微笑みに充ち、刻々と移ろって飽きさせません。
「皇帝賛歌」はゆったり、しっかり、着実な歩みでした。ユーモラスだけれど端正な表情を崩さないメヌエットの魅力。終楽章は細かい音型がチカラ強くぶつかり合う、悲劇と安らぎが交互するような、快活な世界。爆演系の大管弦楽を続けて聴いていると少々げんなりすることもあるが、こちらは一服の清涼剤ですね。(今更)名曲再発見。
ワタシはHaydnの佳き聴き手ではないが、おそらくこども時代に聴いたウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団がイメージされているはず。コダーイ弦楽四重奏団になんの不満もない(表現的にも技量的にも)が、もっとトロトロに甘く、紗が掛かったような(ほんわかとした)音の記憶(あくまで記憶の世界です)がありました。こちら、やや地味で実直型、というか、美音(だけ)を売り物にした弦楽器ではない。溌剌としたリズム感はやはり現代の団体の個性なのでしょう。
ワタシはHaydnも、室内楽も多く聴いていないので、これ以上のコメント不可。作ったところのない、自然体の録音であり、演奏も同一方向でしょうか。相変わらずMozart 、Beethoven に比べて人気は落ちるようですが、せっかくの宝の山、購入済みのCDもまじめに聴かなくては・・・そう決意させる一枚でした。(2004年7月30日)