C.P.E.Bach フルート協奏曲ニ短調/チェロ協奏曲イ長調
(ジャン・ピエール・ランパル(fl)/ピエール・ブーレーズ)


VOX STPL 514 C.P.E.Bach

フルート協奏曲ニ短調 Wq.22

ジャン・ピエール・ランパル(fl)

チェロ協奏曲イ長調 Wq.172

ロベール・ベックス(vc)

ピエール・ブーレーズ/管弦楽団/ユゲット・ドレフィス(cem)

VOX STPL 514 ネットより入手音源 1964年?

 ピエール・ブーレーズ追悼(1925−2006)。

 1970年前後の廉価盤LP時代から知られた音源(SevenSeas GT1090)CDでも出ておりました。 これはネットより入手した音源、1964年録音?少々怪しく曇ったステレオ録音(オリジナルを聴いたことはない)。ブーレーズには「水上の音楽」新旧録音が存在するけど、バロック音楽付近の録音は珍しいでしょう。どんな経緯かわからぬけれど、オーケストラはパリ・オペラ座じゃないか との情報有。

 フルート協奏曲ニ短調 Wq.22は、往年の名手ランパル(1922-2000)の豊満な音色が期待通りでしょう。第1楽章「Allegro」はリズミカルな旋律がほの暗く、第2楽章「Un poco andante」も叙情的な風情が浪漫を感じさせるのは、ランパルの表現もあるのでしょう。特筆すべきはブーレーズのオーケストラでして、この時点から各声部の明晰な響き、ソロとのデリケートなバランス感覚がお見事なんです。あまりよろしからぬ音質から、清明で濁りのないクリアなサウンドを実現して、この時代にありがちな大味皆無。

 終楽章「Presto」はいかにも「疾風怒濤(Sturm und Drang)」快速なパッセージ、ランパルの技巧は驚くべき超絶であり、ブーレーズのオーケストラも縦線がピタリと合って緊張感継続、端正なリズムを崩しません。合間にドレフィスの金属的なチェンバロがかすかに響くのもご愛嬌でしょう。

 ロベール・ベックス(Robert Bex/1925-2006)も往年の仏蘭西のチェリスト、ウーブラドゥ辺りとの録音も多く残しているようです。チェロ協奏曲 イ長調 Wq.172はかなり古典的な風情に接近して、第1楽章「Allegro」はヴィッヴィドかつ明るい表情の開始であります。ベックスは室内楽に多く参加していたせいか、とくべつに大柄なソロに非ず(後期バロック前期古典派だからあたりまえ)着実ていねいな仕上げ、ブーレーズのバックも含め、前作品ほどの目覚ましいものではありません。第2楽章「Largo con sordini, mesto」は寂しく、しっとりとした風情にオーケストラも神妙デリケートな味付け、ここではドレフィスの通奏低音もその存在を主張しております。ここでのチェロは抑制を効かせつつ、ずいぶんと浪漫的に歌うもの。

 終楽章「Allegro assai」は晴れやかな躍動に充ちて、これはこれで「疾風怒濤(Sturm und Drang)」なのかな?ブーレーズのアンサンブルは軽快クリアであり、ベックスのソロも華やかな技巧を披瀝しました。カデンッツァもなかなか凝ったものですね。あまり好き嫌い言わず(拝聴機会の少ない大Bach の)息子たちの音楽ももっと聴いてみましょう。

 わずか45分ほどの贅沢収録だけど、LP時代はこんなもんでしょう。自主CDとして余白を埋めたものです。(2016年1月10日)


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written by wabisuke hayashi