Mahler 交響曲「大地の歌」(オットー・クレンペラー/
(ニュー)フィルハーモニア管弦楽団/ヴンダーリヒ(t)/ルートヴィヒ(con))


EMI 50999 6 089852 4 /16枚組3,962円 Mahler 交響曲「大地の歌」

オットー・クレンペラー/(ニュー)フィルハーモニア管弦楽団/フリッツ・ヴンダーリヒ(t)/クリスタ・ルートヴィヒ(con)

EMI 50999 6 089852 4 /16枚組3,962円 1964/66年録音

 ・・・ワルターは新旧盤を昔から聴いていたのに、世評高いこの録音を聴いたのは初めて。1951年録音のVOX盤はまったくみごとで、しかも「復活」との2枚組という大お徳用廉価盤。(お勧め)まずEMIでは避けて通れない音質問題では、驚くほど明快で、芯もあるし艶もあるので安心しました。(テンシュテット盤より良いのじゃないか)

 一般に「歌もの」は苦手だけれど、この曲にはまったく抵抗がありません。歌い手の質も自分なりに理解できる。もちろん管弦楽には注文を付けたいところがたくさんあります。まず、クレンペラーの表現が、細部までおそるべきほど明晰であること。オケの響きが明るいこと、重くないこと、クセとかへんに色気付いていなくて、クレンペラーの要求に完璧に従った緻密なアンサンブルに驚かされます。

 テンポはVSOとの録音よりトータルで10分以上長くなっているが、表現が間延びしたり、緊張感が失われることはありません。あくまで細部を彫琢した結果、こういうテンポになったという説得力充分。ワタシはどの楽章も大好きな旋律ばかりながら、第3楽章「青春について」がいかにも東洋風な旋律でお気に入りなんです。ここのテンポがゆるりとしていて、一つひとつの音を確かめるように、悠々と楽しげだと思いませんか?

 第5楽章「春に酔える者」は、バックのオーボエ(ドイツ語がようワカランが、ヤ、ヤ、と歌うところ)が明瞭に聞こえるかを注目します。(ジュリーニが好例)これほど明快に各パートを主張させている演奏は類を見ません。それにしてもヴンダーリヒの心のこもった声が気持ちの良いこと!ちょいとホロリとさせる青春の胸の痛みを感じさせる声。

 ルートヴィヒの知的で広がりのある声質も文句ないでしょう。知情意バランスの取れた、完璧な歌唱。めまいを呼ぶような高揚。(とくに「告別」)また、フルートとの絡みもみごと。30分の長丁場をを一瞬と感じさせる入魂の熱唱。「大地の歌」には歴史的録音(しかも名演)が多いが、歌い手は個性が強すぎたり、やや時代を感じさせる場合もあって難しいんです。だからといって、さっぱりと整っただけの歌で満足できるわけもない。

 これ、管弦楽と歌い手が完璧のバランスで「ベスト・ワン」の評価は、あながち否定できません。なんどでも聴けますよ。2〜3時間くらいすぐ経ってしまう。これから先がワタシの感想だけれど、オケの響きがいかにも若くて熟成が足りません・・・が、この場合、その方が良かったんでしょうか。クレンペラーの主張を真面目に具現化していて、オケのそのものの自主的な、深みと「伝統」(これはクセもの)ある響きではないが、爽やかなんです。そして、なんども言うが明快そのもの。マンドリン(?)がここまではっきり聞こえるのも初体験。

 「大地の歌」は、ウィーン・フィルが良い!ニューヨーク・フィルも良い。終楽章のフルートの深み、ホルンの奥行き、弦の輝くような厚み、全体としての中低音の重心の低さ。それはフィルハーモニア管には不足しております。でも、この演奏を聴いて、それを致命的な弱点に数える人がいるでしょうか。なんと清潔で、気持ちよい演奏でしょう。そして、この曲特有の厭世観もまちがいなく漂う。これはクレンペラーとの相性でしょう。

 嗚呼、こういうCDはレギュラー・プライスで買っても良いのかも知れないなぁ。ま、でもこんな立派で有名な録音はワタシのサイトの守備範囲じゃないし、他の多くの音楽ファンの方々に任せることにしましょう。久々この曲を、そして音楽を堪能した気持ち。

・・・とは2002年3月3日このサイト上のコメントです。

 たしか図書館貸し出しの拝聴であって、やがてBOOK・OFFにて@250入手、更に2010年に至って「EMI16枚組」ボックス再発とともに処分して現在に至ります。HMVのユーザーレビューでは音質云々への言及が多いようだけれど、ワタシの貧弱なるオーディオ・セット+耳ではまったく不満を感じさせない。更に上記8年前のコメントにある”オケの響きがいかにも若くて熟成が足りません/終楽章のフルートの深み、ホルンの奥行き、弦の輝くような厚み、全体としての中低音の重心の低さ。それはフィルハーモニア管には不足しております”といった不遜なる言い切りに(現在なら)賛同能わず。再聴結果はひたすら鮮烈なる感動の嵐。どこにも瑕疵は見あたらない。文句なしヴェリ・ベスト。

 上記にほぼ言い尽くされて、ほぼ感触に変化はないんだけれど、ヴンダーリヒ、ルートヴィヒ二人の歌い手が理想的な声量、瑞々しい歌唱気品に於いて他に類を見ません。ブルーノ・ワルター1952年盤の価値になんの疑念もないが、パツァーク、フェリアの声質はあまりに個性的で好悪を分かつことでしょう(ワタシは大好き/というかあれが刷り込みですから)。声域にムリがあったり、スムースな発声に難が見られることは時としてあります。録音問題も含め、オケとのバランス完璧〜それが好ましい形で按配されて快い世界へ。

 全体にテンポは遅めで、細部丁寧に描き込んで精密であります。オケの響きは明晰そのものであって、クレンペラーは前世紀巨匠世代に間違いないが、表現そのものはモダーンで不自然なるテンポの揺れ、異形なるデフォルメを旨としない。それでいて、悠揚迫らざる巨大な広がりを感じさます。それは濃厚に重すぎず、甘美な泣きを伴わない。明晰、明快。技巧的に完璧。ヴンダーリヒのゆったりとしたテンポに乗って悠々たる余裕も素晴らしいが、終楽章「告別」に於けるオケとルートヴィヒの掛け合いのアツに胸打たれます。

 先の繰り返しになるが、これほど「大地の歌」の細部パートが明晰に聞こえたことは、かつてありません。EMIって時にこんな名録音を残すから油断できぬ。ボックスを購入すると全部聴ききれなくて、結局ムダになる〜といった考え方もあろうが、全16枚この一枚のみでも3,962円充分ペイした感じ。

(2010年7月16日)


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written by wabisuke hayashi