Bruckner 交響曲第5番 変ロ長調
(ハインツ・レーグナー/ベルリン放送交響楽団(旧東))


BC30112 Bruckner

交響曲第5番 変ロ長調

ハインツ・レーグナー/ベルリン放送交響楽団(旧東)

Berlin Classics BC30112 1983/4年録音

 原典版とかなっているけれど、それがなにを意味するか理解していないド・シロウト。少なくとも改定され短縮された版でないらしいことは間違いない。1992年と記憶するけれど、Heinz Ro"gner(1929ー2001独逸)によるBruckner廉価盤がまとめて発売され、この作品の実質出会いとなった演奏でした。当時、ベルリン・ドイツ交響楽団がベルリン放送交響楽団(旧西)と表記され、それとの混同を避けるためベルリン放送管弦楽団と小賢しく区別していたはず。やがてベルリンの壁は崩れ、旧東の団体は状況が厳しくなっていく前の記録なのでしょう。記憶通りの終始快速、飾りのないストレート演奏の極北、全曲高いテンションを維持して、当時のオーケストラの技量、渋いサウンド、体力に驚嘆いたしました。やがてチェリビダッケによるいつ終わるとも知れぬ微速前進の緊張感にも痺れたけれど、この快速表現に違和感はありません。ハデなところのない音質も上々。

 第1楽章「Introduktion: Adagio - Allegro」は低弦によるピチカート下降音景が、まるで漆黒の奈落の底に一歩一歩降りていくような不気味な開始。金管の壮麗なコラールは巨大な障壁を連想させて力強く、やがて例の付点のリズムがノリノリに推進力が力強い。 弦と木管の静かな歩みの対比にも違和感はありません。オーケストラの余裕のパワーに金管の絶叫もうるさく感じない。比較対象選定が難しいけれど、かなり速いテンポと記憶するハイティンク最初の録音(1971年)が18:58だから、特別に急ぎ足とは感じさせなぬもの。(19:46)

 第2楽章「Adagio. Sehr langsam(非常にゆっくりと)冒頭ピチカートに乗った寂しげなオーボエ主題から、弦による副主題がとても美しく、印象的なところ。緩徐楽章のテンポはハイティンクが18:35だからかなり速い。それでも浮き立つような情感の高まりがあって、落ち着かぬ急ぎ足とは感じさせないリズムと緊張感、ノリがありました。素っ気なく終わる感じはあります。(14:43)Brcukenerのキモはスケルツォ、第3楽章「Scherzo: Molto vivace」ピチカートによる急ぎ足な第1主題、レントラー風第2主題が繰り返され、そのテンポの自然な推移、緊張感一気呵成に駆け抜ける爽やかに力強い情熱と爆発、叩き付けるような強烈なリズムとニュアンスに充ちた細部解像度は最高の出来でしょう。音質も明晰。ハインツ・レーグナーは一貫して速めテンポの動きに不自然さはなく、最初から最後迄緊張感と集中力がありました。金管の地味渋なサウンド乱舞最高。(13:53)ハイティンク12:23。ここはもっと速い。

 第4楽章「Finale. Adagio - Allegro moderato」。第1楽章第2楽章が回想され、懐かしい主題が早足に回帰しております。急ぎ足に過ぎ去る旋律もリズミカルに緊張感を高めて、アツさましまし。息付く間もなく、曰くありげな思わせぶりもなし、ラストいや増すアッチェレランドも爽快そのもの。(20:03)ハイティンクは22:51。トータル70分を切って、全曲一気呵成に過ぎていくカッコ良い演奏でした。

(2023年5月27日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi