Brahms クラリネット五重奏曲 ロ短調
(ヨースト・ミヒャエルス(cl)/エンドレス弦楽四重奏団)


CONCERTOROYALE 206216-360 Brahms

クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115

ヨースト・ミヒャエルス(cl)/エンドレス弦楽四重奏団

弦楽六重奏曲第2番ト長調 作品40(抜粋)

オーストリア弦楽四重奏団/イルムガルト・ゴール(va)/ダンクヴァルト・ゴール(vc)

CONCERTOROYALE 206216-360 録音情報不明

 「CONCERTOROYALE」3枚組シリーズ(主に往年のVOX音源)はまだ一部現役のようです。購入したのは6年ほど前?もっと安かった記憶が・・・いずれ収録編集、製品としての作りが少々怪しくて、お勧めするのにやや躊躇があるけれど、けっこう貴重音源が含まれるのも事実なんです。ヨースト・ミヒャエルス(cl)は1922年生まれ、独逸の名匠、デトモルト大学の教授を長く務められ、日本でも数限りなくお弟子さんがいらっしゃる由。エーラー式の大家であり著名なる教則本もあるそう。メジャーでの録音はほとんどなくて、ワタシは子供の頃よりコロムビア・ダイヤモンド1000シリーズ(Mozart の協奏曲)にて拝聴しておりました。

 Brahms といえば交響曲が圧倒的人気、ワタシの嗜好はピアノ小品、室内楽方面となります。先日、歌曲集を拝聴する機会があって、それも落ち着いて親密な味わいに胸を打たれました。勇壮に爆発する交響曲ではなく、こちら親密であり、人生の黄昏が兆す中年オトコの寂しげな背中が見えるんです。Mozart の作品には、すべての煩悩を削ぎ落とした無垢な世界が広がるけれど、Brahms の寂寥は(聴き手の精神状態によっては)ヤバいほど甘美な”落ち込み/引き隠り”を招くかも。

 VOX録音といえばLP時代より劣悪音質にて泣かされてきたが(でも、安かったですから)CD時代も成熟期に至って、ちょっと見直しております。かなり音質状態良好。ま、それなりにこの作品を(LP/CDにて)聴いてきたつもりだけれど、これほど落ち着いた味わい、しっとり控えめ、微細に表情を変えていく正確端正なクラリネットを拝聴したことはない。レジナルド・ケルの甘美なヴィヴラートも魅力だけれど、こちらの生真面目なスタイルも負けず劣らずの味わい深さ。

 第1楽章「アレグロ」。黄昏の空を見上げるようなゆらゆらとした旋律から、途方に暮れたようなクラリネットが登場いたします。劇的緊張感でもよろしい楽章だろうが、ゆったり噛み締めるようなテンポ、神妙なるテイスト溢れて急がない。第2楽章「アダージョ」の陶酔は湿度高い霧が充満しているようであり、クラリネットも弦も抑制された表現、音量ながら、旋律の姿は明晰を失わない。これはこれで馥郁たる甘美な世界であります。弦も管に負けず端正であって、過度な表情付けを主張しない。テンポはさほどに揺れないんです。

 第3楽章「アンダンティーノ」、穏やか安寧の明るく牧歌的表情にほっとしますね。中間部のプレストは交響曲第2番ニ長調第3楽章のパターンに似ていて、冒頭旋律の変奏となっております。終楽章「コン・モト(動的に、活発に)」はもの哀しい変奏になっていて、情感の深さに不足はない。纏綿朗々と大げさ雄弁に歌うこと=豊かな情感に非ず。淡々とした抑制こそ効果有。

 弦楽六重奏曲第2番ト長調も同趣向の作品であり、演奏も立派なもの。ただし、第1/2楽章のみの収録となります。収録余白16分ほど、あと2楽章分ぎりぎり間に合わなかったんだな。残念。ミヒャエルスの演奏はほとんど40分に至っておりますから。

(2011年5月21日)


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written by wabisuke hayashi