Brahms ヴァイオリン・ソナタ第1/2/3番
(シェリング(v)/ルービンシュタイン(p))
Brahms
ヴァイオリン・ソナタ
第1番ト長調 作品78「雨の歌」
第2番イ長調 作品100
第3番ニ短調
ヘンリク・シェリング(v)/アルトゥール・ルービンシュタイン(p)
FIC ANC-94 RCA録音の海賊盤 1960/61年録音 667円
おそらくは1990年代前半に購入していて、既に十数年経過して転居3回、全国各地帯同して棚中現役”駅売海賊盤”であります。もともとの録音も優秀らしくて、なんやらハイグレードな品質のCDで(けっこう高い値段で)再発売されておりました。ワタシはBBをやや苦手としていて、BRAHMSだったら交響曲を聴くのは少々ツラい・・・が、ピアノ・ソロとか室内楽だと意外なほど心情にフィットする自覚有・・・深夜に聴いていると、共感の余り、遣る瀬なくも切ない気持ちで一杯になっちゃう。後ろ向きの諦念みたいのが眼前に浮かんで、このCD購入したときには未だ血気盛んなる30歳代、現在もう50の坂を転げ落ちておりますもの。
「雨の歌」とは第3楽章に題名の歌曲旋律が引用されているんだそう。(ワタシは聴いたことがありません)Brahms は表題を付ける人じゃなくって、これは珍しい例というか、後人が勝手にそう呼んでおるのか。聴き手は勝手に憂鬱な雨模様と、少々苦い甘美を題名から感じ取りました。音録りの関係か、演奏の主導がピアノにあるのかはわからないが、上品で床しいヴァイオリンに、しっとり雄弁なるピアノが対話してじわじわ感銘が広がります。
第2番イ長調ソナタの第1楽章「アレグロ」は、いっそう懐かしく親しげに始まりました。こちら溌剌として込み上げるような、喜びの発露も感じられます。
”上品で床しい”ヴァイオリンは線が細いワケじゃない。しっかり端正に歌って、落ち着きもあります。ルービンシュタインは当時、既に73歳だったんですね。衰えも、枯淡の影さえ感じさせぬ瑞々しいスケール〜でも、ワタシの好みとしては少々ヴァイオリンとのバランスがよろしくないな、と。ちょっと前に出過ぎか。
第2楽章「アンダンテ」の牧歌的な安らぎの表情、第3楽章「アレグレット」も落ち着いた味わいが、じょじょに表情を変化させて、これは素敵な作品です。優しく歌って、時に翳りを見せる旋律の妙。
第3番ニ短調ソナタは、作品的にあまり好きじゃないんです。不安げな焦りを感じさせる第1楽章「アレグロ」、前2曲に比して激昂も出現します。ルービンシュタイン、ますます雄弁ですね。シェリングは美音を強調せずに、抑制されたスタイルに”気品”を感じます。第2楽章「アダージョ」にはちょっとBach を連想させる荘厳なる歩み有。ピアノの低音がとても安定したリズムになっておりますね。第3楽章はスケルツォ楽章で、これはちょうど交響曲と同じ造りになっているような、暗く、激しい諧謔曲。
終楽章「プレスト」にいや増す厳しい旋律が登場するが、ルービンシュタインの悠然たる落ち着き、シェリングの抑制がBrahms には似合っていると思います。他の演奏でほとんど聴いたことのない作品だけれど、おそらくはこれ以上の表現が想像しにくい・・・中高年の寂寥を痛感させる、端正なる世界。但し、オトコ専用。 (2009年2月6日)
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