Haydn 交響曲第94番ト長調「驚愕」/
第100番ト長調「軍隊」/第104番ニ長調「ロンドン」
(Peter Salomon編/クリストファー・ホグウッド)


L'Oiseau-Lyre 443 194-2 Haydn

交響曲第94番ト長調「驚愕」
サイモン・スタンデイジ/モニカ・ハジェット(v)/ヤン・シュラップ(va)/アンソニー・プリース(vc)/スティーヴン・プレストン(fl)(1978年)
交響曲第100番ト長調「軍隊」
交響曲第104番ニ長調「ロンドン」
サイモン・スタンデイジ/ミカエラ・コンベルティ(v)/トレヴァー・ジョーンズ(va)/ジェニファー・ウォード・クラーク(vc)/リサ・ベズノシウク(fl)(1982年) 以上 Peter Salomon編

クリストファー・ホグウッド(fp)

L'Oiseau-Lyre 443 194-2

 Christopher Hogwood(1941ー2014英国)が病で亡くなって既に数年、もうちょっと長生きして活躍して欲しかったな。バロックのみならず、晩年はMartinuとかStravinskyもレパートリーとしておりました。一連のBachVivaldiはもちろんMozartBeethoven交響曲全集を録音して、残念Haydnは途中で挫折。売れなかったんだそう。これは一連の交響曲録音とは別のPeter Salomon(1745-1815独逸→英国)室内楽版。弦楽4部+フルート+通奏低音。最近この版の録音はけっこう見掛けます。サウンドの彩りはフルート、リズムのアクセントはフォルテピアノが担当しております。

 交響曲第94番ト長調「驚愕」原曲は二管編成+ティンパニも入ったもの(クラリネットなし)。第1楽章「Adagio - Vivace assai」は短く優雅な序奏から開始、ここには違和感ありません。主部に入ると小編成、薄い響きに相応しい軽快な躍動が始まりました。管楽器はフルートだけ、所謂室内楽編成だけど充分余裕と大きさを感じさせるのは、手練の古楽器奏者の実力でしょう。もちろん繰り返し有。(8:20)第2楽章「Andante」は「驚愕」のニックネーム由来となったところ、シンプル飾りのないノンビリ旋律がいかにもHaydn、例の一撃はフルート高らかに精一杯でもたいした音量ではない。現代の聴衆ならどんなゲンダイオンガクの大音量でも目覚めることもないでしょうし。フルートの歌が際立つ美しさは名手Stephen Preston(1945ー英国)。(7:15)第3楽章「Menuetto. Allegro molto」ここはヴィヴィッド軽妙なリズムが管弦楽より際立って効果的。(3:45) 第4楽章「Finale. Allegro di molto」軽快な推進力は室内楽編成に相応しく、フルサイズオーケストラには無縁の軽さ、躍動が作品本来の魅力を目覚めさせるもの(3:58)。

 交響曲第100番ト長調「軍隊」。原曲にはいつもの二管編成にクラリネットも入って、第2楽章と終楽章(ラスト)にはトライアングル、シンバル、バスドラムが入るから(ニックネームの由来)ここをどう乗り切るかが室内楽版のポイントでしょう。第1楽章「Adagio-allegro」冒頭一分半ほど弦のみしっとり序奏のあと、フルート華やかに参入して雰囲気はガラリと晴れやかに。この辺り、Haydnの魅力はそのまま室内楽版に引き継がれました。推進力熱気はホグウッドの薫陶でしょう。(7:29)第2楽章「Allegretto」”2つのリラのための協奏曲ト長調」Hob. VIIh-3 をほぼそのまま転用したもの”(Wikiより)ノンビリ典雅な風情は魅惑、あとで原曲と比較しなくっちゃ。でも、トランペット(弦で代用)も軍楽隊の行進もないのはちょいと寂しいかな?それなりの雰囲気出してますけどね。(6:18)第3楽章「Menuet/trio, moderato」を聴くとHaydnのメヌエットの魅力をつくづく感じさせるもの。楽曲検索していたらあるブログに「メヌエットの最高傑作」「メリーゴーランドのよう」とは言い得て妙。愉しげに弾むリズム感躍動。(5:31)第4楽章「Finale, presto」軽やかにスキップするようなウキウキ終楽章の出足。ノリノリのリズム続いて響きはデリケートでした。ティンパニのアクセントや、ラストの太鼓軍団の不在はノーミソ中で補うしかないけれど、フルートの浮き立つ華やかな歌を愉しみましょう。(5:16)

 交響曲第104番ニ長調「ロンドン」。これも原曲クラリネット入り。ラスト名作交響曲のスケールをどう室内楽編成で表現するのか・・・第1楽章「Adagio-allegro」ものものしい序奏はほとんど弦楽のみで語られ、雰囲気は深刻。やがて優雅晴れやかな主部に入って躍動します。サウンドボリュームは控えめでも明晰、スケールも熱気、陰影もたっぷり、不足を感じさせません。(8:17)第2楽章「Andante」は静かに名残惜しい足取り。室内楽編成に違和感はありません。フルートの寂寥感浮き立って最高。(8:06)第3楽章「Menuet/trio, allegro」はユーモラス軽快なメヌエット、やがてBeethoven以降交響曲はスケルツォに取って代わられるけれど、ロココの時代には必須のノンビリ優雅な風情であります。小編成だから実現できた軽さが魅力。(4:42)第4楽章「Finale, spiritoso」持続低音がバグパイプを連想させるところだけど、旋律はクロアチア民謡とか(Wikiによる)快速テンポによる明るくアツい、文句なく足取り軽い疾走でした。(6:40)

(2019年9月15日)

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written by wabisuke hayashi