Chopin 名曲集(アダム・ハラシェヴィチ(p))Chopin
前奏曲 変ニ長調 作品28-15「雨だれ」 アダム・ハラシェヴィチ(p)(1961〜67年録音) PHILIPS録音の駅売海賊盤 TX-013(ANC-89)2枚組440円(1枚目) アダム・ハラシェヴィチ(1932年〜)は、1955年第5回ショパン・コンクールにて優勝。その後の知名度ともかく、Chopin の録音を多く残しているポーランドの名ピアニスト(現在はザルツブルクに居住らしい)です。この一枚は、一時「一家に一枚」的定評ある音源(LP時代?)だったと記憶します。現在では入手難になっていて、BOOK・OFF中古激安コーナーのほうが探しやすいかも。久々の拝聴は、忘れ去られるにはもったいない!できれば全曲聴いてみたい、と思わせる手応えを感じたものです。寄せ集め有名どころを揃えたものだけれど、音質的違和感なし、鮮度充分。もちろん選曲もGood!著名な、誰でも知っている旋律ばかり、おそらくは各々全曲からの抜粋なのでしょう。 「雨だれ」から始まるハラシェヴィチのピアノは、芯があって明晰、暖かいタッチ。けっして流麗でスタイリッシュなものではない、しっかりと細部を描き込んで、粋にカッコ付けたものに非ず。 「黒鍵」は見事に粒の揃ってキラキラ輝く指運を披露するが、しっとりとした情感に溢れます。「別れの曲」落ち着いた味わいは、大仰なるテンポの揺れ、必要以上にサビの強調を行わず、抑制が利いて際立ちます。無機的な強打に至らぬタッチが素晴らしい。 華麗なる大円舞曲 変ホ長調の浮き立つ気持ちを抑え気味の気品とリズム、軍隊ポロネーズのリズムの揺れは祖国への誇りなのでしょう。こころよい”揺れ”がクサくもならず、さらりと流しすぎないバランス感覚有。「革命」ハ短調は鮮やかなテクニックの切れに賞賛を惜しまぬが、徒な劇性の強調はないんです。名残惜しい「別れのワルツ」を経て、ノクターン 変ニ長調のくぐもった左手の音色と右手の主旋律対比の見事さ、そしていつ聴いても泣けるワルツ 嬰ハ短調のさらりとした風情はオトナの抑制なのでしょう。 「木枯らし」も見事な右手高音からの下降旋律が文句なく華やかで、切れ味充分。ドキドキもの。ルービンシュタインには練習曲の録音が少ない(1964年ソヴィエットでのライヴに4曲ほど収録されるのみ?)から、ハラシェヴィチで溜飲を下げましょう。深窓の令嬢がテレビドラマで弾く定番「幻想即興曲」に一点の曖昧さもない一気呵成な勢い、中間部の優しく、懐かしげな回想もお見事。ノクターン 変イ長調は太田胃散の宣伝で有名、ちょっぴりノスタルジック+安寧の旋律を暖かく演奏して下さいました。 このCDも終盤に至りました。子犬のワルツはめまぐるしく、可愛らしく奏され、ラスト「英雄ポロネーズ」にて勇壮に締めくくられます。これもポロネーズのリズムに自然なノリがあって、余計な大柄な風情ではないんです。約1時間弱、おそらくは「名曲集」としては最高の一枚也。それは、オーソドックスかつお国訛りが少々テイストとして加わって、要らぬ個性の表出がないから。作品の味わいを活かしたものだから。 (2010年11月26日)
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