Bruckner 交響曲第8番ハ短調
(マリオ・ヴェンツァーゴ/
ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団)


CPO 777691 Bruckner

交響曲第8番ハ短調(ノヴァーク版)

マリオ・ヴェンツァーゴ/ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団

CPO 777691 2011年録音

種々オーケストラを替えて全集録音を果たしたMario Venzago(1948-瑞西)この人もスワロフスキーの弟子筋、巨大なるスケールを誇る作品にふさわしいオーケストラ選定の結果はどーも芳しくない感じ。なにかとてつもない予兆を感じさせる第1楽章、Brucknerの真髄であるスケルツォ楽章の粗野な迫力満載な第2楽章、天国的な陶酔を感じさせる第3楽章、一気呵成に怒涛のフィナーレへ驀進する最終楽章。フツウというか切迫感も迫力も不足してちょいと期待ハズレは残念無念。(2020年10月音楽日誌)
 ここ最近、Brucknerの拝聴頻度が減って、その理由は現役売れ筋のアドリス・ネルソンスとかヤニック・ネゼ=セガン辺りの比較的新しい録音を聴いて、自分の嗜好から外れるような?ことが連続したからと思います。2022年定例更新には一度もBrucknerが登場しておりません。年末を迎え2年前に挫折したマリオ・ヴェンツァーゴに再挑戦してみました。いかにもBrucknerが似合いそうな地味渋いサウンドなオーケストラ起用、勝手な思い込みだけど、鳴りのよろしくないオーケストラかと。三管編成。ワーグナー・チューバ、コントラ・ファゴット、ハープも三台、打楽器は三人ほど?揃えて大きな編成の作品。

 第1楽章「Allegro moderato」はなにか悲劇が始まるような低弦のつぶやきから始まって、心持ち速めのテンポにさらさらとスムースな流れ、響きは予想外に軽く濁らない、フレージングも明快、ごりごりしたところのないもの。仕上げはていねいだけれど、凄みもテンションも足りないさっぱり味。金管楽器群によるハ音が繰り返される「死の予告」に、いまひとつの力強さ、悲痛な切迫感、爆発を望みたいところ。コンツェルトハウス管弦楽団の技量に問題はないけれど、金管の野太い響きをもっと期待したい。(14:46)

 第2楽章「Scherzo. Allegro moderato」スケルツォはBrucknerのキモ、ここもやや速めのテンポにさらさらと軽量、「ドイツの野人(ミヒェル)」は叩きつけるように粗野な力感パワーに足りません。柔らかく抑制され、テンポは悠々と動いてアンサンブルの精度にも不安はありません。トリオはLangsam (ゆっくりと)「野人(ミヒェル)が田舎を夢見る」ところ、悪くはないけれど、ここも淡々として陶酔や敬虔な祈りに足りぬ感じ。腰が落ち着かぬ野蛮さの足りぬ野人でっせ。(14:25)

 第3楽章「Adagio. Feierlich langsam, doch nicht schleppend」ここの天国的な陶酔が一番好きなところ。デリケートな抑制に、ここはオーケストラのサウンドがずいぶんと地味に弱い(とくに弱音部分)ホルンや木管はエエ感じに鳴っておりました。微妙なテンポの揺れは有機的に機能していない感じ、旋律の節回しは軽量に流れてさっぱり風味、これはヴェンツァーゴの個性だと思います。クライマックスは19:29辺り、ここは朗々と叫んで、全曲を通して上出来な楽章と思うけれど、陶酔には至りません。(24:46)

 第4楽章「Finale. Feierlich, nicht schnell」は大進撃のフィナーレ。やや速めのテンポに流れよろしく熱気充分、ティンパニは強烈だけど足取りはすっきり軽く感じます。ホルンのコラールは魅力的、コンツェルトハウス管弦楽団の金管は地味っぽくてエエ感じ。デリケートな部分と力強いところの対比もちゃんとあるけれど、大仰なる詠嘆とかタメ皆無、最終楽章らしい熱気を感じさせても渾身の力を振りぼって!もっと大きく!みたいに至らない。爽やかなBrucknerというのかな、ラストのテンポ・アップもなんか素っ気ない感じ。(21:27)

(2022年12月24日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi