F.Couperin クラヴサン名曲集(ロベール・ヴェイロン・ラクロワ(cem))


ERATO  B15D-39056 1,545円にて購入 F.Couperin

クラヴサン名曲集

キタイロンの鐘 /恋の夜うぐいす/テイク・トゥック・ショク/フランス風フォリア(ドミノ)/パッサカーユ/昔の偉大な吟遊詩人たちの年代記/神秘な障壁/善男善女/陰鬱/修道女モニク/戦利品

ロベール・ヴェイロン・ラクロワ(cem)(1966/67年録音 ノイペルト製クラヴサン)

ERATO B15D-39056 2009/10年録音

 1990年代初頭1,545円にて購入した国内盤であり、当時、新しい音楽との出会いに燃えていた若き日の記憶鮮明に蘇ります。仏蘭西ノイペルト社の現代楽器が華やかゴージャスに鳴り響くが、微細なる音色の描き分け、刻々と変化するニュアンスの妙に息を呑むばかり〜すべての旋律は馴染みであって、独墺系バロックとは個性の異なる自由なテイスト堪能可能。ヴェイロン・ラクロワ自身による題名の読み上げも含まれ、往年の巨匠(1922年〜1991年)の声を拝聴できるのも貴重でしょう。 Bach だったら次々と新しい録音が新機軸を作っていくが、仏蘭西バロックだと(いろいろと出ているのだろうが)比較の機会は少なくて、似たような作品ならマルセル・メイエ(p)による1946年録音(凄く快速!別作品に聞こえる)を聴いたくらい・・・って、そりゃ太古録音じゃん。

 音質は良好、モダーン・チェンバロ使用。ヴェイロン・ラクロワの作品ごとに描き分けるニュアンス、音色の変化多彩さ、陰影の深さ、豪華なスケールには及ばぬことに気づきました。(これはこれでけっこう愉しんだけれど)仏蘭西バロックって、馴染みの独逸や伊太利亜ともリズム感が違っていて、優雅でノンビリしていると思います。若い頃、もしかしたら生来のビンボー症のためLP時代より価格の安い輸入盤ばかり入手してきたので、解説は気にしたことはないけれど、さすがにこの辺りの作品だと詳細内容説明はありがたい。日本語としてこなれていない訳文だとしても。肝心の録音情報が抜けているのは情けないけれど。

 「キタイロンの鐘」には牧歌的な風景、可愛らしい鐘の旋律を連想可能。「恋の夜うぐいす」〜って、Rossingnol(Nachtigall)ってどんな鳥なのでしょうか。なにを象徴しているのかな?Stravinskyの作品もありますよね。ゆったりと優しく愛を呟いております。「テイク・トゥック・ショク」(オリーヴ圧搾器)はミニマル風繰り返しが快活でユーモラス。

 「フランス風フォリア」〜(ドミノとは仮装のことらしい)。フォリアって、Corelli辺りで馴染みの、ちょっぴり暗い旋律のシンプルな繰り返しと変奏です。「純潔〜目に見えぬ色のドミノの下の」「情熱〜肉色のドミノの下の」「希望〜緑色のドミノの下の」「羞恥〜バラ色のドミノの下の」「コケットリ〜色とりどりのドミノの下の」「年老いた伊達男たちと色褪せた会計係のご婦人たち〜緋色と彼草色のドミノの下の」「お人好しのかっこうたち〜黄色いドミノの下の」・・・9分ほどの作品だけれど、ウィットの効いた題名(どれも皆そうだけれど)が旋律変化の意味合いを語ります。(実際各題名ごとヴェイロン・ラクロワが読み上げます)

 「パッサカーユ」は深刻で大仰なるスケールを誇り、「昔の偉大な吟遊詩人たちの年代記」は当時の情勢が反映(皮肉?)されているらしいが「お偉方と吟遊詩人組合員」「ヴィエル弾きと乞食」「熊と猿をつれた旅楽師と軽業師と大道芸人」「傷痍軍人または偉大な吟遊詩人組合に属する障碍者」〜これも各題名は演者によって読み上げられ、ある時は暗く、ある時はユーモラスに表現されました。

 「神秘な障壁」〜このCD中もっとも気に入っている作品(わずか2分半)であって、シンプルなアルペジオは変幻自在なる音色の変化、タッチのコントロールによって怪しげなる感銘有。「善男善女}(小屋掛け芝居のひとこま)はほの暗い躍動があり、「陰鬱」は題名通りの暗いテイスト。「修道女モニク」は朗らかで陰りのない明るい日差しを感じさせます。「戦利品」は勇壮で元気よく、ラストを締めくくるに相応しい快活さ有。

 実際の楽譜出版とは異なって、ヴェイロン・ラクロワが自由に配列を考えて一枚に仕上げたものらしい。Bach辺りとは異なる、意外と気軽に愉しめる作風でした。

(2010年12月4日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi