Bruckner テ・デウム/ミサ曲第1番ニ短調
(マシュー・ベスト/コリドン・シンガーズ/オーケストラ)


Helios CDH55356 Bruckner 

テ・デウム ハ長調
ミサ曲第1番ニ短調

マシュー・ベスト/コリドン・シンガーズ/オーケストラ/ジョーン・ロジャース(s)/キャサリン・ウィン=ロジャース(ms)/キース・ルイス(t)/アラステア・マイルズ(b)/ジェイムズ・オドンネル(or)

Helios CDH55356 1993年

 神々しいものには畏敬の念はたっぷり抱いてもこちら無神論者、テ・デウムとは“Te deum laudamus”(われら神であるあなたを讃えん)という意味なんだそう。聖書に対する基礎知識がないものだから、仮に言語を理解しても意味不明、純粋に音楽として、敬虔なる風情を堪能して、この作品は幾度聴いてお気に入りに至っております。

 Matthew Best(1957-英国)は主に合唱畑で活躍されていて、自身でCorydon Singers(1973-高校生時代?)を設立、このオケもその流れなんでしょう。HyperionにBruckner声楽作品CD3枚分録音して、それは日本ではほとんど話題になっておりませんでした。そもそも日本じゃ人気薄い作品?交響曲に比べて。テ・デウム ハ長調には交響曲第7番ホ長調 第3楽章「Adagio」(Wagenrへの葬送音楽)に酷似した美しい部分をラストに配置して、感極まる名曲でしょう。作曲時期もこの辺り(1883-4年)とのこと。CD収録では作曲者の言葉により、未完に終わった交響曲第9番ニ短調に続けて収録されてるものもありました。

 わずか24分の短めの作品、2管編成、混声合唱+男女ソロ4人+オルガン。第1曲「神なる御身を我らはたたえ」(Te Deum laudamus/6:33)は力強い弦のアルペジオに乗って、揺らぐごとのない誠実な確信に充ちて、金管と合唱は息を合わせて力強く、時に優しく歌います。ティンパニを伴う堂々たる歩みは、馴染みの交響曲と印象まったく変わらない。第2曲「御身に願いまつります」(Te ergo quaesumus/2:57)はテナーの甘く切ない祈りから始まる、静かなところ。第3曲(Aetrna Fac/1:35)は一転、最初の劇的な爆発となります。短いけれど短調の劇性に溢れておりました。

 第4曲「御身の民を救いたまえ」(Salvum fac populum tuum/6:55)は第2曲の静かな風情が戻って、テナーが切々と歌って女声合唱やヴァイオリン・ソロも優しく呼応するところ。やがて合唱とオケが大きく第1曲に回帰してオルガンの効果も大きいもの。終曲(in Te,Domine/5:29)声楽ソロ4人による決然とした重唱がフィナーレに迫っていることを予感させ、力強い合唱の呼応(常に金管と歩みを同期させている)が巨大なるフーガに成長します。そして馴染みの交響曲第7番第2楽章「Adaogio」と同じ旋律和声登場、初めてこの作品を聴いた時には感極まりました。

 マシュー・ベストは声楽畑の人、この辺り力強く表現しても基本さっぱりとして、交響曲風に詠嘆を強調しないものでした。オケはおそらくは声楽伴奏用の都度集合臨時オケ?技量への疑念は一掃される立派なもの。

 ミサ曲第1番ニ短調の初演は1864年、前曲の20年前とのこと。本格的な交響曲作曲の前、珍しく高い評価を得たそうです。Kyrie(7:02)-Gloria(6:06)-Cred(13:03)-Sanctus(1:50)-Bnrdictus(7:18)-Agnuis Dei(8:42)、後年の個性がはっきり刻印されたものとは風情が異なって保守的、それでもKyrieには先の「Adagio」がちょっぴり木霊するし、Gloriaはグレゴリオ聖歌を思わせるテナー・ソロからやがて後年の彼らしいリズムが顔を見せておりました。

 声楽の扱いは精緻なもの、先にも触れたようにオケの技量になんも問題もありません。合唱を伴う作品の録音は難物、クリアな音質になんの不満もありません。

(2020年2月9日)

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written by wabisuke hayashi