Franck,Debussy,Ravel ヴァイオリン・ソナタ
(シュロモ・ミンツ(v)/イェフィム・ブロンフマン(p))


DG UCCG-9343 Franck

ヴァイオリン・ソナタ イ長調

Debussy

ヴァイオリン・ソナタ ト短調

Ravel

ヴァイオリン・ソナタ ト長調

シュロモ・ミンツ(v)/イェフィム・ブロンフマン(p)

DG UCCG-9343 1985年録音

 Shlomo Mintz(1957-以色列)は自分と同い年、いつの間にか還暦過ぎてました。ノーミソの中ではいつまでも若手のイメージ、これは28歳たしかに若手時代の記録。Yefim Bronfman(1958-以色列)も同世代、現在では大家の風格でしょう。室内楽はBachを別格として独墺系は拝聴機会は少なく、仏蘭西や東欧系の作品を好んで聴いております。官能と妖しい風情満載の名曲三曲揃い踏み。たっぷり堪能させていただきました。もう35年も前だけど、既にディジタル録音が定着して現役の音質でしょう。

 ジャック・ティボー(1929年録音)以来名曲としての名声を確立したFranck第1楽章「Allegretto ben moderato」官能極まりない遣る瀬ない旋律、たっぷり甘く豊満なヴァイオリンのイメージはオイストラフ辺りの刷り込みか、こちらミンツの音色は端正雄弁であり、芯はしっかりして甘さ控えめ、むしろ辛口でしょう。(6:14)第2楽章「Allegro」ここは情熱が満ち溢れて、ピアノとともに疾走するところ。テンポは終盤かなり走ってもクールな佇まいを失いません。(7:52)第3楽章「Recitativo-Fantasia (ben moderato) (幻想的な叙唱)」魔法のような転調を繰り返す雄弁な幻想曲。流したり、媚びるような音色は皆無、デリケートな対話に緊張感が続きます。(7:01)第4楽章「Allegretto poco mosso」ほっとするように明るく懐かしいカノンはそっと始まりました。生真面目にフレージングしっかり、曖昧さのないヴァイオリンが詠嘆の旋律を際立たせております。ブロンフマンのピアノも力強い。とても”大きな”演奏でしょう。(6:26)

 Debussyは最後の作品なんだそう。Franckは甘美な旋律に古典的な構成を感じさせるけれど、こちら自在に儚げな旋律が魅了する13分ほどの短い作品。楽器や奏法を作品に合わせて選んでいるのか、端正の中にも色気を感じさせるヴァイオリンであります。気ままに妖しい第1楽章「Allegro vivo」(4:39)、剽軽なユーモラスを感じさせて軽快な第2楽章「Intermede. Fantasque et leger(間奏曲 幻想的かつ軽快に)」(4:03)、第3楽章「Finale. Tres anime(きわめて活発に)」は幻想のように第1楽章主題が回帰して、ヴァイオリニストの技巧が問われる細かい音形が緊張感と喜びを加速させました。(3:52)

 Ravelも最晩年の作品なんだそう。初演はジョルジュ・エネスコ(1927年)こちらもDebussyに負けぬ奔放な旋律がステキです。第1楽章「Allegretto」はかなり前衛的、ピアノ扱いもかなり複雑な絡み合い。Ravelの緻密な作品には知的なヴァイオリンがよく似合って、ていねいな仕上げであります。(8:43)第2楽章「Blues」はリズミカルなピチカートから始まって、そのリズムはそのままピアノに引き継がれるブルース。ド・シロウト(=ワシ)がイメージする”ブルース”がほのかに香ってやがてノリノリ、ヴァイオリンの妖しげな風情は”新しい”音楽の出現を感じさせました。(5:39)第3楽章「Perpeteuum mobile(無窮動)」は題名通り、快速細かい音形連続にヴァイオリンの腕が試されるところ。ここもたっぷり新鮮な音楽であります。シュロモ・ミンツの技巧は余裕です。(3:35)

(2020年3月15日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi