Bach 、Mozart 、Beethoven (グールド)


NOTA BLU   96.5098 3/4 2枚組 $7程(?)で個人輸入/処分済。オリジナル盤を再入手 Bach

ピアノ協奏曲第5番ヘ短調 BWV1056
ゴルシュマン/コロムビア交響楽団(1958年録音)
平均率クラヴィア曲集第2巻より
フーガ ホ長調BWV878
フーガ 嬰ヘ短調BWV883(以上1957年録音)

Mozart

ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K491
ススキンド/CBC交響楽団(1961年録音)

ピアノ・ソナタ ハ長調 K330(1958年録音)

Beethoven

ピアノ協奏曲第3番ハ短調 作品37

バーンスタイン/コロムビア交響楽団(1959年録音)

グールド(p)

NOTA BLU 96.5098 3/4 2枚組 $7程(?)で個人輸入

 資料的価値ほぼ皆無HPだから分類などどうでも良いが、これほんまの「海賊盤」なんでしょうなぁ。グールドは(今まで隠していたが)じつはファンで、LP時代相当に所有しておりました。(社会人になって初めての冬のボーナスで、Bach 全集を買った)あまり好きではないBeethoven のピアノ協奏曲全集だって、グールドのだったらLPで揃えました。今は昔。

 「グールドを廉価盤で揃えるのは難しいでしょ?」なんていうこともなくて、(このような)怪しげ盤、正規の輸入盤(カットアウト盤だが)でかなり手元にあります。正規音源(すべてCBS録音と類推)をわざわざ悪化させて海賊盤を作ってしまうNOTA BLUは、悪魔のレーベルなんです。ここ数年は見かけないなぁ。残念。


 まずMozart のピアノ・ソナタ ハ長調。これ、全集に入っている70年録音とは違って、旧いほうのモノラルでした。テンポはやや遅め〜というか後の録音が早すぎる〜だが、とつとつと、淡々とよけいな色付けをせずに進めていました。これがジンワリと胸に来ますね。感情移入とか、浪漫的なテンポの揺れとは無縁だが、繊細で壊れやすいガラス細工のような輝き。終楽章の喜びの爆発(ノリの良さ!)は素晴らしい。聴き慣れたMozart とは少々異形ながら、個性的な世界に引き込まれます。

 Bach のヘ短調ピアノ協奏曲は、「どこが魅力なの?」と疑問を持たずにはいられない、じつは哲学的な名曲。ゴルシュマンのオケがいかにも伴奏的演奏で、少々雑なんです。正規盤に比べれば、不思議なほど音質が落ちるのも気になる。

 10分弱の作品だが、グールドは大柄な表現で、ひとつひとつの音を〜例のスタッカート奏法で〜ま、バックとはあまり関係なく、進めていきます。第2楽章のラルゴの奥行きある表現(特別なアクションはないのだが)は、これぞマジック、と呼びたい魅力。終楽章もピアノの一音一音に艶(キラキラした輝きではないが)があって、聴き手のカラダを揺らす推進力がありました。

 「平均率」からの2曲は、有名な「ゴールドベルク変奏曲」と同時期の旧録音らしい。ほんの数分の小品だが、宇宙の広がりを感じさせる名曲。グールドの表現は、全曲から一部だけを取り出しても、ちゃんと説得力を持っているから感心するばかり。


 さてMozart のハ短調協奏曲だが、たしかオリジナルではScho"nbergの協奏曲とのカップリングだったはず。グールドは、たしかこの曲以外にMozart の協奏曲は録音していないし、特別な思い入れがあったんでしょう。CBC響はバンクーヴァーの放送オケのはずで、名手ススキンドのバックは細部まで配慮が行き届いて立派。

 ピアノ・ソロが寄せては返す波のように揺れ、歌い、呼吸し、優雅であり、スケールも大きい。感興が溢れでるようであり、繊細な語り口が連続します。けっして熱狂せず、クールであり、例の如しのやや乾いたような音色だが、聴き手を存分に興奮させる魅力を振りまきます。こんな表現のMozart はほかでは聴けない。重苦しい響きではないが、軽々しくはない。

 カデンツァは誰の作ですか?これほど劇的なのはあまり聴いた記憶がありません。ジャズやロック・バンドのライヴで、ギター・ソロが延々とインプロヴィゼイションを繰り広げるのに似ている。

 第2楽章「ラルゲット」には、横流れのリラックスしたリズム感があります。(和音を少しずつズラして独特の味わい有)ここでもススキンドのサポートは文句なし。終楽章の変奏曲はワタシ個人としても、もっとも気に入った音楽のひとつでした。ここでは、ちょうどハ長調ソナタのような淡々とした表現から始まるが、音にリキが入っていて説得力が強い。

 変奏される度に熱を帯び、ピアノのタッチは力強さと明快さの度合いを強めます。Mozart 特有の不健康に崩れゆく変奏と、それが一転輝かしくも明るく復活するところの劇的対比。ノリ。説得力。結論。これはMozart 方面の表現ではない。じゃ、どの方面?


 残るはBeethoven だが、ハ短調協奏曲の冒頭を聴けば、誰でもさきのMozart を連想すること必定。悪魔の海賊盤だが、選曲には配慮があるんですなぁ。我らがバーンスタインがコロムビア響(諸説紛々。東海岸の録音用オケという説、いやNYPの変名だ、とか?)で力強くも、情熱的なバックを張ります。

 冒頭グールドはバーンスタインに煽られたのか、リキみ返って開始。が、即、横流れ奏法にチェンジ。これがBeeやんの厳つさを和らげてくれて、ありがたい。細部の装飾音も美しい、むしろ繊細さとやさしさで聴かせる方向でバックとの違和感があります。リリカルな味わいに、じょじょに感興が乗ってくるところはいつもどおり。

 ラルゴはまるでグールドの落ち着いたソロに誘われるように、バックが切々と歌ってくれます。こんなBeeやん好きですね。ヴァイオリン協奏曲の味わい。終楽章の決然とした主題は、昔から好きなんです。いくらでも厳然と演奏できるし、事実バーンスタインの力みは凄い迫力。でも、グールドのほうは逆に抑制が利いていて、クールな姿勢は崩さない。絶対に強面にならない。やはり、独特のリズム感でじょじょに盛り上げて行くところはいつも通りで、これは特別な演奏なんです。(2001年7月27日)


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written by wabisuke hayashi