Stravinsky バレエ音楽「火の鳥」全曲
(コリン・デイヴィス/コンセルトヘボウ管弦楽団)
Stravinsky
バレエ音楽「火の鳥」全曲
コリン・デイヴィス/コンセルトヘボウ管弦楽団
PHILIPS 400 074 2 1978年録音 290円で購入(中古)
西ドイツ製とのこと。CD初期の製造らしく(年代標記が一切ない)、全編でトラックひとつのみ。音が鳴り出したら、とにかく全曲聴き続けよ!ということですね。録音当時、Stravinsky三大バレエの「極めつけ」として、評価の高いものだったと記憶します。話題になっては忘れられていく、という「評論の流行り廃れ」(ま、あてにならん!ということですな)の典型のような一枚でしょうか。世評など気にせず、安かったら買う、虚心になって音楽を聴く、それだけのことです。
まず録音が最高じゃないの。PHILIPS特有の中低音が厚くて、自然な暖かみがある。これが「コンセルトヘボウ」(会場)の響きですか?いろいろな楽器の奥行き(打楽器関係に注目!)とか、距離感とかがよく見えて、しみじみ聴き惚れちゃいました。アンセルメ、小澤(パリ管、ボストン響)、作曲者自身の演奏もワリと音質良好だった記憶はあるが、これほどじゃなかったな。
C.デイヴィスは穏健派でオーソドックスだし、まさにここでもそういうスタイルです。つまり爆演系ではない。真面目に、ひとつひとつの旋律を紡いでいるようであって、必要にして存分に控えめな「タメ」「節回し」「歌」がちゃんとある。コンセルトヘボウといえば、いっけん何もしていないようで、じつは細部の旋律に魂が籠もっていて、(よ〜く聴くと)痺れるように美しい。いつもワタシがワン・パターンに唱える「隠し味・裏地凝り」系演奏の極地なんです。
「痺れるように美しい」といっても、それはずいぶんと地味だと思います。でも、細部を忽せにしない、旋律と旋律の「間」がしっかりしていて、急いたり、作為的な印象がないのも嬉しい。こうしてみるとジュリーニの表現のようだけれど、あれは「どんなフレーズもトコトンていねいに歌いまっせ」ということであって、C.デイヴィスはもっと骨太で、大づかみな流れを大切にした、自然体の演奏なんです。
もともとがメルヘンな曲。豊満で夢見るようなオーケストラの魅力を楽しみましょう。極上のオーケストラは、余裕と伝統(これは誤解かな)を感じさせて、これほどまったりくつろげる演奏も珍しい。聴き疲れしない、やんわりと包み込むような深い響きを堪能しましょう。
ここ最近の「ベスト!」の雑誌特集(こんなのもう止めましょうよ)上位には登場しなくなったけど、ワタシ的にはベスト・ワンかもね。但し、大ファンのブーレーズ盤は新旧とも聴いていないのでコメントはしきれないけど。嗚呼、いかん。また聴き始めたら最後までいってしまう・・・・・・(2003年7月18日)
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