Stravinsky バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)/
バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911年版)
(アレクサンダー・ラハバリ/BRTフィル/グロロー(p))
Stravinsky
バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911年版)
小管弦楽のための組曲第1番/第2番
アレクサンダー・ラハバリ/BRTフィルハーモニー(ブリュッセル)/ロベール・グロロー(p)
NAXOS 8.330263 1990年録音
ネットを検索していたら19年前の自らの記録が出現して(密かに)赤面しました。中古350円にて入手した(らしい)CDは既に処分済、記憶もありません。Alexander Rahbari(1948-伊蘭)はBRTフィル(現ブリュッセル・フィル)の首席を務め(1988ー1996)この時期NAXOS、自らのレーベルであるDiscoverに多く録音を残した・・・そんな情報は以前にも言及しておりました。その昔、硬派廉価盤CD主義者だった頃には散々お世話になって、やがて忘れてしまったということですよ。
記憶はすっかり変容して、「ペトルーシュカ」は3管編成の1947年版とばかり信じてきたきたけれど、NMLには「1911年オリジナル」とちゃんと書いてありました。再聴のポイントはNAXOS初期の音質、そしてBRTフィルのアンサンブル水準の確認、もちろんラハバリによる名曲表現も。それにしても”通俗名曲”(死語)とはなんたる言い草・・・
バレエ組曲「火の鳥」は短い1919年版。二管編成。オリジナル(1910年)がお気に入りだけど、それとは別のエエとこ取り、エッセンスが凝縮された魅力もあります。序奏(2:56)火の鳥の踊り(0:19)火の鳥のヴァリアシオン(1:17)王女たちのロンド(ホロヴォード6:25)魔王カスチェイの凶悪な踊り(4:48)(ここは続けて演奏される版→)子守歌(4:17)終曲(3:33)これがヴィヴィッドに躍動する素晴らしい演奏。オーケストラの華やかな響きも、低音迫力も上々、オーボエが美しいのはDebussy「映像」を聴いた時に気付いておりました。金管の細身な切れ味もなかなかの魅惑、厚ぼったくならぬ仏蘭西系の響きもメルヘンな作品に似合っておりました。けっこう上手いオーケストラですよ。1919年版としては今迄聴いたヴェリ・ベストかも。
「ペトルーシュカ」はオリジナルらしい。これもウキウキするような遊園地の喧騒を感じさせる名曲中の名曲、ヴィヴィッドな勢いがある演奏でした。「火の鳥」ほどの陰影を感じないのは、おそらく録音音質個性の違いでしょう。解像度は充分でも音像やや遠く、低音が弱い?(けど、ワルツが終わって第4部「謝肉祭の市」(夕景)に入る打楽器の一撃は衝撃)。つなぎの小太鼓が弱いように感じるのは、おそらくそれが本来の音量なのでしょう。表現は意外と素直、オーケストラの技量をしっかり感じさせるアンサンブル。これはこれで華やかで立派な演奏と感じました。
謝肉祭の市(7:17)ロシアの踊り(2:40)ペトルーシュカの部屋(4:34)ムーア人の踊り(3:42)ワルツ(3:25)謝肉祭とペトルーシュカの死(1:05)乳母の踊り(2:25)熊を連れた農夫の踊り(1:28)行商人と二人のジプシー娘(1:09)馭者と馬丁たちの踊り(1:54)仮装した人々(1:52)不気味かつ静謐なラスト(格闘-ペトルーシュカの死-警官と人形使い-亡霊)は収録されず、あっけなく終わります。後半に向かうほどアツく走って盛り上がります。
「組曲第1番/第2番」のピアノ連弾曲からの編曲なんだそう。以前にも言及しておりますが、昔のNAXOSは収録にひと工夫あったんです。第1組組曲はAndante(1:19)Napolitana(1:15)Espanola(1:11)Blalaika(1:00)、第2曲はMarche(1:25)Valse(1:52)Polka(0:51)Galop(1:53)。2管編成、無機的クールかつユーモラスな味わい溢れて、こんな作品は大好きででっせ。 (2020年7月3日)
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「通俗名曲」の類だし、指揮者・オーケストラの知名度も弱い。「NAXOS初期のレパートリー埋め」的な録音と思っておりました。1948年イラン生まれのラハバリは、NAXOSにかなりの録音を残した後、Discoverというレーベルに移った(というか自分で創設した。たくさん録音がある)が、ここ数年、新録音を見かけません。(見かけないだけで、録音リリースは続いているのかも)どこかで活躍を続けてくれていることを祈ります。
NAXOSにはBrahms の交響曲が揃っていたけれど、線が細くで不満でした。でもDebussyがとても良かった。繊細で、色彩が豊かで・・・ということで、この録音も「もしかして」と期待した一枚。で、結果、なかなかの水準。「火の鳥」は今まで聴いたウチのベストを争う可能性も有。
まず録音が相当によろしい。最強音で音が濁るのは、おそらくワタシのオーディオ的な限界でしょう。それを除けば、柔らかで適度な残響がじつに柔らかく、分離も鮮明。奥行きも、腹にズシンと響く低音も文句なし。タンバリンなんかの小さな楽器の定位が明快なこと。NAXOS初期の録音なので、かなりデジタル臭いカタさがあります。(特にペトルーシュカ)
「火の鳥」は1919年の演奏会用短縮版だけれど、ぜひ全曲録音して欲しかったところ。オーボエのセクシーな音色を始め、木管の鮮やかさには感心しました。この曲特有のメルヘンな味わいが生きた、どこをとっても美しさ際だつ演奏。テンポは常識的で、エキセントリックなところは見あたらないが、自然な表現が充分心を打ちました。アンサンブルは優秀。
「ペトルーシュカ」も悪い演奏ではないが、全体として、少々「軽さ」が気になります。「ロシアの踊り」は、音の立ち上がりが良すぎて、味わいが薄く、うるさい感じ。続く「ペトルーシュカの部屋」は、逆に打楽器のキレが衝撃的。(この辺りは分離最高の音。でもカタい音質)「ワルツ」は上品すぎて、サーカスの安っぽいジンタではない。
「火の鳥」に比べると、なんとなくモノ足りません。もっと落ち着きが欲しいところ。アンサンブルは上々で、リズム感もあるが、コクが足りない?響きが薄い?これ、もしかしたら楽器編成の縮小が忠実に反映しているのかも知れません。
「通俗名曲」「NAXOS初期のレパートリー埋め」なんて悪口言いましたが、NAXOSは必ず珍しい曲を、紛れ込ませていたものです。「組曲」なんてあまり聴く機会はないでしょ?(ケーゲル/ライプツィヒ放響の録音が存在)短い曲だけれど、ありがたい配慮。第一番が民族的な舞踊、第2番はユーモラスで「行進曲」「ワルツ」「ポルカ」「ギャロップ」と肩の凝らない楽しさ。
ラハバリはBrucknerとか数枚買ったはずなのに、棚から探せません。DISCOVERレーベルのラハバリはもう少し、集中して聴いてみたいもの。
どうでも良いような話しですが、このCD特徴があります。番号は現役でいまでも新品で売っておりますが、「The Golden Classics」というクレジットが付いていて、CD本体のレーベル面がいつもの銀色じゃなくて「黄金色」の下地付き。これ、別枠でなんかセットものでも作ったんでしょうか。(2001年6月23日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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