Dvora'k ピアノ協奏曲ト短調
(ルドルフ・フィルクシュニー(p)/ススキンド/セントルイス交響楽団)


VOXBOX CDX 5015 2枚組1,550円(購入当時これでも激安)

Dvora'k

ピアノ協奏曲ト短調 作品33

ルドルフ・フィルクシュニー(p)

ロマンス ヘ短調 作品11(v)
マズルカ ホ短調 作品49(v)
静かな森 作品68(vc)
ロンド ト短調 作品94(vc)

ルッジェーロ・リッチ(v)/ザーラ・ネルソヴァ(vc)

ウォルター・ススキンド/セントルイス交響楽団  

VOXBOX CDX 5015 2枚組1,550円(購入当時これでも激安)

 Dvora'kの協奏的作品を集めた2枚は、現在BRILLIANTにて入手可能。NMLでも聴けます。ススキンドのセントルイス在任期間は1968〜75年だから1970年前後の録音でしょう。残響豊かで、音質は悪くありません。ワタシはこのCDと20年近くのお付き合いなんじゃないか。音楽の本質と無関係だけれど、旧態としたプラケース分厚い2枚収納は時代を感じさせます。ピアノ協奏曲ト短調は人気も、演奏機会も少なくて、リンク先情報によるとフィルクシュニーは改訂版で演奏しているらしい・・・(ド・シロウトにはようワカラン/オリジナルとやらも聴いたことはないし)つい最近この作品/演奏に目覚めました。20年も経って。

 CDに刻まれたディジタル・データに変化はないから、聴き手の変容なのでしょう。第1楽章「アレグロ」は感傷的、親しみやすくも哀愁、平易な旋律が繰り返され、17:58ほとんどそれで成り立っているからシンプルというか、わかりやすいというか、すぐ耳馴染みますよ。作品そのものはソロがガンガン爆発!盛り上がるようなものじゃないし、フィルクシュニーは瑞々しくリリカルに歌い上げて、駄作!とは呼ばせぬ決意で、ていねいに弾いております。考えてみればススキンドもプラハの生まれであった〜祖国の作品を、慈しむようにしっとり仕上げてオーケストラも極上。

 第2楽章「アンダンテ」がこの作品の白眉でしょう。ピアノはシンプルかつ幻想的であり、平穏静謐なる風情でもあります。ホルンによる牧歌的な開始が印象的であり、繊細な弦が包み込み、ピアノと優しく絡み合います。途中、細かい音型の呼応も充分魅力的かつ劇的な旋律であります。

 終楽章は悲劇的な旋律を、民族的剽軽なリズムに乗せて軽快です。フィルクシュニーに技巧的不満は一切ないが、切れ味とか強靱な打鍵を披瀝するタイプではない。床しいくらい繊細なタッチで抑制され、重厚さを強調しない。ワタシはこの作品にすっかり魅せられたが、世間的に人気が出ない理由を探せば、それは圧巻の激しい爆発が存在しない・・・ということなのでしょうか。ラスト、いや増す悲痛な表情に焦点を合わせる演奏はありうると思います。少々淡々と過ぎる演奏かな。

 Dvora'kは小品に特異な才能を発揮します。ロマンスに於ける切ない哀愁、マズルカの激情(ヴァイオリンは名手ロッジェーロ・リッチ/例の如し縮緬ヴィヴラートが決まっている)。静かな森の安寧、ロンドは悠々と憂鬱な心情を歌って、最終盤はチェロの超絶技巧を披露して下さいました。

(2010年4月3日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi