チェロ名曲集(ガスパール・カサド)


VOX(VOX LEGENDS)  CDX2 5502 1950年代の録音? 2枚組1,850円で購入 Schubert

チェロ協奏曲イ短調「アルペジョーネ」(ガスパール・カサド編)

Schumann

チェロ協奏曲イ短調 作品129

ヨネル・ペルレア/バンベルク交響楽団

Tchaikovsky

ロココの主題による変奏曲 作品33

Dvora'k

チェロ協奏曲ロ短調 作品104
チェロと管弦楽のためのロンド ト短調 作品94
チェロと管弦楽のための「森の静けさ」作品68

Respighi

チェロと管弦楽のためのアダージョと変奏

ヨネル・ペルレア/ウィーン・プロ・ムジカ管弦楽団

ガスパール・カサド(vc)

VOX(VOX LEGENDS) CDX2 5502 1950年代の録音? 2枚組1,850円で購入

 ガスパール・カサドはカザルスの弟子筋にあたる人、1966年に亡くなっています。メジャー・レーベルに録音が少なく、地味な存在でした。バッハの無伴奏チェロ組曲全曲(VOX)、メニューインなどとモーツァルトのピアノ・トリオ ホ長調K542を演奏したCD(EMI)がありました。たしか奥さんは日本人だったはず。

 本屋さんで「クラシック・コレクション」というCDが出ているのをご存じでしょう。LP時代に「ファブリ名曲シリーズ」という似たような企画物があって、後に中古レコード屋で何枚か格安(250円くらい)で手に入れました。25cmLPが付いていて、いま考えると主にVOXの音源も使っていたと思うのです。その中の1枚にガスパール・カサドのドヴォ・コンがあり、気に入った演奏でした。

 音質では苦労させられることの多いVOX、ここではモノラルながらまぁまぁ聴きやすい音質。バックはペルレア(ルーマニア生まれの主にオペラ畑で活躍した人。1970年没)が一手に引き受けています。ウィーン・プロ・ムジカ管は、おそらくウィーン響のことでしょう。LP3枚分の音源をCD2枚に収録したお徳用盤。

 珍しい「アルペジョーネ」の協奏曲版。ガスパール・カサドの朗々とした、スケールの大きなソロが堪能できます。原曲に比べて印象が一変しており、親密なモノローグから、もっとロマンティックで多彩な曲へと変貌。カデンツァはそうとうの技巧。ちょうど、「展覧会の絵」のラヴェル編のような感じを想像していただけると良いでしょう。まったく別の曲になっています。
 「アルペジョーネの主題による協奏曲」でしょうか。

 シューマンのチェロ協奏曲は、自由でラプソディックな旋律が魅力的な名曲。ガスパール・カサドはたしかな足取りで、深い音色を響かせていますが、やや生真面目で自由さが足りないかも。バンベルク響のバックは、2曲とも録音のせいで濁りがち。

 チャイコの作品は、フィッツェンハーゲン版でしょう。ドヴォルザークとのカップリングに、よく使われる曲ですが、リリカルで淡々とした味わいはチェロ好きにはたまらない。細部まで配慮の行き届いた、ていねいな歌。

 ドヴォルザークは、ソリストのスケール、木管が活躍する(フルート、オーボエはとくに)バックともども充実した、熱い演奏。ガスパール・カサドのチェロは、暖かい音色で端正。この曲はロストロ/カラヤン(1968年録音)のギラギラするような、情熱溢れる演奏以外ない、と思っていましたが、再聴してみて「こりゃ、負けてないな」と再評価した次第。

 テクニックが完璧なのは前提問題で、音色に色気があるのは互角。旋律の歌わせ方が違うのは、民族性でしょうか。ロストロが、思いっきり遠く、長く、深呼吸のように旋律を(クドいくらい)歌わせるのに対して、ガスパール・カサドはもっと上品で、しみじみとした、やや控えめながら味わいある節回し。終楽章における、節度ある細かいニュアンスの妙。テンポもやや遅め。

 ベルリン・フィルはドキドキするほど艶っぽい音色ですが、ペルレアのオーケストラは、しっとりとソロによく馴染む。少々地味だけど充分美しい。(ネーム・ヴァリューで先入観を持っちゃいけない。これだけのバックができるひとは、なかなかいないはず)

 「ロンド」「森の静けさ」は、そっと囁くような繊細さ。レスピーギは、懐かしい旋律が、豊かなチェロの音色に乗って響きわたります。

 2枚目はモノラル(?広がりは感じる)録音ながら、適度な残響と奥行きもあってまずまずの音質でしょう。


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written by wabisuke hayashi