Chopin 作品集(ツィマーマン/ケドラ/ポゴレリチ)


VIVACE  203 17981
Chopin

ピアノ協奏曲第1番ホ短調 作品11

イェジー・マクシミウク/ポーランド交響楽団(表記そのまま。放送交響楽団のことでしょう、きっと)/クリスティアン・ツィマーマン(p)(1975年)

クラコーヴィアク(演奏会用大ロンド) 作品14

ヴィトルド・ロヴィツキ/ワルシャワ・フィルハーモニー/ウラディスラフ・ケドラ(p)

夜想曲 変ホ長調 作品 55-2
バラード ヘ長調 作品38
練習曲ヘ長調 作品10-8
練習曲 嬰ト短調 作品25-6
練習曲 変イ長調 作品10-10
ポロネーズ 嬰ヘ短調 作品44
前奏曲 変ロ長調  作品28-21
前奏曲 ト短調 作品28-22
前奏曲 ヘ長調  作品28-23
前奏曲 ニ短調  作品28-24
前奏曲 嬰ハ短調 作品45
マズルカ イ短調 作品59-1
マズルカ 変イ長調 作品59-2
マズルカ 嬰ヘ短調 作品59-3
スケルツォ 嬰ハ短調 作品39

ポゴレリチ(p) (1980年10月31日ワルシャワ・フィルハーモニック・ホールにてライブ録音との情報有。ポーランド・ムザが所有しているショパンコンクールの予選の演奏と同一1980年10月13日との情報も)

VIVACE 203 17981(2枚組) Lisenced from PWM/Ars Polona  2枚組$3.98(個人輸入)。

 Chopin について、あれこれ語るほど聴き込んではおりません。せめて音楽を愛する者として、真面目に集中して聴いて(湯水の如く)購入したCD(音源)をムダにしない・・・その決意で再聴させていただきました。ポゴレリチはじつはワタシと同い年齢(どし)であった、という事実はわりと最近知りました・・・が、他、男性であること以外なんの共通点もありません。(現状頭髪残数問題ではワタシが圧倒的に凌駕している/コンクール当時、ワタシは小型トラックで現場配送をしていた/今は昔)

 かなり以前の自らのコメント↓では

ポゴレリチの演奏はわざと、暖かさとか、美しい音色を拒否したようなピアノで、少なくともこの時期は、評価がむずかしい演奏と思います。なんとなくざわついているような、落ちつかない雰囲気。

 抑えたところの弱音の美しさは、神秘。強い音のところは音が濁る。よく計算され、不安定なところはありません。個性的であって、完成もされた演奏。

とのことだったが・・・流石に数年を経た現在では、少々イメージが変わりました。だいたい、ワタシのChopin 体験(CDにて)は、ほとんどルービンシュタイン/マガロフの印象しかないじゃないか、なにエラそうなこと言ってるんだよ。アシュケナージでさえまともに聴いたことがない。それに音質問題もある(低音に芯がやや足りない)のか。おそらくは演奏順ではない、作品連関配慮と想像されます。拍手収録されず。

 「夜想曲」は甘美な旋律と神経質なタッチであって、ゆらゆらと不安な感じ。「バラード」はかなり遅いテンポで、自然な流れに欠け、不安げなる怪しさ有。「練習曲」(3曲)は逆にやや速めであって、勢いを重視した演奏でしょうか。技巧的に細部が甘い印象はありません。「ポロネーズ」は、例のつっかったようなリズムを強調しながら、最後まで美しさを堪能できない。抜いた部分での優しさを感じさせない。(テンポ印象はワタシの狭い経験範囲なので、一般的でない可能性があります)

 「前奏曲」(4曲)は、劇的で短いト短調を別としてテンポは入念に慎重。とくにヘ長調〜ニ短調は決して流さない、しっかり足取りを確かめるようであって、ラストのミスタッチ3連発も衝撃的です。嬰ハ短調は朗々と歌って、ここでのテンポは適性でした。「三つのマズルカ」作品59は、繊細なリズムの揺れが快いですね。嬰ヘ短調はリズムを強調し、彫りの深い表現はやや恣意的であります。

 ラスト、スケルツォは軽量というかさっぱり目というか、ワザとタメを作らなかったのか。以上、エエ加減なるコメント付けたが、23歳の若者のデビューでしょ?予選で落ちてしまって少々話題先行になったけれど、いずれ後年に至って息の長いピアニストとして育って下さいました。”Chopin を聴く”点に於いて、ワタシはお勉強が足りないんです。大切に聴きましょう。

   協奏曲のほうは少々聴きすぎ、食傷気味であったが、ナマ体験(第2番だけれど)で、すっかり考えを改めました。ツィマーマンはポゴレリチ以上に聴いていなくて、正直なところこの録音以外未聴。後、複数回の協奏曲録音が存在する(しかも大評判)ことは知っているが、虚心にこれを聴くしかない。(激安中古CDと)出会いがなかったのはほんの偶然でしょう。

 この演奏はまったく凄い。艶やかできらきら輝くような、希望に充ち溢れた若者の息吹が爽やか。タッチが明快で、技術的な曖昧さ皆無。録音はポゴレリチよりずっと優れていて、バックのポーランド(放送)交響楽団も快調です。(伴奏冒頭のカットなし)第2楽章「ロマンツァ」は胸が痛むほど繊細デリケートなる憧憬を感じさせて、この瑞々しさは稀有なる体験と再確認いたしました。泣けるほど、美しい。

 終楽章は、マクシミウクのオケが決然とリズムのキレが良く、ツインマーマンは優雅に揺れるような華やかさを以て微笑んでおりました。刻々とテンポの変化は、心境の変化を微妙に表現(時に床しい躊躇いさえ有!)して、聴き手はどきどきさせられるばかり。18歳でっせ。ほぼワタシと同世代だけれど、ワタシは大学で連日バカやって酒ばかり飲んでおりました。(一気に太った)閑話休題(それはさておき)これはたしかに天才の記録であって、テクニックのキレが音楽の表層を安易に流すこともない。宝石が大河となって流れるような・・・感極まった聴衆が音楽が止むのを待ちきれずに歓声を上げております。

   ウラディスラフ・ケドラは、地元ポーランドのピアニストであって、1949年第4回コンクール第5位に入賞しております。(第1位はハリーナ・チェルニー=ステファンスカ/ベラ・ダヴィドヴィッチ)ここでの収録の意味は不明だけれど、珍しい録音だろうと思います。ヴェテランなのでしょう。ややオン・マイクでデリカシーに欠ける音質ながら、名指揮者ロヴィツキの味わいあるバックに乗って、しっかりとした打鍵を披露しております。器用ではないが、地に足のついた味わい有。

(2007年1月12日)


 レーベルも聞いたことがないし、貧しい英語力で解説を読んでもポゴレリチの話ばかりで、この録音の出どころはわかりません。ポゴレリチのほうは、レーザーライトから出ているChopin ・コンクールの録音とほとんど同じ曲なので、1980年の録音でしょうか。

 協奏曲のほうもコンクールの時のライヴ?(とすれば1975年。でもオケの表記が変だ→のち、確認。1975年10月の優勝時のライヴとのこと)ケドラというピアニストは知りませんが、ロヴィツキが元気な頃の録音だからもう少し前の録音でしょうか。拍手は入っていません。

 Chopin の協奏曲はわりとお気に入りの曲で、たいていの演奏は楽しく聴いてしまいます。その後ツィマーマンはなんどかこの曲を録音していますが、ここでもすこぶる瑞々しくて新鮮な演奏です。 ・・・・・・と書いてしまうと、だいたいコンクールに優勝するような演奏は「瑞々しくて新鮮」に決まっているんですよね。でもその水準たるや、並みの賞賛では追いつかない。

 まず、音の状態がたいへん良いのが嬉しい。冒頭のマクシミウクのオケ(放送響のこと?)が、ホールの理想的な残響もあって美しい。なにかと評価の厳しいChopin のオーケストレーションですが、ピアノを充分生かしていて悪くない。

 ツィマーマンは、いまや揺るぎない評価を得たスターですが、ワタシは初耳。こんな若いときから驚くほど完成度の高い演奏に驚くばかり。ゆったりとしたテンポで、一つひとつの音を大切にした輝くような硬質の音色。スケールが大きく、まるでヴェテランのような落ち着き払った風格さえ感じます。

 若々しい爽やかにも欠けていません。きらびやかな音色のピアニストはほかにもいるでしょうが、上品で洗練された味わいはなんとも云えません。第2楽章から第3楽章の経過部に、ピアノがハラリハラリと移調しますよね。「安易な手法」と云われていますが、ディズニーのアニメに出てくる妖精が、空中を舞っているような美しさですね。終楽章も、遅いテンポで舞曲を意識したリズムの切れ味。途中でガクッとテンポを落として、タメを作るところなんて最高。

 例えばアルゲリッチのような、興奮を伴う異様な高揚(それもGood!)ではありませんが、それでもライヴ特有の感興の高まりは充分。全体に抑えたテンポであるため、揺れるテンポの効果は劇的です。拍手も盛大。

 ケドラ(と、読むのでしょうか。この人は知りません)の演奏はもうすこし濃いような、よく旋律を歌わせた演奏。でも、ツィマーマンのあとに聴いてしまうと、技巧の洗練さにおいて劣ります。

 ポゴレリチの演奏はわざと、暖かさとか、美しい音色を拒否したようなピアノで、少なくともこの時期は、評価がむずかしい演奏と思います。なんとなくざわついているような、落ちつかない雰囲気。

 抑えたところの弱音の美しさは、神秘。強い音のところは音が濁る。よく計算され、不安定なところはありません。個性的であって、完成もされた演奏。ワタシのような頭の固い人間には、この演奏を楽しめるようになるのに、もう少し時間が必要かもしれません。

 Chopin の楽しみ方は、ある意味難しい。ルービンシュタインやコルトーの演奏が、なぜ、これほど胸を打つのかの説明ができません。(1998年)


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written by wabisuke hayashi