Bruckner 交響曲第5番 変ロ長調
(クリスティアン・ティーレマン/ミュンヘン・フィル/2004年ライヴ)


DG UCCG52011 Bruckner

交響曲第5番 変ロ長調(1878年最終稿)

クリスティアン・ティーレマン/ミュンヘン・フィルハーモニー

DG UCCG52011 2004年録音

 その後ウィーン・フィルと再録音して、それとは別録音。Christian Thielemann(1959ー独逸)がこのオーケストラの音楽監督を務めたのは2004-2011年、これが就任記念コンサート演目だったらしい。全体で80分を超え、その長さは先人のチェリビダッケを連想させるけれど、微速前進とは感じさせない。旋律アクセントのメリハリ表現のせいか、録音の個性なのか、全交響曲中屈指の構成感を誇る大曲はよりいっそう大きく、起伏の激しさ、サウンドに芯を感じさせました。音質も良好と思います。

 第1楽章「Adagio - Allegro」序奏は低弦のピチカートが奈落の底への階段、突如噴出する金管のコラールは巨大なる障壁を連想させる始まり。悠揚たる第1主題は終楽章にも再現されて、この金管が力強く、わかりやすく、カッコ良いもの。イン・テンポを基調としつつ、最終盤わずかのテンポ・アップが効果的でしょう。オーケストラは自信に充ちた厚い響きを維持して筋肉質に力強く、聴手の気分は上がって興奮させるけれど、テンポは無用に走らぬ、急がぬもの。(22:24)

 第2楽章「Adagio. Sehr langsam」は深遠なる緩徐楽章。ここもイン・テンポが基調、金管がテンション高く纏綿と呼吸深く歌って、寄せては返す情感の起伏が高揚してアツい、メリハリの強い自信に充ちた表現でした。デリケートな木管や弦の静謐も洗練されて凄い説得力。金管に鋭利な刺激を感じさせぬ、わずかに淡いオーケストラのサウンドも魅力でしょう。ここも聴手の気分をしっかり上げてくださいました。(20:07)

 第3楽章「Scherzo. Molt vivace, Schnell - Trio. Im gleichen Tempo」スケルツォ楽章はBrucknerのキモ。緊張感に疾走する第1主題は速過ぎず遅すぎず中庸のテンポ、遅滞感はありません。第2主題はゆったりと着実な歩み、優雅なレントラーはしっかりとリズムを刻んで細部曖昧さのない表現とアンサンブル。その対比にキレがあり、テンション高く、パワフルにスポーティでもあります。茫洋と清潔、マイルドな金管の炸裂は爽快。(14:42)

 第4楽章「Finale. Adagio - Allegro moderato」第1楽章冒頭がそっと囁くように回帰してデリケートな表現に始まって、あとは堂々たる自信に溢れた歩みとスケールに高まる興奮! に締め括りました。ここはいくらでも煽りたくなるところ、微妙なニュアンスの変化、優雅な表情付けを前提としたイン・テンポは潔い表現、ラスト迄息切れせぬ力強いテンションの高さもお見事でした。15:00辺りのティンパニも衝撃的、ラストわずかなテンポ・アップも効果的。(25:21)ラスト金管の炸裂に感極まりました。大好きな作品に大満足の完成度。長さを感じさせぬ、感銘の連続。2023年末に佳きものを聴きました。訊いた話だけど、演奏会ライヴに非ず、録音のための会場に聴衆を入れて収録したらしい。

(2023年12月30日)

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written by wabisuke hayashi