Brahms ピアノ協奏曲第1番ニ短調
(ウィルヘルム・ケンプ(p)/フランツ・コンヴィチュニー/シュターツカペレ・ドレスデン1957年)


パブリック・ドメインにてネットより音源入手 Brahms

ピアノ協奏曲第1番ニ短調 作品15

ウィルヘルム・ケンプ(p)/フランツ・コンヴィチュニー/シュターツカペレ・ドレスデン(1957年)

パブリック・ドメインにてネットより音源入手

 ここ4・5年ほど精力的にCDを処分していて、この録音が含まれたDGの正規盤もいつのまにやら棚中より姿を消しました。Brahms の巨大なる2曲のピアノ協奏曲は、腕の立つピアニスト、良好な音質にて拝聴すべき作品なのでしょう。もともと比較的良心的なモノラル録音とは言え、入手先は不可逆圧縮.mp3音源、記憶にあるオリジナル音源よりかなり薄い響きと感じました。ケンプ63歳、まだ衰えるには早い年齢だけれど、この人はもとより超絶テクニックをウリにしておりません。

 内省的なピアノ小品集だったら、いかにも!的期待は持てるんだけれど、協奏曲はあまりにジミな演奏なんじゃないか。そんなおぼろげなる思い込みを頼りに拝聴すると、たしかに流麗に非ず、強靱なる打鍵とも縁がない。音質印象もあるでしょうし、コンヴィチュニー+ドレスデンも華やかサウンドとは程遠いであろうことも類推通り。ま、そんな先入感ともかく、45分間意外と愉しんで聴けました。ワタシがもっとも嫌う(というか、心身ともに疲れているときには受け付けないだけ)強面な”威圧感”がない。世評ともかく、ワタシの音楽への嗜好などほとんど”思い込み”の世界、Brahms の協奏曲はワリと好きなんですよ、じつは。

 第1楽章 Maestoso(堂々と、威厳をもって)。速度表記はないけれど、これだけでほとんど常識的なテンポに収まるのが名曲たる所以か(グレン・グールドはちょっと遅いけれど)。作曲者指示通り「堂々と、威厳をもっ」たオケが導入され、コンヴィチュニーのオケは地味かつ分厚い響きがいかにも立派です。ピアノは浪漫的な旋律をとつとつ諄々優しく弾き進めて、期待通りの威圧感から遠い滋味タッチ、キレ味とテクニックを華やか、前面に押し出すスタイルとは無縁也。あまり上手くないピアノ?そりゃ、この作品になにを求めるかということでっせ。

 第2楽章 Adagio。Brahms の緩徐楽章ってピカイチですよね。深い安寧と安らぎは、夫を喪ったクララ・シューマンに捧げたものらしい。モノローグのような淡々と抑えた情感こそ、ケンプの持ち味でしょう。華麗なる加齢を重ねると、こんな静謐、深い哀しみを湛えた旋律が胸に染みるものですよ。やがてオケとの劇的対話がやや高まる部分を迎えても、強靱なタッチに至らない、聴き方によってはどこか頼りないタッチ続きます。優しい旋律は充分に歌われて文句なし。オケの地味渋サウンドはこの楽章相性ピタリ!でしょう。

 第3楽章 Rondo: Allegro non troppo。まるで蒸気機関車の疾走風深刻なピアノ・ソロによる開始。この出足がちょっともたつくのは、前2楽章にて予想が付いておりました。重厚かつ華やかな楽章だと思うんだけれど、モノクロの世界になってますよね、ケンプのタッチだと。旋律表情は千変万化に深刻だったり、明るかったりするけれど、ケンプはその辺りあまり変化を強調せず、やはりずいぶんと地味な印象続きます。巨大なる協奏曲ラストを飾る表現としては、少々華が足りぬか、とも感じるけれど、ぴかぴかの音質+強烈なテクニックを誇るピアノだったら、ちょっと聴き疲れするかも。

 リンク先のケンプのモノラル録音協奏曲をかなり聴いたけれど、どれもちょっと辛気くさいというか、センスがローカル+生真面目というか、そんな印象。これも時代の証言だと思います。

(2012年7月1日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi