Debussy 弦楽四重奏曲ト短調(1954年)/Ravel 弦楽四重奏曲ヘ長調(1960年)
イタリア弦楽四重奏団
Debussy
弦楽四重奏曲ト短調(1954年)
Ravel
弦楽四重奏曲ヘ長調(1960年)
イタリア弦楽四重奏団
EMI(新星堂) SAN-23(2DJ-3734) 1,000円にて購入
このCDの発売は1990年でして、当時の1,000円というのは(LPの相場を考慮しても)破格なものでした。その妙な興奮が忘れられず、現在でもこの(新星堂1000)シリーズを中古屋で見掛けると思わずサイフのひもが緩む〜これは発売直後に購入したものです。
1945年に結成されたイタリア弦楽四重奏団は1980年初頭にメンバーの高齢により解散。PHILIPSに数々の名盤を残しております。Debussy/Ravel は1965年録音が世評高いもの(未聴)だけれど、この旧録音は貴重な記録となりました(おそらくは現在入手不能)。Debussyはモノラルであって、一番最初の録音か(もうひとつ録音が存在する)と類推します。Ravel には1968年のライヴも有。
ワタシこの辺りの室内楽は、管弦楽よりいっそうお気に入りでして、ほとんどの作品は一発出会いで痺れましたね。正直なところ、どれがどうやら比較するほど聴いていないので、これで充分満足しております。妖しい官能が濃霧のように立ちこめる名曲。(「音楽日誌2006年5月」より)
イタリア弦楽四重奏団のレパートリーは極めて広く、Beethoven 、Haydn、Dvora'kなども歯切れ良く歌い、明るい響きで魅了しました。「イタリアの団体がおフランスもの?」的先入観は必要なし。ま、太古1930年代録音のカルヴェ弦楽四重奏団には、いかにも”それらしい雰囲気”を感じたが、それは曖昧模糊とした音質のなせるワザ(想像と類推の産物?)だったのか。
やや肌理は粗いが、かなり良好なる音質。(前者モノ/後者ステレオに関わらず)「正直なところ、どれがどうやら比較するほど聴いていない」〜その通りでして、ま、たいていどんな演奏で聴いても変わらぬ感銘をいただけるんです。
Debussyは「フリギア旋法だけではなく、様々な教会旋法を使用している」とのサイト情報を得たが、解説は専門に譲るとして、和声学上の解析が難しい旋法だと言われています。そのため「天と地の間に浮かびながら停止する旋法」〜甘美、神聖、恍惚、永遠といったイメージ・・・との(ネット上)コメント発見。なるほどねぇ。ほんま、そんな感じ、そのまんまの作品印象。第2楽章に於けるピツィカートの異様な緊張感、第3楽章「アンダンティーノ」の瞑想は官能の極みに深い睡魔が襲ってくるようでもあります。くぐもったヴィオラの響きが存在を強く主張します。
終楽章は感情が揺れ動くように、不安げだったり、激昂したり、妖しさはいや増すばかり。やがて第1楽章の旋律が(昂揚して)回帰して全曲を閉じました。いやはや!名曲。豊かで歯切れの良い歌。
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Ravel はまるで音盤にいっしょに収録されるべく生まれてきたような、Debussyに負けない名作でしょう。第1楽章は諄々と甘美に懐かしげな旋律が詠嘆のようであり、そして、いつもの彼の作品同様”クール”であります。第2楽章は(やはり)ピツィカートなんですね。どきどきするような複雑なリズムは魅力的であり、不安と完備が陰影のように交差する「スケルツォ」。第3楽章の嘆き(吐息)はゆったりと深く、感傷的。
終楽章のリズムも特異な5/8拍子であり、激しい妖しさ+集中力充満しております。歯切れの良い、明るいアンサンブルの素晴らしい成果であります。
(2007年12月21日)