Elgar ヴァイオリン協奏曲ロ短調/序曲「コケイン」
(ドン=スク・カン(v)/エイドリアン・リーパー/ポーランド国立放送交響楽団)
Elgar
ヴァイオリン協奏曲ロ短調
序曲「コケイン」
ドン=スク・カン(v)/エイドリアン・リーパー/ポーランド国立放送交響楽団
NAXOS 8.550489 1991年録音 980円(5枚購入一枚プレゼント、だったと思う)
ドン=スク・カンは韓国の名手であり、欧州はもちろんのこと母国や日本でも活躍されております。NAXOSには多くの録音があり、いずれを聴いても個性的で主張明快な演奏、個性ある音色を誇ってほとんど当たり外れはない〜のに、ネットで探してもバイオグラフィが探せません。このCDは1990年代初頭、発売されて即購入したはず、これ以上の演奏を聴いたことはない・・・のは、あまり数多く種類を聴いていないからか。エイドリアン・リーパーは1953年生まれイギリスの中堅(ヴェテラン?)であって、現在スペイン国立放送交響楽団の芸術監督であります。NAXOS→ARTENOVAに多く録音があり、廉価盤好きのワタシにとって忘れられない指揮者のひとり。
全部で45分を超える大曲。冒頭、愁いに沈むオーケストラはかなりエエ(暗い)感じ雰囲気で鳴っております。録音も自然な奥行きがあって鮮明そのもの。ドン=スク・カンはちょっと硬質で低い音を、かなり演歌風にクサくツブした音色で登場します。表現としては少々泥臭いんだけれど、技巧が洗練されていないワケじゃない。例の如し切ない旋律をしっかり、ていねいに、心を込めて、やや粘着質に歌います。微妙な表情ニュアンス付けは苦く哀しかった人生をモノローグするよう。作曲者自演/メニューインの録音と比較するとタイミングはこちらが短いんだけれど、テンポ速めと感じないのは入念なる描き込みの成果でしょう。
第1楽章後半、速いパッセージが激高するが、さらさらと表層をなでるような安易なスタイルではない。もっと、情感たっぷり。第2楽章もかなり骨太に歌ってますね。”かなり演歌風にクサくツブした音色”と評したが、センスとしては昔風時代遅れではない。静謐と詠嘆が両立した見事な雄弁であります。先入観かも知れないが、東洋的な”揺れ”も感じちゃいます。ここ最近、馬齢を重ねた成果、緩叙楽章が胸に染みる思いで感銘深い。
終楽章、相当なる技巧を要求されるパッセージで開始されるが、さらりと流麗ではなく、しっかりと旋律のアクセントを確認しているような表現(技巧に不足はないですよ)。美音とは言えないが、しっかり纏綿と歌って曖昧さはないんです。しっかり心情を訴えて、熱を帯びるヴァイオリン。伴奏は英国とは無関係のポーランドのオーケストラだけれど、硬質で洗練されない味わいがソロに似合っておりました。音質も悪くない。
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序曲「コケイン」(ロンドンの街にて)は、名曲!Gershwinに「パリのアメリカ人」があるなら、Elgarに「ロンドンのロンドンっ子」有。落ち着いた風情、背筋を伸ばして颯爽と街を闊歩する英国紳士の心情が描かれます。表現は少々ストレートで生真面目過ぎるが、英国紳士の粋な風情とユーモアを感じさせて悪くありません。賑々しく盛り上がって、ちょっとざらりとした響きのポーランドのオーケストラも絶好調でした。
(2010年3月5日)