Elgar 愛の挨拶(ナイジェル・ケネディ(v))


CHANDOS ANNI 0030(30)-6    1984年録音 Elgar

愛の挨拶 作品12 *
愛の言葉 作品13-1
南国にて 作品50 より 月光に
ため息 作品70
2つの小品 作品15 より 夕べの歌、朝の歌
第1ポジションでのとても簡単でメロディアスな練習曲 作品22
ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 作品82

ナイジェル・ケネディ (v)/スティーヴン・イッサーリス(vc)*/ピーター・ペティンガー(p)

CHANDOS ANNI 0030(30)-6 1984年録音

 ナイジェル・ケネディは高名だけれど、聴いたことはなかったです。なんせ【♪ KechiKechi Classics ♪】〜廉価盤一筋、話題の新録音を定価で購入!みたいな風習がなかったし、1990年にはFM放送内容に魅力がなくなって(著作権がうるさくなったのかな?)新しい録音を聴く機会を失いましたし。CHANDOS30枚組が2009年に発売され、限定盤5,250円にて入手、彼とは初対面となりました。ワタシ、大好きなElgarですし。デビュー当時の録音らしい。

 なんと高貴、しっとりとして気品漂う音色、表現であります。英国らしい抑制もある。なんとなく(後の)奇矯なるスタイルばかり印象があるけれど、少なくとも当時28歳、若い頃はこんな端正に、あざといヴィヴラートも控え目なる矜持に溢れていたことに驚かされます。「愛の挨拶」なんて・・・みたいな不遜な考えを一掃させる、泣けるような美しさ。この作品のみ、名手スティーヴン・イッサーリスのチェロが通奏低音風に支えて、作品に広がりと深みを加えておりました。なんという名曲!

 続いて、愛の言葉 /南国にて/ため息(Sospiri)/夕べの歌/朝の歌は管弦楽で馴染みの、懐かしい黄昏が続くんです。甘美な旋律は甘さ控え目に表現され、テクニックはしっかりしているが、技巧を鋭角に表出させない。雄弁に柄を大きく歌わない。そっと囁くような手法でもなく、中庸に、バランス良く、デリケートに鳴り響いて中低音が豊かなんです。前半戦の白眉は「ため息(Sospiri)」の抑制され、心の奥に隠された深い哀しみかな。

 「第1ポジションでのとても簡単でメロディアスな練習曲」とは初耳。これが7分間、まさに題名通り!おそらく技巧的には平易なんだろうが”メロディアス”な短い旋律続きます。ちょっぴり擬バロック風でもあり、端正、そしてたっぷり”懐かしい黄昏”連続いたします。

 ヴァイオリン・ソナタ ホ短調は27分、けっこうな大曲だけれど演奏される機会は少ないんじゃないか。ワタシはけっこう以前から聴いていたし、EMIの30枚組にも含まれていた劇的作品也。前半小品の懐かしい旋律とは一線を画してシリアスな作品であります。第1楽章「アレグロ」は激しく慟哭して、ケネディの表現も抑制一辺倒ではない激情を見せております。第2楽章「ロマンス/アンダンテ」も悲痛に充ちた詠嘆が流れ、静謐な回想を連想させます。ここでもケネディは表情はかなり豊か。

 終楽章「アレグロ」は妖しい浪漫に溢れておりますね(ちょっぴりDebussy風)。小品に於ける平易な旋律とは別世界であって、複雑な表情が次々と移ろいます。旋律は多彩。ケネディの抑制された弱音がとくみ魅力的だと思います。ピーター・ペティンガーとは初耳ピアニストだけれど、ヴァイオリンをしっかり支えて目立たず、盤石のサポートぶり。

 エエ一枚でした。

(2010年7月9日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi