Bruckner 交響曲第7番ホ長調(ヨッフム)聴き比べ


Bruckner  交響曲第7番ホ長調(ヨッフム) Bruckner

交響曲第7番ホ長調

ノヴァーク版  ヨッフム/シュターツカペレ・ドレスデン(1976年録音)
EMI 5 73905 2   9枚組3,890円にて購入したウチの一枚(紙パック入り)

ノヴァーク版  ヨッフム/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1970年録音ライヴ)
TAHRA Tah 168   9枚組8,790円にて購入したウチの一枚(紙パック入り)

ハース版  ブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデン(1980年録音)
DENON GES-9217  中古で166円で購入

 ヨッフムによるドレスデンとの2回目の全集は、Bruckner演奏の古典みたいなものでしょう。じつはこの全集、CDにて2度目の購入。最初にCD化されたときには楽章収録の方法があまりに粗雑で(押し出された楽章を次々と後のCDに繰り延べていた)それが気に入らずに売り飛ばしたもの。この度安く出ていたので、もう一度聴きたくて買いました。こんどはちゃんと一枚一曲の良心的収録。

 本当はヨッフムの旧全集も欲しいところだけれど、天下のDGはなかなか思い切った価格にしてくれないのが残念。TAHRAの全集はたいして安いとは思えなかったが、(録音分担している)G.L.ヨッフムの録音が珍しくて、発売・即購入したもの。ブロムシュテットのは聴き比べ用です。(これもなかなかの出来)なんか、オーソドックス過ぎてツマらない選定でしょうか。

 ヨッフムは小細工がなくて、じつに骨太・正統派。ヴァント、朝比奈の大人気の陰に隠れて、最近は人気薄の録音でしょうか。ワタシが子供だった1970年代くらいには「Brucknerといえばヨッフム」というくらいの権威だった記憶があります。ティントナーもスクロヴァチェフスキも好きだけれど、歴史と伝統あるオケの魅力には抗しがたいもの有。(これはワタシの保守化か?)それに録音は良いに越したことはない。

 Brucknerのキモはスケルツォ。でも、このひときわ親しみやすい第7番では、美しい「アダージョ」も負けず劣らず重要なんです。「版」のことには弱いワタシでも、打楽器が華々しく入るノヴァーク版と、シンプルなハース版の違いは理解できる。(ほかにもいっぱい違いはあるんでしょうが。ワタシはハース版が好き。でも、ブロムシュテット盤にはティンパニが入っている)

 まずヨッフム/ドレスデン盤。オケの音色(特に弦)が渋い。コクがある。大づかみのようであり、グイグイと濃い墨で一気に書き上げたような楷書の表現。わざとらしいテンポの揺れや、飾りがなくて素朴。怒濤の力強さ。まさに「無為の為」。自然体。・・・と、ここまでは、いかにもワタシお気に入りの定番的〜ある意味、ありがちな名演奏でしょう。(文句あるか)

 この演奏のおもしろいところは、余計な「貫禄」がないんです。(朝比奈さんなんかの演奏でよく見られる) もったい付けた、ゆったり過ぎるテンポ設定、くっきりすぎた「間」とは無縁。もっと正直に、謙虚に「ここはこう叫びたい」と思ったら、存分に金管を絶叫させます。(それでもうるさくならないオケが素晴らしい) 間延びしない、テンションが落ちない、若々しい演奏。正直爺さんに花が咲く。色気も充分。

 飽きませんねぇ、この演奏。70分一気に聴けます。聴き惚れます。初めてBrucknerを聴く人にお勧めしたいくらい。録音も最高の自然体。(EMIにしてはたいへん珍しい〜ひとから聞いた話しでは、以前に出ていたCDは音質に問題あったそう)

 コンセルトヘボウとの1970年のライヴが、負けず劣らずジ〜ンと来ます。アナウンスが冒頭に入っているので、放送用録音なんでしょうが音の状態は最高に近い。演奏はドレスデン盤とそう違いません。ライヴなので、もう少しアツいし、節回しの揺れもあります。オケはドレスデンよりもっと透明で、柔らかい。コクと奥行きのある響きは、もう好みの問題でしょう。フルートの音色にはハッとします。ホルンの朗々としているのは当然。アダージョの怒濤の盛り上がりに涙も出ます。

 こちらのほうが「貫禄」が感じられるのは、会場のせいであり、観客の存在故かも知れません。自然なテンポの揺れは、指揮者の深い息づかいのようでもあって気持ちよく聴けます。会場の空気の流れが見えるかのよう。両者勝負なし。優劣付け難し。正直言ってどちらも聴く度「こっちのほうがいいか」と思ったりする。

 ここまで書いて気付いたが、アンサンブルがどうの、ということは考えませんでしたね。素晴らしく立派なんですが、「整っている」という水準の話しではない感じ。


 ま、ティントナー、スクロヴァチェフスキのような例外はあるけれど、Brucknerはオケで決まるんですよ。たいてい。(じゃ、カラヤンは?と訊かれれば、あまり聴いたことはないし、聴きたいとも思わない、と答えるしかない)

 ということで、同じドレスデンのオケでブロムシュテットも聴き比べました。この人も、音楽を作りすぎないところがBrucknerとの適正を予感させます。さきほど「ヨッフムの演奏には余計な貫禄がない」と書きましたが、ブロムシュテットにはもっとないんです。

 この演奏だけ聴くと、そこはやはりドレスデン、なかなかのもの。終楽章の怒濤の力強さも凄い。どこをとっても誠実だし、虚飾のなさ、はある意味ヨッフムに通じるものも有。アダージョの繊細な味わいもたまらない。各パートのバランスも適正で、金管が突出したりしない。ナマで聴いたらきっと最高。でも、なにかが足りない。PCに向かって原稿を書いていても、ヨッフムの演奏だったら「おっ」と音楽に引き寄せられる。ブロムシュテットは原稿のほうに集中できる。

 「色気」なんでしょう、きっと。足りないのは。「無為の為」なんて書きましたが、ヨッフムの「アダージョ」を続けて聴いたら、その極限の細かい(神経質な、という意味ではない)配慮、ニュアンス、感情の込め方が素晴らしい。それがもう体質化しているんでしょうか、作り物ではなく、無理も感じられません。ヨッフムの呼吸そのもの。とてもだけど「ながら聴き」は不可能な魅力。でも、もしブロムシュテット盤しか持っていなかったら、これはこれでそう不満はないはず。

(2000年11月10日)


 ヨッフム/ドレスデンの全集のウチ、数曲を聴いただけなのに「すべてが素晴らしい」などと、日記に書いたり、メールに書いたりしたけど、聴き進むに連れて少々ヤバイかんじ。第8番は音が良くない。いつものEMIの悪い癖が出たみたいで、演奏そのものも「貫禄のなさ」が裏目に出ている。やや粗さも感じさせて、完全にはお薦めできないものも有。でも、4,000円でお釣りが来ますから、文句なし。


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written by wabisuke hayashi