Brahms セレナード第1番ニ長調 作品11
(ストコフスキー/シンフォニー・オブ・ジ・エア)


MCA   MCAD2-9826B Brahms

セレナード第1番ニ長調 作品11

ストコフスキー/シンフォニー・オブ・ジ・エア

MCA MCAD2-9826B  1960年録音  400円で購入(中古)

 この曲、40分以上かかって意外と大曲だけれど、録音は少ない。アバドが早くから録音していましたね。最近ではARTE NOVA に第1・2番とも収録しているお徳用盤(演奏家失念)がありましたが、未聴。NAXOSではラハバリが、交響曲第3番のフィル・アップとして意欲的な収録でしたが、いかんせん演奏がイマイチでした。

 Symphony Of The Air って素敵なネーミング。トスカニーニのために作ったNBC交響楽団が、トスカニーニの引退とともに馘首され、自主団体として再出発したもの。来日もしたらしい。もちろん既に消滅して現存しません。ストコはこのオーケストラとの録音がけっこう残っていて、ステレオ時代に入っていたこともあって、オーケストラの優秀さがわかりやすい。米DECCAの録音。

 全6楽章。「冗長的で間延びした曲」との評価ですが、ラハバリ盤を聴いたときには「なるほど」と納得しました。このCD、ま、安かったし、ストコに敬意を表して買ったのですが、見違えるような楽しさ。第1楽章冒頭の民族舞踊のような、牧歌的なホルンの旋律から、ウキウキするような気分。これはハンガリー舞曲集、どちらかといえばドヴォルザークの世界に近い。

Brahms 20歳台前半の作品。ちゃんと調べていませんが、ホルン以外の金管は入っていない模様。(後の調査で、ちゃんとトランペットが入っておりました)

 次々と木管、弦に旋律が引き継がれていきます。このオーケストラ、既に落ち目だったとはいえ、実力充分。ストコのマジックなんでしょう、とても曲の構成がわかりやすい。第1スケルツォの、ちょっと哀愁がかった旋律もじゅうぶん美しい。(ピアノ協奏曲第2番の第2楽章に似ている)

 一番長い楽章となるアダージョは、ホルン(いかにもBrahms らしい)の歌わせ方の上手さ、テンポのメリハリの付け方も明快で飽きさせません。弦のしっとりとした、懐かしい響きも出色。

 メヌエットは、原曲である室内楽の雰囲気が残っていて、ファゴットの伴奏に乗ったクラリネット、そしてフルートのノンビリとした味わいがたまらない。それを受ける弦の悲しさも引き立ちます。静かなメヌエット。

 第2スケルツォは、雄壮なホルンをメインに後年のBrahms を彷彿とさせる、短いながらもスケールの大きな楽想。フィナーレのロンドは、ちょっと重みのあるリズムがおもしろくって、ユーモアを感じさせます。大きな男どもが、楽しそうに踊っているかのよう。

 後年の交響曲を連想させます。但し、とても明るい。楽しい。まだ、あちこち寄り道しているような作品ですが、Brahms の若さ、魅力をストコは存分に引き出していて、満足度は高い。もっと演奏の機会が増えても良い作品でしょう。

 やや乾き気味ですが、年代から考えれば意外と明快で聴きやすい録音。奥行きは少々足りない。残響は少ない分、各パートの上手さが際だちます。いわゆる明るくて馬力のある「アメリカの音」なんですが、いまとなってはとても貴重。


 比較対象盤

 ラハバリ盤は売り払ってしまって手元にありません。
アーベントロート/ベルリン放送響(MUSIC & ARTS CD-1038 1953年3月録音  2枚組900円で購入)が唯一の比較対象。38分程度でストコ盤よりややテンポは速め。音の状態は年代相応ながら聴きやすい。キリリとしてメリハリのある力強い演奏。オーケストラの特性の違いか、重みが感じられて、これはこれで魅力ある演奏でしょう。オーケストラの音色の渋さはBrahms に相応しい。(2000年9月15日更新)


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written by wabisuke hayashi