Bruckner 交響曲第8番ハ短調
(ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団)


CarlTON  15656 91922    1970年ロイヤル・フェスティヴァルホール・ライヴ Bruckner

交響曲第8番ハ短調

ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

CarlTON 15656 91922 1970年ロイヤル・フェスティヴァルホール・ライヴ  $1.99

 2004年再聴です。ここ数年ワタシのBrucknerに対する聴き方が変わってきた、ということが前提だけれど、以下数年前の自らのコメントには少々違和感を禁じ得ません。(でも自戒のためにそのまま保存)結論的に言うと「バルビローリの泣き節全開!」の極致!最盛期!というか、亡くなるわずか数ヶ月前、最後の光芒!全身全霊賭けているけんね!的感動演奏でした。

 ・・・これで終わるとサイトネタとしては不充分なので続けましょうか。ハレ管は英国マンチェスターのオケであって、独墺系伝統オケとは風合いが違って、もっとさっぱり軽快というか、ずばりやや線が細い・・・と思ったら大間違いでして、冒頭からなんやら深く、情感込めて重い。くどい。弦を中心として、情念さえ感じさせるヴィヴラートが効果的。残響豊かなホールがその印象を増長します。管楽器群はやや大人しい音色だけれど、なんせバルビローリの色付けは完璧ですから。

 「Brucknerとしてはおかしいんじゃないの?」と評価される方も多いかも知れません。ワタシは「無為の為」なんて、いい加減なことを言っているが、これは明らかに指揮者の個性が前面に出た演奏であって、好き嫌いはあると思いますよ。濃厚な表情で横流れのリズム、彼の「泣き節」全開でひたすら(少々クサ過ぎるくらい)歌って、揺れて、叫んで、嘆いて・・・

 第2楽章は激しいリズムだけれど、腰はカルいと思います。意外と旋律の歌わせ方はさっぱり(というか、末尾を伸ばさず、すとんと終えちゃう)したものです。テンポもやや速めか。軽快に走り抜ける、額に汗して笑顔を浮かべ〜そんな演奏です。中間部の弦の歌(いつものたっぷりヴィヴラート)は、テンポを落としてじっくり聴かせて下さいました。このスタイルだと第3楽章「アダージョ」の纏綿たる表情の豊かさは想像付くでしょ?いや、もう弦はシミジミゆらゆらため息状態。ゆったりとした楽章は、味付け濃くて好きな人にはタマらん!的個性を発揮します。サビで絶頂に達する”号泣”。際だつ安らぎの表情。

 ハレ管はメカニック的にどうの、とか言われることもあるが、バルビローリとの長年に渡る信頼関係故か、ここでは技術的弱さはほぼ感じられませんね。(その道の詳しい人にはミスは散見されるそうだけれど・・・というか、ワタシは気にならない、と言うべきか)弦、木管の細かいニュアンスだけではなく、高らかに鳴り渡る金管(第3楽章ホルンなど誠に立派!)の迫力にも不足しない。終楽章〜切迫するリズムより、途中の弦の詠嘆が美しく際だちました。録音の関係か、ティンパニはあまり聞こえませんね。リズムの楔を強烈に打ち込むことを嫌ったのかな?・・・なんて思っていると突然テンポがアップして、ラッシュしたり・・・揺れ動くテンポ。

 ハレ管は「Brucknerオケ」ではなく、バルビローリもそうではない。泣き、叫び、歌い、嘆く、異形のBruckner。賛否両論だろうなぁ。ワタシはこれでよろしいと思います。最終楽章最後まで存分に楽しみました。指揮者の個性がはっきりと出た演奏は、ここ最近望めなくなりつつあります。(2004年10月1日)


 珍しいバルビローリのBruckner。国内盤で1,500円で出ていたものですが、個人輸入で安く手に入れました。

 1970年と云えば最期の年。彼の芸術が頂点を迎えた年でもあったのでしょう。マーラーでは昔から定評があったものの、Brucknerの録音は聞いたことがなかったし、このCDは貴重な一枚。ワタシはBruckner演奏は非常に難しいと思うのです。オケの力が正直に出てしまう。小手先の「解釈」は無用でありながら、いっぽうで「無為の為」が必要、深い呼吸、音楽を感じさせる「間」、が求められます。

 ハレ管はヴィルティオーゾ・タイプのオケではありませんし、バルビローリの横に流れるような歌は、Brucknerと違和感がありそうな気も。そんなこんなで、やや心配しながら聴き始めました。

 結論。個性的で、熱気溢れる素晴らしい演奏。

 さすがBBCの音源、録音の状態もたいへん聴きやすいもの。70数分の長丁場ですが、どの部分も神経が細やかに行き届いた入魂の音楽。ハレ管もいつになくよく鳴っていて、弦の透明なことは当然として、木管のニュアンスも金管の迫力も文句なし。(ホルンの音色がちょっと能天気かな)

 第1楽章は、リズムがやや軽く前倒しなのがドイツ・オーストリア系の演奏と異なるところ。深く重いリズムに支配された、ものものしい8番はお馴染みですが、明快な演奏は意外かも知れません。聴き進むにつれ、コンサートならではの「ノリ」が感じられて快い。オケの充実ぶりも立派。

 第2楽章のスケルツォのリズム感は特筆すべきもの。Brucknerの「スケルツォ」こそ彼の音楽のキモで、いきいきとした躍動感は熱さを加速しています。ここでも重量感より、弾むような明るい音楽が魅力いっぱいです。つまり少々軽過ぎかも。

 第3楽章「アダージョ」は、バルビローリの真骨頂でしょう。延々と続く息の長い旋律は彼の独壇場。とうとうとした歌が絡み合って、味わい深い響き。失礼ながら、いつものハレ管とは思えない。

 最終楽章はかなりテンポが早く、やはり前倒しのリズムがおもしろい。最後まで息切れせず、高いテンションが持続する熱演です。おどろおどろしく重苦しい雰囲気とは無縁、むしろ軽快で、高らかに鳴りきった金管は、アメリカ風の鋭い金属的な音色とは明らかに異なります。(もちろん中欧系の渋い音色とも違うが)

 個性的で、やや特異なBrucknerではありますが、上品だと思います。大曲における、バルビローリの構成力を見せつけられる感動的な演奏。


比較対象盤

ヘルベルト・ケーゲル/ライプツィヒ放送響〜なんという不機嫌で、非情なBrucknerでしょうか。バルビローリとはまた対局にある、異形の個性。好きずき。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi