Dvora'k 交響曲第9番ホ短調 作品95「新世界より」
(C.デイヴィス/コンセルトヘボウ管弦楽団)


Dvora'k

交響曲第9番ホ短調 作品95「新世界より」

C.デイヴィス/コンセルトヘボウ管弦楽団(1977年)

Smetana 

交響詩「モルダウ」

ドラティ/コンセルトヘボウ管弦楽団(1986年)

PHILIPS PHCP-6050  250円(未開封)で購入

 「新世界」は好きなんです。聴き方は様々可能で、アメリカの勢いあるオケは必ず録音するでしょ?もちろん本場チェコ方面でも、当然悪くない。独墺系は少々重いかな?ココロが清冽になるような、希望に溢れた旋律の連続。そんなに沢山CDは持っていないが、コンセルトヘボウの演奏だったら買ってみたい。

 コリン・デイヴィスは1927年生まれと言うから、もう大ヴェテランですよね。穏健派の代表格のようでもあり、有名オケのシェフを歴任し、現在母国イギリス・ロンドン交響楽団の指揮者を勤める巨匠〜なんやら印象は地味だけれど。じつは彼のCDは数枚しか持っていなくて、つまり、ほとんど聴いていないからエラそうなことは言えません。

 結論。コレ不思議な演奏です・・・と、言い切ってしまうと誤解を生むかな?まったく、ワタシ好み方面の素晴らしい演奏、そう言ったほうがヨロしいでしょう。この曲、第1楽章冒頭から、新鮮な空気を深呼吸するような気分になるもんだけれど、それはなくて、ただ、ひたすら奥行きと厚みのある響きが鳴り渡ります。提示部の繰り返しもありがたい。

 「コンセルトヘボウ」って、コンサートホール、という意味でしょ?(違うかな?)会場音というか、残響も含めた厚みある柔らかい音がこのオケの魅力でしょう。まるで渋い焦げ茶色の上質な生地のスーツのような、質感ある味わい。ハイティンクもそうだったが、ここでのC.デイヴィスはほとんど無為無策。いえいえ、これは「自然体」と呼びましょ。特別なテンポの揺れや、あざとい強調など皆無で、音楽があるべき姿で流れます。リキみなど、どこにも存在しない。

 「無為無策」〜これはウソでしょう。アンサンブルは(とことん)整っているが、指揮者の神経質な指示の結果とは思わせない、静謐なるとうとうの流れ。例の如しのワタシのワン・パターン話しの結論はすぐそこ〜極上の実力オケのメンバーが、自発的に細部のこだわり〜まるで着物の裏地にまで配慮されているような〜を感じさせて、その集積がコンセルトヘボウの音となる。

 強引さ、騒々しさ、とは無縁の世界(いや新世界か)。第1楽章、金管の大爆発の奥行きは快楽です。有名なる第2楽章「家路」は、完璧なるアンサンブル〜各ソロの味わい。しみじみとした節回しは一見存在しないが、淡々と自分のパートをこなしながら、じつは隠された名人芸の隠し味として音楽ができあがります。どのフレージングもフツウ〜美しく息の長い旋律の末尾をストンと流してしまう(例えばクリップス、みたいな)〜それとも異なった、上品で澄んだとことん「フツウ」の世界。

 第3楽章のスケルツォ。曲的にうんと爆発したいし、これだけ厚みのあるオケなら存分に鳴らしてみたいでしょ?ベルリン・フィル(カラヤンはもちろん、クーベリックでも)みたいに、だれでも艶やかな音の渦に圧倒されたい欲望があるはず。意識して「抜いた」(手を、じゃないですよ)演奏も悪くないが、これはそれとも違うんです。

 「バランス感覚の美」でしょうか。金持ち喧嘩せず、みたいな雰囲気だってありまっせ。録音のチカラもあるんでしょうね。暖かくて、中低音に艶があって、高音が刺激的にならない。これほど豪華な残響、奥行きと広がり感がたしかな、しかもソフトな音は滅多に経験できない。このオケの魅力は、静謐なる部分の深さと思います。

 終楽章の力感が素晴らしい。それでも強引なる個性は表出しないんです。正しい姿勢で、リキまず真芯に当てたボールが良く飛ぶような理屈か?ムリのない姿勢で投げたボールは、肘を痛めないし、タマは重い。それでも、第1楽章からじょじょに蓄積した熱が存分に放出されます。これは、ナマだったら貴重な経験だろうな。金管の暖かい響きが、ハラに共鳴しました。


 ドラティとの組み合わせは、廉価盤としてややムリヤリなカップリングだけれど、この演奏の方向もそう違いはありません。1988年に亡くなっているから、最晩年の録音となります。録音技術者が異なるのか、上記とは音の雰囲気が変わります。(残響奥行きとも、やや控え目。音像もっとカッチリ)いや、これも名人芸でしょ。

 正直、なんやらいままで聴いたことのない音(例えばホルンの合いの手)もあって、細部まで仕上げは極上。あとは、やはりドラティは濃い隈取りで聴かせる人じゃないから、この名曲の神髄の美をあますところなく表現していただいて、どこに文句があろうか。(いや、ない。2002年11月7日)


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written by wabisuke hayashi