Brahms ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77
(ミシェル・オークレール(v)/オッテルロー/ウィーン交響楽団)


UCCP3415 Brahms

ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77

ミシェル・オークレール(v)/ウィレム・ヴァン・オッテルロー/ウィーン交響楽団

PHILIPS UCCP3415 1958年録音

 今尚ファンの多い、往年の仏蘭西別嬪女流ミシェル・オークレール(Michele Auclair、1924 - 2005)の記録であります。ステージからは早々に引退した(腕の故障らしい)ので録音は少なく、LP時代廉価盤フリークとしては懐かしい名前でもありました。これって初耳?作品的に好んで聴くようなものでもなし、音質だって時期が時期だし〜すっかり心奪われてしまいました。手練れのユーザーからは、演奏の素晴らしさ、美人、懐かしいとの声を先頭に、音質的に”ステレオとしてはヴァイオリンの音が籠もり気味ですが、十分聴くに耐えるもの”とのコメント有。

 なるほどなぁ。つやつや、ぴかぴかの鮮度は求められないけれど、ソロの存在感、ニュアンスの確かさ、バックとの距離感、空間の広がり、とても自然で聴きやすい(聴き疲れしない)音質と感じます。オケも地味だけど、味わい深いもの(どこかでぱっとせん、という手厳しい論評拝見)。威圧感もなく、それなりの厚みもあり、オークレールのバックとして不足を感じさせません。(先のリンク中にある、バラバラに録音したというのはほんまでしょうか)

 第1楽章 Allegro non troppo。オッテルローのオケが鬱蒼とした雰囲気を醸しだし、オークレールのソロは可憐な明るさ、軽快さ+優しい歌に溢れてしっとり、バリバリキレ味良く弾き進む風情に非ず。第1主題は骨太強面表現にならず、優雅な第2主題はかつて聴いた中、文句なくヴェリ・ベスト!溜息のような繊細可憐な歌は絶品でしょう。カデンツァはヨーゼフ・ヨアヒム、ここを聴くと彼女の技術水準を確認できます。コーダへと続く、囁くような音色に息を呑むほど。

 第2楽章 Adagio。例の美しい冒頭管楽器合奏はジミやなぁ、いっそう。これも個性のウチ、好き好きでっせ。華麗なる加齢を重ねる度、緩徐楽章への嗜好はいや増すばかり、「ヴァイオリンによるコロラトゥーラのアリア」とは言い得て妙。但し、高音華麗なる咽の技巧というより、切なくも淡々としたモノローグを感じさせて絶品演奏であります。情感は徐々に高まるけれど、けして激昂しない。”別嬪はんの静謐な嘆き”風情か。抑制された高音、ニュアンスの込め方も最高・・・いつまでも終わって欲しくない・・・

 第3楽章 Allegro giocoso,ma non troppo vivace - Poco piu presto。ジプシー風の力強い主題〜が少々苦手であります。オッテルローのジミ・オケはそれを緩和し、勇壮ゴージャスなる作風旋律的に、オークレールはやや”細さ”を感じさせます。ロンド主題の優しい風情は彼女に似合っておりますよ。豊かなスケールより、細部ニュアンスを込めた華麗なる歌心が彼女の持ち味なのでしょう。

 やや苦手系作品を久々に、親密を以て拝聴いたしました。

written by wabisuke hayashi