Gershwin ピアノ協奏曲ヘ調/Ravel ピアノ協奏曲ト長調
(エレーヌ・グリモー(p)/デイヴィッド・ジンマン/ボルティモア交響楽団)


ERATO WPCS22180 Gershwin

ピアノ協奏曲ヘ調(1925年)

Ravel

ピアノ協奏曲ト長調

エレーヌ・グリモー(p)/デイヴィッド・ジンマン/ボルティモア交響楽団

ERATO WPCS22180 1997年録音

 別嬪ピアニストHelene Grimaud(1969ー仏蘭西)若き日28歳の記録。音質は目も覚めるような水準、両曲もジャズのテイストを感じさせる名曲、ノリノリに若さ溢れる溌剌タッチ、David Zinman(1936ー亜米利加)時代のオーケストラ(1985-1998音楽監督在任)も抜群に上手い。一番人気「ラプソディ・イン・ブルー」の魅惑をそのまま延長したような名曲でしょう。

 Gershwin ピアノ協奏曲ヘ調は管弦楽伴奏も含めすべて作曲者自らのもの。1925年作曲初演、ジャズ、ブルース、クラシックの垣根など意味のない華やかな名曲中の名曲。二管編成+9種ほどの打楽器が入ります。構成は古典的な3楽章、第1楽章「Allegro」ティンパニから物憂い冒頭旋律からやがてチャールストンのリズム躍動、例の甘い旋律が朗々と歌って、Rachmaninovに一脈通じる風情もあります。こちらのほうがずっとノリノリに推進力はあってモダーン、それはグリモーのピアノが疾走する熱気を加速させているのでしょう。自在に表情豊かに変化して若々しい、賑々しい盛り上がりはジンマンのオーケストラの威力も手伝ってゴージャス。(13:48)

 第2楽章「Adagio-Andante con moto」。冒頭トランペット・ソロは遣る瀬ないブルース最高。やがて軽快リズミカルなソロが参入、こんな音楽は鼻歌でも歌うように小粋に演奏してほしいもの。正確な技巧とソロ、管楽器のスウィング感の両立はなかなかの難物でしょう。生真面目お堅く重厚な演奏もオモロいけど、緻密さとデリケートな歌が両立するピアノはセクシーですよ。この楽章は「ポーギーとベス」を連想させる旋律連続。(11:48)

 第3楽章「Allegro ajitato」。風雲急を告げる細かいピアノのパッセージは緊張感に充ちた開始。第1楽章第2楽章の旋律は次々姿を変えて繰り返して変幻自在。要求されるテクニックは高くても、それは晦渋に非ず、親しみやすい明るさに充ちて軽快なるAmerican Music。やがて管楽器とティンパニが華やかに掛け合って、ソロの変拍子に多種多様な打楽器が絡みます。ボルティモア交響楽団のパワフルなサウンドとグリモーの華やかなテクニックと相性最高、おそらくはジンマンの統率の成果なのでしょう。(6:55)いろいろ聴いてきて、この演奏がヴェリ・ベスト。

 Ravel ピアノ協奏曲ト長調もジャズの影響を受けた1931年の作品、こちらのほうが知名度高いけれど、なかなかの前衛的難解作品と思います。「のだめ・カンタービレ」で一躍有名になりました。急ー緩-急の構成、第1楽章「Allegramente(明るく、楽しげに)」軽妙、重いブルース、可憐に華やかな旋律、綯い交ぜになった天才のワザ。きっとリズムのとり方含めて難曲なんやろなぁ、ド・シロウトでも想像つきますよ。色彩豊かであり、若い推進力はGershwin同様、ジンマンのオーケストラは厚みと小粋が同居してお見事。(8:25)

 第2楽章「Adagio assai」は静謐は緩徐楽章。聴手は清涼静謐な旋律サウンドを堪能すればよろしいけれど、3/4拍子?リズムのとり方が難しいらしいですね。Wikiによると「逝ける女王のためのパヴァーヌ」やらSatie、Mozartのクラリネット五重奏イ長調から影響を受けた、とのこと。なるほどそんな諦念の風情充ちてますよ、底知れぬ無表情な哀しみ、幻想、揺れる情感。ここは微細な表情の変化が聴きものでしょう。(9:23)第3楽章「Prest」は賑々しい楽しげな雰囲気に戻って「ペトルーシュカ」とか「パラード」に一脈通じる(Wikより)との指摘に納得できます。ピアノは超絶技巧Toccataの快速パッセージから「ゴジラのテーマ」へ、息もつかせぬ一気呵成なフィナーレを迎えました。管楽器の叫びは動物の声みたい。上手いオーケストラやなぁ。(4:07)

(2022年8月21日)

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written by wabisuke hayashi