Handel 組曲「王宮の花火の音楽」/「水上の音楽」(全曲)
(ラファエル・クーベリック/ベルリン・フィル)


この写真はネットで拾ったもの Handel

組曲「王宮の花火の音楽」
「水上の音楽」(全曲)

ラファエル・クーベリック/ベルリン・フィルハーモニー/ヴェルナー・マイヤー(cem)

DG録音 1963年 FIC ANC-84 通常のシリーズデザインじゃなくて、外車販売店の景品らしい/中古@250にて入手(写真はUCCG3956)

 駅売海賊盤は存在価値を失っているが、”データで音楽を聴く”時代を迎えたら、ある意味復権しているのかも。つまり、ディジタル・データにしてしまえば(元の)姿は見えないということです。20年ほどお世話になってきて、かなり処分進み、残は120枚程かなぁ。ちゃんと素敵な音楽は聴けるから捨てるわけにもいかず、ワタシの寿命中はいっしょに生きていくことになるのでしょう。正規盤CDでもそう変わりない運命か。

 Bach はすっかり古楽器の時代に至った(バロック時代音楽一般もそう)、との手応えあるんだけれど、Handel はどうなんでしょう。この勇壮華麗なる作品には現代楽器が似合う印象があります。1960年代のBach 録音には違和感を覚えることがあるんだけれど、Handel はそうでもない・・・そうか、Bach だってピアノ演奏はたくさんあるからいっしょかも。馴染んできたのはストコフスキー/RCAヴィクター交響楽団(1961年/CDには花火の効果音が入っていない!)。どなただったか?「サージェント(ロイヤル・フィル)盤が大好き」って、おっしゃってましたっけ。大好きなピエール・ブーレーズで、新旧録音はCDで揃えたが(その素っ気ないサウンド、または音質問題故)処分済。棚中最下段に眠っていたクーベリック盤の存在を忘れておりました。

 ワタシ如きオーディオ門外漢が云々するのもなんだけど、鮮明かつ鮮度たっぷりな音質。しかも英DECCA風華美、人工臭ではない、自然な奥行きを誇ります。ベルリン・フィルは艶やかに洗練され、厚みのある響きに余裕さえ感じられる・・・カラヤン時代ですからね。それでもたった今の耳でも、時代錯誤的感触はないんです。クーベリック当時49歳、壮年の気力に溢れ、表現はストレート系、溌剌として要らぬ飾りがないもの。

 組曲「王宮の花火の音楽」には1749年「初演管楽合奏版」というのがあって、たしかFMで聴いた記憶有(たしかミシェル・ピゲ/エドワード・タールによる/編成は第1オーボエ12、第2オーボエ8、第3オーボエ4、第1ファゴット8、第2ファゴット4、3パートのホルン各3、同じく3パートのトランペット各3、ティンパニ〜凄い!)。ネット検索すると「捨子養育院版」というのが出てくるが、これはなんなのか。当時の楽器は現代ほど壮麗には響かなかったにせよ、屋外のイヴェントにはこんな編成が必要だったのでしょう。

 わずか20分弱、6曲からなる作品は、ひたすら明るく、祝祭の雰囲気溢れて爽快であります。ベルリン・フィルの管楽器の技量前面、華やかに鳴り切って活躍するが、そこは床しいクーベリックのこと、バランス感覚抜群で”うるさい”印象はありません。リズムはきりりとして端正、そしてゴージャス。

 ド・シロウトなのでヘンな例えだけれど、「水上の音楽」はBach の管弦楽組曲によう似ておりますね。それこそ、その辺りの作品は既に古楽器でしか聴く機会は(まず)ない。アーノンクールの1978年録音は衝撃だったが、クーベリックに戻っても世界の違いをそう感じない〜リズムが少々生真面目ながら重くないし、大仰なる節回しは存在しないし、ゆったりとした部分での洗練、(バロックではあり得ぬ)陶酔の表情は得難い魅力でしょう(軽快透明華やかなオーボエは名手ローター・コッホでしょうか)。あちこちで大活躍するホルン重奏の奥深い響きは、まさにベルリン・フィル面目躍如(ザイフェルトは参加しておりますか?)。惚れ惚れするほど。

 あとは同じ印象の繰り返しなので、付け加えることはありません。クーベリックとベルリン・フィルの組み合わせは、機能が勝って暖かい質実さに欠ける、そんな印象を持っておりました。ま、録音にはいろいろと経緯、ご都合があったのだろうが、バイエルン放送交響楽団であったなら〜という叶わぬ思いもちょっぴり有。ここでは理想的な完成度を誇って、感銘ひときわ深く胸に染みました。

(2011年3月11日)

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written by wabisuke hayashi