Grieg
劇付随音楽「十字軍の兵士シグール」作品22より
「ボルィヒルの夢」「力競べ」「忠誠行進曲」
劇付随音楽「ペール・ギュント」第1/2組曲
ルー・テレフセン/ペル・トフテ(朗読)/ノルウェイ国立音楽協会合唱団/指揮ステファン・シェル
歌劇「オラヴ・トリュグヴァソン」より二つの小品 作品50(祈り/寺院の踊り)/メロドラマ「ベルグリオット」作品42
アイナル・ステーン・ノックレベルグ(ノックレベルィ)(p)
NAXOS 8.553397 1994年録音 14枚組5,189円にて購入
2007年4月岡山から尼崎に転居し、狭くなった居住スペースに合わせCDを大量処分しました。たっくさん聴くべきCDは残っているんです。ここ一ヶ月CDは購入していないし、買いたいとも思いません。このCDが相対的にもっとも最近購入したもの。もともと2/14枚先行入手していて、それがとても気に入って全集を購入すべくオークション処分、満を持して購入したボックスだったんです。(ついでと言っちゃなんだけど、バラーシュ・ショコライ(p)の「叙情小曲集」3枚分もこの全集があるからいいや、と後、処分済み/ちゃんと引き受けて下さる目利きの音楽愛好家が存在するんです)ノックレベルグのピアノは神経質に過ぎず、かといって細部配慮に欠けていない、歌心に溢れるもの。技巧は安定しております。これはどの作品でも変わらず、粒揃いの水準です。エエ買い物したな。
歌劇「オラヴ・トリュグヴァソン」「ベルグリオット」(初耳)ともかく、「十字軍の兵士シグール」(管弦楽だと作品56)「ペール・ギュント」は管弦楽で馴染みでしょう。「力競べ」(行進曲)が、前奏曲「王宮にて」として第1曲目に配置されるだけです。(これは別編曲が第3集に配置される)これに限らないが、ピアノ・ソロだと静かで味わい深く、作品の全体構造とか、美しい旋律の神髄がわかりやすくなると思います。第1曲「ボルィヒルの夢」から叫び、つぶやきが入ってけっこう衝撃的。これはノックレベルグの表現力か、参照したヨンダーニ・バット/ロイヤル・フィル(少々音の肌理が粗い)の責任か。これも悪い演奏とは思わないが。
著名なる「ペール・ギュント」それも馴染みの第1/2組曲のピアノ版に、男女二人の朗読+「アラビアの踊り」には合唱も加わりました。これはピアニストの意図だそうで、管弦楽作品もこういった趣向(劇音楽としての再生)の録音はあまりないと思います。(Mendelssohnだったら「真夏の夜の夢」で、ジェフリー・テイト/ロッテルダム・フィルの録音がある)「朝」のみ第4集に収録されていて、これはきっと編曲が微妙に異なるのでしょう。「オーセの死」辺りから男女の会話(英語)が絡んできて、雰囲気タップリです。意味は(不勉強故)理解できないが、もの悲しい感触はちゃんと伝わるもの。ピアノのニュアンスで、ノーミソ中では多彩な音色の変化を増幅させて”通俗名曲”(=死語)はすっかり鮮度回復しております。
「アニトラの踊り」(小学校の音楽の先生は「アニトラ姉さんの踊り」と呼んでいたな)は、それこそ俗っぽい旋律だけれど、ノックレベルグに掛かるとすっかり気品と憂いを含むんです。「山の魔王の宮殿にて」のゆったりとしたテンポ、物々しい雰囲気、徐々にスピード・アップする昂揚も管弦楽では味わえない魅力でした。これに怪しくも切迫した台詞が絡む。
第2組曲では「アラビアの踊り」の合唱が白眉でしょう。こうして聴くと(ワタシお気に入りの)「叙情小曲集」のリズミカルな旋律そのものなんだな。楽しげで、清楚素朴な歌声が響きます。女声合唱(斉唱)かな?眼前には合唱団に伴奏を付ける楽しげなるピアノが浮かびます。「ソルヴェイグの歌」はピアノだけなんです。先日、エリー・アメリンク(p)の純な歌声に痺れた(エド・デ・ワールト/サンフランシスコ交響楽団1982/83年)が、ここは「ピアノ伴奏付き歌曲」として再現していただきたかった。名曲ですね。歌はないけど、人の声を感じさせるような、ほんの少し揺れ動くピアノ。
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歌劇「オラヴ・トリュグヴァソン」からの2曲の合唱作品は、心が洗われるような清潔なる合唱(男女声)作品です。メロドラマ「ベルグリオット」は、ビョルンソンという詩人の作品に付ける作品だそうで18:44の長丁場の朗読が続きます。(管弦楽版もあるらしい)貴族である夫と息子を王に殺された、ベルグリオットの絶望と復讐を表現した作品だそうです。言語の意味は解さないが、朗読の格調高いテンションと劇的なピアノが内容を連想させました。
(2007年5月25日)
●Grieg「ホルベアの時代より」「スロッテル」作品20(ノックレベルグ)