Chopin ピアノ協奏曲第1番ホ短調(ニキタ・マガロフ(p))/
第2番ヘ短調(クララ・ハスキル(p))


PHILIPS  PHCP-9532 Chopin

ピアノ協奏曲第1番ホ短調

ニキタ・マガロフ(p)/ロベルト・ベンツィ/コンセール・ラムルー(1962年)

ピアノ協奏曲第2番ヘ短調

クララ・ハスキル(p)/イーゴリ・マルケヴィッチ/コンセール・ラムルー(1960年)

PHILIPS PHCP-9532

 Nikita Magaloff(1912ー1992露西亜→仏蘭西)、Clara Haskil(1895ー1960羅馬尼亜)いずれも昔馴染みのピアニスト、Roberto Benzi(1937-仏蘭西)はご存命のようだけど最近噂を聞かぬし、Igor Markevitch(1912ー1983烏克蘭)も生誕107年・・・ここ最近開き直って、後ろ向き思い出ばかり棚中在庫CDを漁っております。これは文句なし名曲でっせ。

 ピアノ協奏曲第1番ホ短調第1楽章「Allegro maestoso」は冒頭、賑々しい管弦楽が延々と続いてソロが登場するまで3:33。たっぷり瑞々しく、しっとり哀しく歌うピアノは魅惑、線は神経質に細過ぎず、旋律の揺れ・歌は力みもなく余裕の華やかさ、貫禄であります。評判のよろしくないらしい管弦楽(種々版があるとのこと)は変幻自在なソロに比べて、伴奏はやや型通りといった印象はありました。オーケストラは充実した響きに熱気を以てやや走り気味。指揮者は当時、若き天才と呼ばれた25歳でっせ。(18:45)

 華麗なる加齢を重ねると緩徐楽章への嗜好が強まる・・・第2楽章「Romanze, Larghetto」。その美しい旋律、絶品。前編そうなんだけど、どの旋律にも民族のリズムを感じます。弱音器付き弦にて静謐な開始、デリケートなピアノが語りだしました。遠く管楽器が静かに木霊します。切々と高まる情感、夢見るように甘い旋律に、マガロフは自信と力感に溢れた語り口、表情はたっぷり豊か。(9:59)

 第3楽章「Rondo, Vivace」は、クラコーヴィアク(とか云うらしい)突っかかったような個性的民族的リズムが躍動します。きらきら細かい音形が流れるアルペジオはいかにも難物、流麗なテクニックのために音楽があるのではなく、美しい旋律表現のために必須の技巧であります。テンポは頻繁に揺れて、旋律の陰影を際立たせても、それは作曲者の指示に非ず、ピアニストの個性なんだそう。マガロフ当時50歳、知情意体力整って充実した年代でしょう、指が走って空虚さなど微塵も存在しない。ラスト、コーダの難所部分も余裕でした。(10:07)ちょいと忘れ去られた音源だけど、これはヴェリ・ベストのひとつ。音質もよろしい

 ピアノ協奏曲第2番ヘ短調のほうは現在でも多くファンを抱えるハスキル逝去の年の録音。もったいないなぁ、現代の医療技術だったらもっと長く活躍できたのかも。マルケヴィッチとの協奏曲録音はいくつか、どれも伴奏の”力み”が少々気になりました。第1楽章「Maestoso」は劇的なピアノ・ソロ登場にタッチもしっかりとして技術の陰りなし、マガロフの明晰な余裕に対してこちら、セクシーに表情豊か、溜息のような呼吸と疾走を感じさせるもの。(13:47)

 第2楽章「Larghetto」。ここの甘やかな旋律、流麗な表現は絶品!所謂力の弱い女性のタッチ(先入観)に非ず、主張もはっきりしたもの。マガロフのオーソドックスに対して、彼女の個性表情を濃く感じさせるもの。(8:50)そして水がしたたるように(ちょいとムリムリな転調重ねて)

 第3楽章「Allegro vivace」へ。哀愁のマズルカ主題最高。ハスキルのリズムは強靭、表情は劇的であり変幻自在。ラストのコーダ転調は作品としてやはりムリムリに感じます。主眼はChopinの甘やかな旋律リズムを管弦楽に乗せることだから、これでよろしいのでしょう。(8:44) 音質はまずまず、記憶よりずっと良好。LP時代はマルケヴィッチのオーケストラが乱暴に感じたものだけど、現在の耳にはさほど気になりませんでした。この演奏も絶品。

(2019年9月1日)

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written by wabisuke hayashi