ボートン/Elgarの肖像


NIMBUS  NI1769 Elgar

コケイン(ロンドンの街にて)作品40
エニグマ変奏曲 作品36
フロワッサール 作品19(以上1989年録音)

朝の歌 作品15-2
夢見る子供たち 作品43
愛の挨拶 作品12
ガヴォット(コントラスツ) 作品10-3
ローズマリー
子供部屋組曲
マズルカ 作品10-1
叙情的なセレナード
Carissima
5月の歌
夕べの歌 作品15-1(以上1995年録音)

序奏とアレグロ 作品47
エレジー 作品58
ソスピーリ 作品70
セレナード ホ短調 作品20
夕べの歌/朝の歌 作品15(W.H.リード編)
組曲「スペインの婦人」(以上1983年録音)

「威風堂々」作品39 1〜5
組曲「青春の杖」第2番 作品1b
三つのバヴァリア地方の舞曲 作品27(以上1988年録音)

ボートン/イギリス交響楽団/イギリス・ストリング・オーケストラ

NIMBUS NI1769  4枚組2,690円にて購入

 イギリス音楽はお好きですか。音楽は出会いであって、ワタシは10歳の頃に出会った「グリーンスリーヴスによる幻想曲」(フィードラーの演奏による17cmLP)以来、イギリス音楽には一種の敬意と親しみを感じるようになりました。その期待は、どんなイギリス音楽を聴いても、まず裏切られることはありません。物静かで、激高せず、淡々と昔語りを聴かせられるような、そんな安らぎがあります。日本でも 故 三浦 敦史さん等の努力によってイギリス音楽が広く親しまれるようになったことは、本当に喜ばしい。

 このNIMBUSやNAXOS、ASV等が、イギリス音楽を新しい録音、格安で紹介して下さいます。老舗EMIも、往年の名録音を買いやすい価格で出してくれるようになりました。イギリスにはたくさんのオケがあって、ものすごいヴィルティオーゾばかり、というわけではありませんが、各々個性的で味わいある演奏を聴かせてくれます。おクニものには絶対の自信があるようで、どんなCDを買っても必ず大ハズしすることはありません。

 ボートンとイギリス・ストリング・オーケストラ(なんと訳すべきか?)〜おそらくそれを、もう少し大きな編成にしたのがイギリス交響楽団〜はバーミンガムの団体のようで、1980年頃からFM放送などでその存在は知っておりました。ロス・ポープル率いるロンドン・フェスティヴァル管弦楽団、ヒコックスのシティ・オブ・ロンドン・シンフォニアと並んで、新興の注目すべき存在と思います。

 この4枚組、Elgarの管弦楽曲をかなり網羅してくれて、交響曲と協奏曲を除けば、主たるところほとんど揃います。他にCDは出ていなさそうな珍しい曲も有。もともとボートンはチェリストで、ルドルフ・シュワルツに師事したそう。いかにも、と、納得できる叙情的で、ゆったりとよく歌う演奏。派手なところはないが、地味でちょいと渋い音色が、リキみもなくて、いかにもイギリスしています。残響豊かで、落ち着きのある録音も出色。

 「コケイン」は、もっとハツラツとした演奏が望ましいと思います。じんわりと歌っていて、少々メリハリには欠けますが、いかにも横流れの演奏ぶりが悪くない。「エニグマ」も、ずいぶんとおとなしい(というか、抑えに抑えた)演奏ですが、「ニムロッド」の〜まるで遠浅の凪いだ海岸に、ゆっくりと夕日が落ちていくような〜静かで優しい歌が胸を打ちます。「B.G.N.」におけるチェロは、もう切なくてたまらない。フィナーレもリキみがなくて、万感迫る思いの表現。「フロワッサール」(どういう意味でしょう)は、ちゃんと調べていないので、どんな経緯の曲か知りませんが、劇的高揚の感じられる曲。叙情的で、よく歌ってくれます。

 2枚目は小品ばかりで、ま、「愛の挨拶」は別格として珍しい小品が多い。どれも懐かしい、親しみやすい旋律ばかりで、とくに子供を題材にしたものは心温まる音楽。ガヴォットはバロック音楽を再現したもの。「愛の挨拶」はどんな演奏がお好みですか?ピアノ・ソロ。ヴァイオリン。チェロ。どれも素敵ですが、この管弦楽版の楽しさは筆舌に尽くしがたい美しさ。ボートンのゆったりと優しい語り口も魅力です。(女性を口説くBGMに最適かも)

   夕べの歌/朝の歌 作品15は2種類収録されていて、いずれ泣かせる旋律。ボロディンの夜想曲風(を、優しくしたような)。この一枚は、どれをとっても素朴な「愛」に溢れています。

 3枚目は有名どころが揃っていました。弦楽4重奏と弦楽合奏との「合奏協奏曲」になっている「序奏とアレグロ 作品47」。珍しく劇的な旋律が、繊細に絡み合って最高。かなり奥行きのあるオフ・マイクっぽい響きも、この曲にはピッタリで素朴で静かな味わいはなんともいえない。

 Elgarの作品中、屈指の名旋律を誇る「セレナード ホ短調」。淡々とした、早めのテンポで虚飾のない演奏でしょう。この悲しみは、いくらでも大仰に表現可能なはずですが、あえてサラリと流すことで、むしろ強調されます。弦楽のみに編曲された「夕べの歌/朝の歌」は、これがオリジナルといわれれば納得する、懐かしくも落ち着いた響き。

 「スペインの婦人」は、未完に終わったオペラからの引用でしょうか。Percy.M.Youngによるわずか6分の佳作。静謐です。

 ラスト4枚目は、もっとも有名な「威風堂々」全曲。いかにも愛情に溢れた余裕の演奏ぶり。控えめながら、自信たっぷりで、この響きはイギリス人にしか作れない。素朴な喜びに溢れます。「青春の杖」は初耳でした。もの悲しげな「行進曲」、おとぎ話のような「小さな鐘」、などなどElgar版「くるみ割り人形」のような感じ。楽しい。

 ラスト「三つのバヴァリア地方の舞曲」は、素朴なレントラーであり、最後を飾る「アレグロ・ヴィヴァーチェ」は華やかな舞踏会です。

全4枚、どこをとってもElgarの魅力満載のセット。ドイツ・オーストリア系とは、ひと味違った「紳士淑女の国」の響きです。ボートンは力強さやメリハリには欠けるかも知れないが、イギリス音楽には相性があります。地味だけど、瑞々しくて、やさしくて、押しつけがましくなくて、ホント楽しめます。


<関連盤>
「The Spirit of England」  
ボートン/イギリス交響楽団/イギリス・ストリング・オーケストラ
 NIMBUS NI5210/3(4枚組) *価格忘却。上記と同じくらいのはず。

 「コケイン」と「序奏とアレグロ 作品47」がダブっていました。というか、こちらのほうが先に買ったはず。デーリアス、バターワース、フィンジ、Vaunghan Williams、ブリッジ、ホルスト、ウォーロックが収録されていて、いずれも涙もんのしみじみとした曲、演奏。(ここでも地味目で渋い)Elgar4枚組は2,690円となっているけど、じつは(珍しく)ポイントカードで1,000円分引いてもらったので、少々のダブリはクリアしました。(2000年10月21日更新)


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written by wabisuke hayashi