Lalo スペイン交響曲(フーベルマン)
Bruch ヴァイオリン協奏曲第1番(メニューイン)


Lalo

スペイン交響曲 ニ短調 作品21

フーベルマン(v)/セル/ウィーン・フィルハーモニー(1934年)

Bruch

ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26

メニューイン(v)/ロナルド/ロンドン交響楽団(1931年)

History 205697-303-1 10枚組 1,490円で購入したウチの1枚

   温故知新。やたらと旧き良きものをありがたがる性癖はないし、なるべく音質の良いものを、と心がけているつもりです。でもねぇ、歴史的録音って、著作隣接件との関係でやたらと安いCDが出るんですよ。このCDなんか、正価で@150足らず・・・処分だったのかな?かなりな頻度で「!」といった音源に出会うのも驚きの事実か。

 ワタシ、ずっとスペイン交響曲って「ぴんっ!」と来ない作品でした。出会いはエルマン最晩年のヨレヨレ演奏(当然LP)かな?これがようワカランかった。次がハイフェッツだったような・・・これは「ハイフェッツのヴァイオリンである」としか聞こえなかった。CD時代になってリッチ/アンセルメ盤〜ハハ、買ってもう何年になるの?まともに聴いてまへん。(反省)

 で、この超有名歴史的録音でしょ?またぁ、フーベルマン(1882-1947年)?蚊のなくような音質じゃないの?〜なんて、いざ音が流れ出したら驚愕でしたね。明快なる音質、いやそれより演奏が明快なんです。カッチリと引き締まったバックはまさに後年のセルそのものの正攻法。充実感。厚みがあって、暖かい。まったく古くない。この音楽は鮮度瑞々しい。保証します。

 フーベルマンって、もっと古色蒼然たる前近代的な〜ましてや曲が曲でしょ?〜もっとエグい、異形なる演奏かとばかり想像してました。いかにも「スペイン風」とかじゃなくて、もっと上品、きっちり細部まで正確で、のびのびと豊かに歌って、とてもスケールが大きい。表現が洗練されていて、抜くところはちゃんと抜いて、これは清潔かつココロのこもった演奏でした。技巧が技巧として上滑りしない。ま、とにかく上手い。

 すっかりこの作品、そして初耳のフーベルマンの虜になりましたね。ちょっと「ほかにどんな表現があるの?」的確信自信に満ちて、どきどきするような魅力横溢爆発噴出演奏でしたね。ほんまの歴史的演奏は永遠に不滅です・・・(当時の慣習に従って「間奏曲」は省略)。


 さて、メニューイン少年15歳のBruch 。ま、このCD、スペイン交響曲で元取ったから・・・なんて思っていたら、こりゃ、たいへんなる余録でっせ。先日、1957年のBrahms の協奏曲(ケンペ/ベルリン・フィル)を聴いて、ちょっとボウイングの汚さに閉口したが、こちらは、いやはやまったく凄い〜「天才が天才であった頃の記録」(音楽日誌)という表現が相応しい。

 少年の表現の域じゃないですね。堂々として、技術的な問題がないのは当たり前として、爽やかな若さの勢いを感じさせて圧巻。音質上の問題かも知れないが、そりゃ上記大ヴェテラン・フーベルマンと比べたら「ちょっと線が細いかな?」みたいな感想は出ます。でもね、この美しい旋律をまっすぐ精一杯弾いていただいて、この表現になんの不満があろうぞ?

 細部が少々流れるのは、勢いがつきすぎたからでしょう。バックのロナルド/ロンドン響も、彼の勢いに煽られたのかな、燃えるようなサポートぶり。時にじっくりとテンポを落としてシミジミ歌うところは、ソロと息もピタリ。終楽章の晴れやかな表情はノリノリです。1931年という太古録音ではあるが、現代に生き残るべき価値ある録音でした。後年の、ちょっとオツカレ気味メニューインを想像しちゃいけないよ。(2004年3月5日)


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written by wabisuke hayashi