Bach ゴールドベルク変奏曲(シフ 1985年ライヴ)


Bach

ゴールドベルク変奏曲 BWV988

アンドラーシュ・シフ(p)

1985年5月30日 ウィーン・コンツェルトハウス・モーツァルト・ホール・ライヴ〜FMエア・チェック

 気を付けていたのに、例年通り2月にひどい風邪(インフルエンザ?)に罹ってしまいました。少々の体調の悪さはガマンして出勤する根性は、日本の正しいサラリーマンである以上人並みに持ってはいるつもりだけれど、発熱で身動きできないのは如何ともしがたい。そして数日寝込んだあと、回復期というのは嬉しいもんでして、鼻も利いてくるし、食欲も出てくる。頭痛が治まって音楽も聴けるようになります。

 で、この間やりかけになっていた、テープからMDへのコピーを再開しました。MDは72分収録まるまる無駄なく使いたいので、余白があると気になるんです。先日も某大曲の2枚目の余白が12分ほど残ってしまって、いろいろ埋め草を探していたら 「Mozart 自動オルガンのためのアンダンテK616」(シフ〜1985年ザルツブルグ・ライヴ)が7分ほどで、ちょうどいいかな、と。

 これ、なんの変哲もないフツウの旋律が、じつは天衣無縫の天才のワザを隠していて、胸に染みる名曲。広がる平安な心。シフの素朴でトツトツとした音色がたまらぬ魅力。ジ〜ンと痺れて、じっとしていたらいつのまにかテープは終わり、反転して「ゴールドベルク変奏曲」のアリアが始まりました。これでもうコンポの前から身動きもできない。

 暖かく、淡々として飾りがなくて、才気走ったり、エキセントリックだったりしない自然さに溢れて、心の奥底のわだかまりがゆっくり解けていくような、ホンワカと幸せな気分なんです。全81分、ずっと癒され続けるようなやさしさ。リキみはどこにも見られなくて、常にメゾ・ピアノで演奏しているかのような静けさが漂います。いつもそっとやさしく指を鍵盤に置いているのが眼前に想像できるほど。

 これこそ気持ちよく眠るための音楽、といった演奏でしょうか。名曲なので、あちこち思いっきり歌って〜こぶしなんかも付けて〜みたくなる部分があるはずだけれど、ほとんど端正な姿勢を崩さずに音楽は進みます。変化のない、ワン・パターン演奏なのか?と訊かれれば「そうではない」と答えることになるでしょう。(無為ではない。自然なワザがある、はず)飽きさせない、テープを途中で止めることなど絶対にできない、と思わせる魅力。

 グールドは繰り返していないが、ワタシは、一般になんでもなるべく繰り返してくれたほうがありがたい。(ウワサによるとSchubert の「グレート」の全部繰り返しは地獄である、とのことだけれど)美しい旋律をなんども聴けるでしょ。この曲なんて極楽。ぬるめの温泉につかっているみたいで、心身共にリラックスしちゃってもうたいへん!息を潜めて、静謐な空間を楽しむような至福の時間(とき)。

 音質はまぁまぁですよ。時々会場ノイズや、マイクセッティングか接続の不備があるみたいだけど、ほとんど柔らかい残響が自然で気持ちヨロシ。(カセットだから45分で反転空白ができてしまうが)たしか、シフは同時期にスタジオ録音していたはずだけれど、評価はいかがなもんだったのでしょう。最近はお目に掛かりません。(2002年3月3日)


 

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written by wabisuke hayashi